鉱研工業、2020年度売上は0.9%減の75億円、21年度予想は9%増の82億円

 鉱研工業が4月27日に発表した2021年3月期(2020年度)連結業績によると、受注高は前期比△0.4%減の8,223百万円、売上高は、同△0.9%減の7,534百万円となった。利益面においては、通常の原価率は前期と比較すると改善したが、期末に実施した販売在庫の棚卸評価損132百万円の売上原価での計上と伊勢原工場用地取得関連の不動産取得税などの諸経費99百万円及び支払手数料84百万円の計上により、営業利益は251百万円(前期は415百万円の営業利益)経常利益は167百万円(同416百万円の経常利益)と各段階利益は前期を下回った。

 最終利益については、6月の厚木工場売却による特別利益963百万円とこれに関わる圧縮記帳処理などの税務処理を行った結果、親会社株主に帰属する当期純利益は929百万円(前年同期は338百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)と前期を大きく上回った。

 鉱研工業2021年3月期データ

■2020年度の経営成績

 2020年度(2020年4月1日~2021年3月31日)におけるわが国経済は、国内外における新型コロナウイルス感染症拡大の影響による企業収益の低下や雇用環境の悪化がなお続いており、極めて厳しい状況にある。景気の先行きについては、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策を講じつつ、社会経済活動レベルの段階的引き上げや各種政策の効果等により持ち直しの動きも見られてはいるが、一向に衰えない同感染症の感染再拡大に懸念が顕著化し、より一層不透明感が増す状態となっている。

 鉱研工業グループを取り巻く環境については、国内市場は今後も都市の再開発、全国規模の防災・減災・国土強靭化対策、インフラ老朽化対策、リニア中央新幹線建設などの社会資本整備が不可欠な状況で、建設投資は今後も底堅く推移していくことが見込まれている。期初においては新型コロナウイルス感染症の影響により、ボーリング機器関連では主要仕入機材の海外からの輸入遅延が懸念されていたが、先行手配が奏功し、結果的にはその影響はほとんど受けなかった。しかし、工事施工関連においては、国内のトンネル先進ボーリング工事現場の一部休工や海外大型工事現場への着工乗り込み遅延の影響があり、出来高進捗状況が若干鈍化した。

 このような状況のもと、鉱研工業グループでは「2018中期経営計画」(2018年度~2020年度)の最終年度である当期も同中期経営計画に基づき、『①粗利率のアップ、②固定費低減、③売上拡大』を目指して引き続き推進した。

 また、鉱研工業の社是である「ONE&ONLYの技術構築のために前進」に基づき、鉱研工業にしかない「ONE&ONLY」の得意技術をボーリングスペシャリストとして国内・海外市場に展開し、これまで以上に他社が追従できない機械と施工技術の開発を進めた。

 2020年度の受注高については、ボーリング機器関連、工事施工関連ともに前期をやや下回った。また、売上高については、ボーリング機器関連の海外売上が前期を大きく上回ったため国内売上減少をカバーしたが、工事施工関連で国内でのBM工事、温泉工事及びトンネル先進調査ボーリング工事の完工高が減少したため、売上高全体では前期を下回った。

■セグメント業績

①ボーリング機器関連

 国内での受注は全国規模の防災・減災及び国土強靭化対策での地方復旧工事の影響で取引先からの受注は増加傾向にあり、また、海外においては中国向けの特機(人命救済機FS-120CZ-4号機)の大型ボーリングマシン関連と中南米へのODA水井戸関連の受注が獲得できたが、同セグメント全体の受注高は、前期と比べると若干減少した。

 売上については、国内での出荷売上は減少したが海外での大型受注案件の出荷により前期を上回った。国内では主力製品のロータリーパーカッションドリル(RPD機シリーズ)とその関連部品の製造は相変わらず多忙となっているが、前期の海外向け大型受注案件の製作が下期に集中した影響で国内向け受注機生産数量が限定されたため国内での出荷・売上にその影響が出たもの。

 以上の結果、当セグメントの連結受注高は前期比△0.7%減の4,470百万円、連結売上高は同2.1%増の4,076百万円となった。利益面では引き続き特機の原価高を起こさない体制により逐次、個別原価の管理を行っているため改善しているが、期末に実施した棚卸評価損132百万円の計上と伊勢原新工場用地関連で販売費及び一般管理費が増加したことによる同セグメントの固定費負担額が嵩んだため、△72百万円のセグメント損失(前期は△87百万円のセグメント損失)となった。(但し、棚卸評価損及び伊勢原新工場関連の販管費増加分を差し引くと当期は148百万円のセグメント利益)

②工事施工関連

 受注については、国内トンネル先進調査ボーリング工事が引き続き好調で増加しており、海外でも大型BM工事の受注獲得はありましたが、他の工種の受注が減少したことにより受注高全体では前期並みとなった。

 売上高については、地下水工事の完工高増、長尺コントロールボーリング工事の順調な進捗増と子会社が手掛ける都市土木におけるアンカー工事の大幅な完工高増はあったが、新型コロナウイルス感染症の影響で一部のトンネル先進調査ボーリング工事のゼネコン下における休工と海外大型工事の着工乗り込み遅延の影響により完工高全体では前期を下回った。

 以上の結果、当セグメントの連結受注高は前期比△0.1%減の3,752百万円、連結売上高は同△4.1%減の3,458百万円となった。利益面については、完工高の減少と販売費及び一般管理費の固定費増加はあったが、セグメント利益(営業利益)は同35.2%減の325百万円を計上した。(但し、伊勢原工場用地関連の販管費増加分を差し引くと372百万円のセグメント利益)

■次期の見通し

 今後の国内建設市場は新型コロナウイルスの影響による業績悪化などで企業の設備投姿勢が慎重化している中、東日本大震災関連の復興事業も減少しはじめ建設投資についても今年に続いての減少が見込まれているものの、国土強靭化計画に伴う全国規模の防災減災対策、インフラ老朽化対策、新幹線・高速道路延伸、リニア中央新幹線建設などの社会資本整備に関わる建設投資については引き続きこれまでと同水準で推移するものと見込んでいる。

 ボーリング機器関連としては、前述の国土強靭化5カ年計画などの追い風もあり、主力製品であるロータリーパーカッションドリルをはじめとした機械受注が堅調に推移しており、次期以降の売上増加に寄与していくものと考えている。

 そのほか、従来より研究着手していた人員人材の確保難や安全対策のニーズに応えるボーリング機械の省人化、省力化、ロボット化の開発を引き続き進めており、順次市場投入を計画している。

 工事関連においては、新型コロナウイルスの影響で一部大型案件の着工遅れがあったものの、北海道新幹線延伸工事や九州高規格道路の整備工事などの継続、リニア中央新幹線、東海環状自動車道等のトンネル先進調査工事が今後も見込まれている。

 また、リニア中央新幹線関連のコントロールボーリング工事、大型BM工事(鉱研工業の独自工法であるビッグマン工法)、温泉開発等の受注獲得にも引き続き注力し、売上増加を図っていく。

 海外市場においても、新型コロナウイルスの影響により一時的に拡販活動が制約されていたが、状況は回復基調にある。中国市場では、「一帯一路」政策によるトンネル工事におけるロータリーパーカッションドリルや人命救済機のニーズを捕捉し、受注売上の確保を図る。

 なお、当期が2018中期経営計画の最終年であり、次期からは新たに策定した新中期経営計画「STEPUP鉱研ACTIONS2025」に基づいて持続的売上拡大と収益確保に努めていく。

 以上の結果、売上高は8,200百万円を見込んでおり、利益面では営業利益400百万円、経常利益360百万円、親会社株主に帰属する当期純利益270百万円を見込んでいる。

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