三菱重工、水素ステーション向けの超高圧液体水素昇圧ポンプを開発

・極低温試験設備における液体水素の90MPa昇圧に成功

・液体水素を昇圧することでエネルギー消費量を抑え、環境負荷低減に貢献

・90MPaの超高圧で、流量を容易にコントロール

 三菱重工業は4月6日、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)の燃料となる水素を補給する水素ステーション向けに、90MPa級の超高圧液体水素昇圧ポンプを開発したと発表した。このほど、同社総合研究所長崎地区にある極低温試験設備において、液体水素(注1)を超高圧の90MPa(注2)まで昇圧することに成功した。FCVは水素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーを使ってモーターを駆動させる仕組みで、その燃料となる水素を液体状態で昇圧することで、気体の水素を昇圧するのに比べてエネルギー消費量を抑えることができ、水素社会における環境負荷低減に貢献する。

 この超高圧液体水素昇圧ポンプは往復動ポンプ構造であり、流量コントロールを容易にするため、引火性雰囲気でも自らが引火源とならない防爆仕様を備えたモーターによる駆動(インバーター制御)方式を採用している。また、気化しやすい極低温流体である液体水素を取り扱うため、吸い込み部を真空断熱容器で没水するサブマージ型としている。さらに、これまで同社の実績では40MPa程度だった液体水素昇圧ポンプの圧力を90MPaまで高めたことで、より多くの水素燃料をFCVに充填することができる。

 今回の開発は、液体燃料ロケット開発や舶用LNG技術開発で得た極低温技術をベースに開発・試験が行われた。三菱重工は極低温技術を活用した新たなソリューション提案を通じ、水素社会の実現に貢献していく。

1液化した水素のことで、およそマイナス253℃の極低温流体。

2圧力・応力の国際単位で、1Paは1m2あたり1N(ニュートン)の力が作用すること。気象分野では、気圧を長くミリバール(mbar)で表示していたが、国際単位への移行に伴いhPa(ヘクトパスカル:値はmbarと同等)表示に変わった。

<90MPa級超高圧液体水素昇圧ポンプの主な仕様>

揚程(汲み上げ圧):90 MPa

流量:1,000 Nm3/h

サイズ・重量(ポンプ本体):全高約2.7 m、全長約1.0 m、全幅約0.7 m、重量約2.7 t

駆動方式:モーター(インバーター制御)

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