産機工、2021年度の産業機械受注見通しを発表

     一般社団法人日本産業機械工業会(産機工): 2021年3月26日14時 発表

 2020年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、企業収益が大きく落ち込むなど、依然として厳しい状況が続いている。そのような情勢の下、2020年度と2021年度の産業機械(当工業会取扱い)の受注見通しを以下の通り策定した。

2020年度

 内需は、官公需が増加するものの、民需の減少により、対前年度比95.7%の3兆2,112億円と見込んだ。

 民需のうち製造業については、自動車や半導体関連からの需要が年度後半から回復に向かった他、コロナワクチン国産化等による化学工業からの需要が増加したものの、コロナ下で設備投資が延期・中止になった業種が多く見られ需要が大きく減少したことから、前年度実績を下回るものと見込んだ。

 非製造業については、運輸業や卸売・小売業の物流設備の自動化・省力化投資が年度後半から持ち直してきたものの、電力業からの火力発電設備の需要減により、前年度実績を下回るものと見込んだ。

 官公需については、国土強靱化に向けた洪水対策等の需要増や、廃棄物発電等の清掃工場の発注量の増加により、前年度実績を大きく上回るものと見込んだ。

 外需は、コロナ下において厳しいビジネス環境が続いたものの、天然ガスの大型プロジェクトの受注により、対前年度比126.1%の1兆8,055億円と見込んだ。地域別では、中東がコロナ前に計画されていた天然ガスの大型プロジェクトや製油所設備の受注で大幅に増加した他、中国の需要回復が下支えする形でアジアが増加した。機種別では、オイル&ガス関連で大幅増した化学機械の他、自動車関連や機械向けが中国を中心に年度後半から需要が回復したプラスチック加工機械が増加した。

 この結果、内外総合では、対前年度比104.8%の5兆167億円と見込んだ。

2021年度

 内需は、経済活動の再開により民需が緩やかに回復していくものの、前年度の内需を下支えした官公需のうち、都市ごみ処理装置の大型案件が見込めず、対前年度比98.3%の3兆1,557億円と見込んだ。

 民需については、コロナ下において先送りされていた工場等の自動化・省力化投資、省エネ化・再エネ導入の投資の緩やかな回復の他、医薬品、自動車、半導体関連の設備投資が引き続き増加していくものと見込んだ。また、インターネット販売等のニーズ拡大を背景にした物流倉庫向けの搬送システムの需要が堅調に推移するものと見込んだ。

 なお、電力向けの火力発電設備については、設備の維持・更新や高効率化等の投資が緩やかに持ち直していくものと見込んだ。

 外需は、コロナワクチンの普及や各国の経済対策の効果により、世界経済が徐々に押し上げられていくことに伴って、産業機械の受注も緩やかに回復していくと見込むものの、前年度に天然ガス関連の大型プロジェクトを受注した反動減によって、全体としては前年度を若干下回り、対前年度比93.9%の1 兆6,949億円と見込んだ。

 自動車や電子・デバイス関連、その上流となる素材産業からの需要は、中国を中心に回復が続くとみて、機種によって濃淡があるものの、緩やかな回復軌道を描いていくものと見込んだ。

 また、脱炭素社会や循環経済の実現に向け、発電所の高効率化や工場の省エネ化、廃棄物処理等の環境インフラの高度化等のニーズは世界レベルで拡大しており、我々産業機械業界の優れた環境対応技術の需要は拡大していくものと見込んだ。

 なお、天然ガスや石油関連については、新規の大型プロジェクトの具体化が今年度は見込みがたく、更にエネルギー市場の産業構造の変化に伴い、需要減を見込んだ。

 この結果、内外総合では、対前年度比96.7%の4兆8,506億円と減少するものの、2 0 1 9 年度の受注金額( 4 兆7 , 8 7 9 億円) を若干上回るもの(2019年度比101.3%)と見込んだ。

■機種別受注見通し

1.ボイラ・原動機

2020年度

 内需は、バイオマス燃料等を使用する自家発電設備の受注が増加したものの、電力からの火力発電の更新需要の落ち込みにより、前年度比85.0%の8,601億円と見込んだ。

 外需は、アジアやヨーロッパで火力発電設備の受注が減少したことから、前年度比70.0%の3,122億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比80.4%の1兆1,723億円と見込んだ。

2021年度

 内需は、大型バイオマス発電設備の発注が一服すると見られるものの、火力発電や自家発電設備の高効率化に向けた改修工事の増加に加え、既存設備の維持・更新需要が底堅く推移し、前年度比102.5%の8,816億円と見込んだ。

 外需は、アジア等での老朽化設備の高効率化や、LNG 火力への移行等の需要が増加し、前年度比125.0%の3,902億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比108.5%の1兆2,719億円と見込んだ。

2.鉱山機械

2020年度

 内需は、窯業・土石や鉄鋼からの受注が減少したものの、建設からのインフラ整備用の大型設備の受注が下支えした形となり、前年度比100.0%の180億円と見込んだ。

 外需は、中東で過去の受注のキャンセル等が発生した他、アフリカ等での減少により、前年度比70.0%の13億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比97.1%の193億円と見込んだ。

2021年

 内需は、コロナ下で先延ばしにされた素材産業の設備投資の持ち直しに加え、国土強靱化・自然災害関連の公共工事に伴う建設関連の需要が底堅く推移するものの、前年度に大型設備を受注していた反動により、前年度比95.0%の171億円と見込んだ。

 外需は、アジアのインフラ整備等の回復に伴う需要増により、前年度比110.0%の15億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比96.1%の186億円と見込んだ。

3.化学機械(冷凍機械、環境装置のうち大気汚染防止装置と水質汚濁防止装置を含む)

2020年度

 内需は、コロナ禍を背景にした医薬品関連を含む化学工業の需要増に加えて、電子・デバイス関連の情報通信機械で増加が見られたものの、食品工業、紙・パ、鉄鋼、電気機械、電力等の減少により、前年度比90.0%の7,788億円と見込んだ。

 外需は、中東で大型プロジェクトの受注があったことから、前年度比300.0%の8,725億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比142.8%の1兆6,514億円と見込んだ。

 

2021年度

 内需は、官公庁からの下水処理関連の更新需要が減少するものの、医薬品関連の投資継続の他、半導体・電子部品や自動車関連、その上流にあたる素材分野の設備投資の持ち直しにより、民需が緩やかに回復し、前年度比1 0 5 . 0 % の8,177億円と見込んだ。

 外需は、コロナ下で先送りされていた環境インフラ投資の回復や、電子部品・自動車産業の回復に伴う化学・石化関連の投資再開等を見込むものの、石油・ガス関連のプラント市場の冷え込みに加え、前年度の大型プロジェクトの反動減により、前年度比70.0%の6,107億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比86.5%の1兆4,285億円と見込んだ。

4.タンク

2020年度

 内需は、電力・ガス業の増加があったものの、石油・化学からの減少により、前年度比100.0%の194億円と見込んだ。

 外需は、アジアからの更新需要が底堅く推移し、受注金額としては前年度並みの、前年度比100.0%の64億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比100.0%の259億円と見込んだ。

2021年度

 内需は、石化燃料の削減に向けた代替燃料の貯蔵設備の需要増を見込むものの、製油所の縮小等に伴い老朽化対策等の維持・更新等が減少していることから、前年度比95.0%の185億円と見込んだ。

 外需は、樹脂等の石油化学製品の生産が増加している化学・石化関連での需要増により、前年度比105.0%の68億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比97.5%の253億円と見込んだ。

5.プラスチック加工機械

2020年度

 内需は、化学工業、金属製品、電気機械の減少により、前年度比85.0%の617億円と見込んだ。

 外需は、コロナ禍で需要が落ち込んだ中国、ヨーロッパ、北アメリカが年度後半から持ち直したことにより、前年度比120.0%の1,443億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比106.8%増の2,060億円と見込んだ。

2021年度

 内需は、電子部品、自動車関連や高機能素材等の需要増により、前年度比115.0%の709億円と見込んだ。

 外需は、中国を中心とした電子・デバイスや自動車関連の需要増が続き、前年度比105.0%の1,515億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比108.0%の2,225億円と見込んだ。

6.ポンプ

2020年度

 内需は、コロナ下のビジネスにおいて、民需が製造業・非製造業ともに減少するものの、洪水対策等の国土強靱化に関する公共投資の増加が下支えする形となり、前年度比100.0%の2,952億円と見込んだ。

 外需は、中東、北アメリカの石油・ガス関連の減少により、前年度比90.0%の791億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比97.7%の3,743億円と見込んだ。

2021年度

 内需は、民需がコロナ下で先延ばしにされた設備の維持・更新需要が緩やかに回復していくものの、官公庁からの国土強靱化に関する発注量が前年度に比べ減少することから、受注金額としてはほぼ前年度並みとなり、前年度比100.0%の2,952億円と見込んだ。

 外需は、コロナ対策等での衛生面の確保に向けたアジア等での水インフラ整備の増加に加えて、製造業の設備投資の再開等により、前年度比110.0%の870億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比102.1%の3,822億円と見込んだ。

7.圧縮機

2020年度

 内需は、食品、石油製品、はん用・生産用、電気機械、建設の減少により、前年度比85.0%の1,194億円と見込んだ。

 外需は、中東、ヨーロッパ、北アメリカの減少により、前年度比90.0%の1,193億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比87.4%の2,388億円と見込んだ。

2021年度

 内需は、コロナ下で先送りされていた製造業の更新需要が徐々に持ち直していくものの、石化プラントの統廃合等により需要減が続くことから、受注金額としてはほぼ前年度並みとなり、前年度比100.0%の1,194億円と見込んだ。

 外需は、アジア、特に中国の製造業からの需要が増加していくものの、エネルギー市場の構造変化に伴うオイル& ガス関連の需要の減少により、前年度比100.0%の1,193億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比100.0%の2,388億円と見込んだ。

8.送風機

2020年度

 内需は、化学工業、鉄鋼、電気機械、電力、運輸・郵便の減少により、前年度比95.0%の231億円と見込んだ。

 外需は、中東で大口受注があったことから、前年度比190.0%増の34億円と見込んだ。

内外総合では、前年度比101.6%の266億円と見込んだ。

2021年度

 内需は、コロナ下で先延ばしにされていた製造業の更新需要の持ち直しに加え、バイオマス発電設備での需要が堅調に推移する他、CO2 回収・有効利用・貯留(CCUS)実証プラントでの需要を見込み、前年度比105.0%の243億円と見込んだ。

 外需は、アジアの素材産業からの更新需要の拡大を見込むものの、前年度に大型設備を受注した反動により、前年度比70.0%の24億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比100.4%の267億円と見込んだ。

9.運搬機械

2020年度

 内需は、食品、情報通信機械、卸売・小売の搬送設備や造船のクレーン、電力のアンローダが増加したものの、化学工業、はん用・生産用、運輸・郵便の搬送設備が減少したことから、前年度比90.0%の2,922億円と見込んだ。

 外需は、アジア、中東、北アメリカの搬送設備、ヨーロッパのクレーンが減少したことから、前年度比70.0%の961億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比84.1%の3,884億円と見込んだ。

2021年度

 内需は、製造業・流通向けの搬送システムの需要増に加え、クレーンではコロナ下で先送りされていた製造業・港湾関係の更新需要の他、洋上風力建設用クレーンの需要を見込み、前年比105.0%の3,069億円と見込んだ。

 外需は、アジア等での自動車・半導体・液晶生産ライン向けや、コールドチェーン関連の搬送設備の需要増に加え、クレーンの更新需要の回復により、前年度比150.0%の1,442億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比116.1%の4,511億円と見込んだ。

10.変速機

2020年度

 内需は、食品、繊維、金属製品、情報通信機械、運輸・郵便、官公需の増加により、前年度比105.0%の343億円と見込んだ。

 外需は、北アメリカが減少したものの、アジアの増加により、前年度比100.0%の53億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比104.3%の396億円と見込んだ。

2021年度

 内需は、物流機器や半導体製造装置、ロボット、工作機械等での需要増により、前年度比105.0%の360億円と見込んだ。

 外需は、アジアや北アメリカでの加工機械や搬送設備等での需要増に加え、風力発電機に搭載される変速機の需要増により、前年度比105.0%の56億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比105.0%の416億円と見込んだ。

11.金属加工機械(製鉄機械)

2020年度

 内需は、鉄鋼の減少により、前年度比85.0%の605億円と見込んだ。

 外需は、アジア、北アメリカの減少により、前年度比90.0%の386億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比86.9%の991億円と見込んだ。

2021年度

 内需は、粗鋼生産が増加に転じることを背景とした老朽設備等の更新需要や、EV等の高級材の設備投資が増加し、前年度比135.0%の817億円と見込んだ。

 外需は、コロナ下で延期していた各国の鉄鋼業の投資案件の再開により、前年度比110.0%の424億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比125.3%の1,242億円と見込んだ。

12.その他産業機械(業務用洗濯機、メカニカルシール等を含むが、中核をなすのは官公需向けごみ処理装置である)

2020年度

 内需は、廃棄物発電など清掃工場の更新の発注が増加したことから、前年度比135.0%の6,479億円と見込んだ。

 外需は、アジアの減少により、前年度比80.0%の1,264億円と見込ん

だ。

 内外総合では、前年度比121.4%の7,743億円と見込んだ。

2021年度

 内需は、都市ごみ処理装置の大規模な更新案件が前年度に比べて減少することから、前年度比75.0%の4,859億円と見込んだ。

 外需は、アジア新興国での再生可能エネルギーとしての廃棄物発電のニーズが増加していることから、前年度比105.0%の1,327億円と見込んだ。

 内外総合では、前年度比79.9%の6,186億円と見込んだ。

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