建設機械、2020暦年統計まとめ:生産は17.8%減の1兆4,147億円、貿易統計の輸出は21.3%減の8,965億円

・建機工の出荷金額は17.7%減の2兆1,658億円

■はじめに

 英国の市場調査会社、Off-Highway Research(オフ・ハイウェイ・リサーチ)によると、世界の建設機械の販売は2021年にリバウンドで増加するとのこと。これは、Covid-19のパンデミックのために比較的低いベースからのものだが、刺激的な支出計画により、リバウンドは強いと予想している。

 2020年に成長した唯一の主要な建設機械市場は中国である。中国政府は4月に景気刺激策を実施し、これにより建設機械の販売が急増した。2021年、中国市場はピークから後退するのではないかと予想されるものの水準は高いと見られる。一方の大市場である米国では、バイデン新政権が環境・インフラに4年間合計2兆ドル(約210兆円)を投資する政策を発表している。そのほか、欧州その他の国々もコロナ後の雇用対策で経済復興策を余儀なくされ、2020年の落ち込みに続いて力強い成長を遂げるという見立てである。

 先ごろ2020年第4四半期の決算を終えた海外メーカーのコメントによると、世界的な需要動向は、2020年第4四半期からの回復に加え、各国の経済対策によるインフラ投資が予想されることから、さながら反動増の様相を呈している。一説には、2021年の中国を除く世界の成長率は10%程度になるとの見方もある。いずれにしろ前提条件は新型コロナの感染状況次第である。ちなみに、日本建設機械工業会の需要予測は2月24日に発表される。

■海外メーカー第4四半期のコメント

・キャタピラー:「第4四半期および通年の結果は、長期的な収益性の高い成長のための戦略を実行しながら、困難な環境でのチームの敏捷性を反映している。製品やサービスへの投資を継続しながら、2019年の投資家の日に設定された調整後営業利益率を達成した。キャタピラーは将来に向けて良い立場にあり、さらに強力な企業としてパンデミックから抜け出すだろう。」

・ボルボCE:「2020年は世界的大流行により、前例のない課題が発生した。しかし、ビジネスパートナーやサプライヤーと協力して、危機のすべての段階を通じて顧客をサポートすることができた。建設活動は現在、パンデミック前のレベルと同等に戻っており、これは顧客に自信を与えている。これは、ボルボCEの強い受注に表れている。」

・斗山インフラコア:「2021年の中国市場は僅かに下落すると予想しているが、共産党創立100周年であるため、積極的な景気刺激策が実施されれば、さらに上振れの可能性がある。先進国市場は、既存の建設プロジェクトの再開、低金利による住宅需要の増加、経済刺激策によるインフラ投資のおかげで成長するはずだ。北米での大容量ディーラーの増加、新規ディーラーによるチャネル競争力の強化、ヨーロッパのホイールローダーの本格的な販売、キーアカウント獲得への取り組みにより、先進国市場での販売は前年比11%増となる見込み。新興市場は、インフラ投資や原材料価格の回復に伴い、年々成長すると予測されている。」

・JCB:「2020年3月、Covid-19のパンデミックが発生したとき、受注は一夜にして劇的に消えた。製造現場の従業員を保護することはできたが、残念ながら多くのスタッフのポジションに影響があった。ビジネスが生産レベルに戻るまでに6か月以上かかった。最後に見たのは2020年3月だ。2021年は力強く始まり、予測ではヨーロッパ本土と北米からの強い需要により、引き続き堅調な回復が見込まれている。これは、現在、より多くの製造現場の同僚を採用し、多数の既存の代理店従業員に恒久的なJCB契約を提供する立場にあることを意味する。」

・Manitou Group:「第4四半期には、顧客の要求が毎月加速し、12月まで以前は知られていなかった規模で終了した。ヨーロッパや北米のレンタル会社を含め、すべての地域と市場はダイナミックだった。このようにして、これまで経験したことのない2番目に高いレベルのオーダーブックで2020年を締めくくった。2021年の売上高は前年比で10%以上増加すると予想される。」

・Haulotte:「まだ非常に不確実な環境にもかかわらず、ここ数週間に見られた販売活動の改善と主要なレンタル会社からの期待される投資収益率により、Haulotteは2021年に約10%増の売上成長を記録できるはずである。」

■日本国内の2020年統計データ

 このような状況のもと、2021年1月末に発表された2020年(1~12月)の経済産業省・機械統計(海外生産は除く)、日本建設機械工業会・出荷額統計、財務省・貿易統計(中古車含む)について、好評につき過去5年間のデータをPDFに整理してみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<生産統計>

 経済産業省機械統計によると、2020年の生産金額は前年比17.8%減の1兆4,147億円、生産数量は同7.5%減の362,676台となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トラクタ(*実質はホイールローダ)の生産金額は同19.7%減の652億円、数量は同24.6%減の8,273台となった。

 掘削機械のうちトンネル機械を除くショベル系(油圧式)の生産金額は同6.0%減の1兆676億円、数量は同5.9%減の180.833台となった。うち油圧ショベルの生産金額は同20.9%減の7,429億円、数量は同9.6%減の72,974台。ミニショベルの生産金額は同2.0%減の3,246億円、数量は同3.3%減の107,859台となった。この数年での増加は殆ど輸出によるものである。

建設用クレーン全体の生産金額は同26.8%減の1,647億円、数量は同20.8%減の15,231台となった。

 建設機械生産台数(2020年:機械統計)

 建設機械生産金額(2020年:機械統計)

<出荷額統計>

 日本建設機械工業会によると、2020年(1~12月)の出荷金額は前年比17.7%減の2兆1,658億円、うち国内は同2.4%減の9,954億円、輸出は同27.4%減の1兆1,704億円となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出荷金額のうち、本体出荷金額は同17.4%減の1兆8,913億円。うち国内は同3.0%減の8,702億円、輸出は同26.7%減の1兆211億円。

 本体機種別によると、油圧ショベルは、同20.7%減の7,575億円。国内は同6.3%増の2,995億円、輸出は同32.0%減の4,580億円。ミニショベルは同2.3%減の3,091億円。国内は同3.8%増の887億円、輸出は同4.6%減の2,204億円。建設用クレーンは、同17.5%減の2,356億円。国内は同12.0減の1,758億円、輸出は30.4%減の598億円となった。

補給部品は同19.7%減の2,744億円、うち国内は2.3%増の1.252億円、輸出は同32.0%減の1,492億円だった。

 建設機械出荷金額(2020年:日本建設機械工業会)

 建設機械国内出荷台数(2020年:日本建設機械工業会)

<貿易統計>

 財務省が発表した貿易統計(確報)によると、2020年(1~12月)の建設用・鉱山用機械輸出額は前年比21.3%減の8,965億円(億円以下切捨て)となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地域別によると、アメリカ向けは前年比25.3%減の3,298億円、EU向けは同30.3%減の1,691億円、アジア向けは同25.6%減の1,721億円。この3地域で建設用・鉱山用機械全体の75%(2019年=80%)を占めた。アジア向けのうち、中国向けは同34.9%減の238億円、ASEAN向けは同28.7%減の737億円。

 うち主力機種である油圧ショベル(新車)の金額は、同31.5%減の3,663億円、数量は同26.2%減の33,117台となった。仕向地別では、台数・金額で約38%を占める最大の輸出先であるアメリカ向けは、金額では39.3%減、オランダは9.8%減、英国31.0%減となった。

 中古車の金額は、同10.1%減の589億円、数量は同6.4%減の16,851台となった。金額ベースによる上位輸出先は、ベトナム、台湾、バングラデッシュ、フィリピン、タイの順。台数ベースの上位輸出先は、香港、ベトナム、台湾、バングラデッシュ、フィリピンの順。うちベトナム、台湾、タイ向けは前年比で増加した。

 ミニショベル(新車)の金額は、同4.7%減の1,858億円、数量は同4.9%減の66,799台。金額ベースによる上位輸出先は、アメリカ、オランダ、オーストラリア、タイ、韓国の順。数量ベースは、アメリカ、オランダ、オーストラリア、韓国、中国の順。数量・金額では、オーストラリア、タイ、韓国が増加した。

 中古車は同12.5%減の139億円、数量は同12.3%減の16,605台となった。金額ベースによると、上位輸出先は、ベトナム、台湾、中国、ロシア、香港の順。数量では、ベトナム、ロシア、タイ、中国、台湾の順となっている。

 2020年の建設用・鉱山用機械輸出実績

 油圧ショベル貿易統計(2020年:財務省)

 ミニショベル貿易統計(2020年:財務省)