川崎重工、20年4~12月期売上は9%減の1兆324億円

 川崎重工業が2月4日に発表した2021年3月期第3四半期(2020年4~12月)連結業績によると、受注高は前年同期比1,085億円減少(10.6%減)の9,140億円、売上高は前年同期比1,029億円減収(9.1%減)の1兆324億円、営業損益は前年同期比347億円悪化して37億円の損失、経常損益は前年同期比154億円悪化して0億円の損失、親会社株主に帰属する四半期純損益は前年同期比187億円悪化して139億円の損失となった。

■経営成績に関する説明

 新型コロナウイルスの感染収束の見通しは依然として不透明であり、世界経済への影響の長期化が懸念される。このような中、リモートワークの広がりやアウトドア志向の強まりを受け、新しい働き方や生活様式に関する製品やサービスの需要の増大、更には脱炭素社会に対する取組みへの社会の関心が高まるなど、厳しい世界経済の状況下においても明るい兆しが見られる。なお、米国では、政権交代により国際協調路線への復帰が期待されるが、米中関係の今後の動向には引き続き注視が必要である。

 このような経営環境の中で、2020年4~12月期における川崎重工グループの連結受注高は、エネルギー・環境プラント事業、車両事業を中心に減少となった。連結売上高については、精密機械・ロボット事業などが増収となる一方で、航空宇宙システム事業などが減収となったことにより、全体では前年同期比で減収となった。

 利益面に関しては、営業損益はモーターサイクル&エンジン事業の改善はあったものの、航空宇宙システム事業での悪化などにより、減益となった。経常損益は、為替差損益の好転や民間航空エンジンの運航上の問題に係る引当金戻入益の計上はあったものの、営業損益の減益により減益となった。親会社株主に帰属する四半期純損益は、固定資産売却益の特別利益への計上はあったものの、経常損益の減益に加え、固定資産の減損損失の特別損失への計上や繰延税金資産の一部取崩しを行ったことにより、減益となった。

 川崎重工2021年3月期第3四半期データ

■部門別状況

<航空宇宙システム事業>

 航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては厳しい防衛予算の中で概ね安定した需要が存在している。民間航空機については、新型コロナウイルスの感染拡大により世界の旅客需要が低迷しており、機体・エンジンともに需要が低下している。

 このような経営環境の中で、連結受注高は、防衛省向けは増加したものの、民間航空機向け分担製造品や民間航空エンジン分担製造品が減少したことにより、前年同期に比べ203億円減少の2,247億円となった。

 連結売上高は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品、民間航空エンジン分担製造品が減少したことにより、前年同期に比べ934億円減収の2,779億円となった。営業損益は、減収などにより、前年同期に比べ397億円悪化して192億円の営業損失となった。

<エネルギー・環境プラント事業>

 エネルギー・環境プラント事業を取り巻く経営環境は、国内ではごみ焼却プラント等において老朽化設備の更新需要が継続しているほか、中長期的には国内外の分散型電源需要、及び新興国におけるエネルギーインフラ整備需要が根強い状況にある。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞や資源価格の不安定化により、顧客の短期的な設備投資判断が見直されるなど、不透明な状況が継続している。

 このような経営環境の中で、連結受注高は、国内向けごみ処理施設の大規模改修工事やエネルギー事業での大口案件の受注があった前年同期に比べ297億円減少の1,546億円となった。

 連結売上高は、国内向けごみ処理施設案件の工事量増加や国内向けガスタービンコンバインドサイクル発電プラントの売上増加はあったものの、海外向け化学プラントの売上があった前年同期に比べ24億円減収の1,599億円となった。営業利益は、減収に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響による操業差損の発生などにより、前年同期に比べ43億円減益の86億円となった。

<精密機械・ロボット事業>

 精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、精密機械分野では、中国建設機械市場が新型コロナウイルス感染拡大の影響からいち早く回復しており、川崎重工の中国市場向け販売も、昨年度を上回る状況にある。また、中国以外の地域における建設機械市場は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による市場の停滞により、需要が大幅に減少していたが、足元では回復基調が鮮明となってきている。

 ロボット分野では、汎用ロボットは、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け案件の期ずれがあるものの、回復が早かった中国一般産機向けに加え、車体組立向けも堅調に推移している。半導体向けロボットについても、半導体製造装置メーカーの設備投資の増加により好調に推移しており、中長期的にも需要は着実に拡大していくことが見込まれる。

 このような経営環境の中で、連結受注高は、建設機械市場向け油圧機器や半導体向け及び車体組立向けロボットの増加により、前年同期に比べ131億円増加の1,702億円となった。

 連結売上高は、建設機械市場向け油圧機器や半導体向け及び車体組立向けロボットの増加により、前年同期に比べ71億円増収の1,542億円となった。営業利益は、増収により、前年同期に比べ29億円増益の81億円となった。

<船舶海洋事業>

 船舶海洋事業を取り巻く経営環境は、環境規制強化に伴うガス燃料推進船需要が顕在化する一方で、新型コロナウイルスの感染拡大により新規商談案件が限られている上、韓国・中国造船所の低価格受注によって市場回復が遅れ、依然として厳しい状況にある。

 このような経営環境の中で、連結受注高は、前年同期に比べ10億円増加の327億円となった。

 連結売上高は、新造船の工事量は前年同期並みだったものの、修繕船の売上増加などにより、前年同期に比べ27億円増収の557億円となった。営業損益は、増収があったものの、操業差損の発生などにより、前年同期に比べ22億円悪化して30億円の営業損失となった。

<車両事業>

 車両事業を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により国内では鉄道関連投資計画の見直し、海外では工程の遅れや入札の延期・中止等が現実となりつつあるが、中長期的には、人口集中による大都市の混雑緩和や環境対策のための都市交通整備、アジア諸国の経済発展に伴う鉄道インフラニーズなど、今後も世界的に比較的安定した成長が見込まれる。

 このような経営環境の中で、連結受注高は、国内私鉄・公営鉄道向けの大口案件の受注があった前年同期に比べ420億円減少の492億円となった。

 連結売上高は、米国向け車両が減少したものの、国内向け車両が増加したことなどにより、前年同期に比べ40億円増収の1,015億円となった。営業損益は、新型コロナウイルス感染拡大の影響などによる海外案件の採算悪化はあったものの、増収により、前年同期に比べ18億円改善して13億円の営業損失となった。

<モーターサイクル&エンジン事業>

 モーターサイクル&エンジン事業を取り巻く経営環境は、主要市場である欧米や東南アジアで新型コロナウイルスの感染が拡大し市場が大きな影響を受けた。足元の小売販売は、米国市場はオフロードモデルに対する需要の高まり等により前年度を上回る水準となり、また欧州市場も前年度並みの水準まで回復している。一方、新興国市場は依然として低迷し、前年度を下回る水準が続いている。

 このような経営環境の中で、連結売上高は、北米向け四輪車の増加はあったものの、新興国向け二輪車が大きく減少したことや、前年同期に比べ為替レートが円高で推移したことなどにより、前年同期に比べ46億円減収の2,255億円となった。営業損益は、減収があったものの、固定費の削減などにより、前年同期に比べ64億円改善して18億円の営業利益となった。

<その他事業>

 川崎重工グループはグループビジョン2030において、「安全安心リモート社会」「近未来モビリティー」「エネルギー・環境ソリューション」の3点に独自の視点でフロンティアを切り拓いていくこととしており、手術支援ロボットの開発や、ロボットによる自動PCR検査サービス事業、水素関連の開発など、新事業への取り組みを着実に進めている。

 連結売上高は、前年同期に比べ163億円減収の575億円となった。営業利益は、前年同期に比べ15億円減益の5億円となった。

■連結業績予想などの将来予測情報に関する説明

 2021年3月期の連結業績については、連結売上高は前回(10月29日)公表値を据え置く。連結営業利益、連結経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益はともに前回から改善し、連結営業利益100億円の損失、連結経常利益150億円の損失、親会社株主に帰属する当期純利益250億円の損失となる見通し。また、連結受注高は1兆3,600億円、ROICは△1.7%、ROEは△5.5%となる見通し。

 業績予想における為替レートは、1ドル=104円、1ユーロ=123円を前提としている。

 川崎重工業の2021年3月期第3四半期決算短信

 第3四半期決算説明資料