・米国で遺伝子治療分野の受託体制を拡充し、バイオ医薬品の受託ビジネスを拡大
・遺伝子治療薬のプロセス開発・原薬製造拠点を新設
・最先端の研究開発を進める製薬会社やアカデミアが集積する米国ボストンエリアに進出
富士フイルムは1月5日、バイオ医薬品(※1)の開発・製造受託事業をさらに拡大するため、バイオ医薬品CDMO(※2)の中核会社であるFUJIFILM Diosynth Biotechnologies(フジフイルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズ、以下FDB)に約40億円の設備投資を行い、遺伝子治療薬のプロセス開発・原薬製造拠点を米国ボストンエリアに新設すると発表した。今後、新拠点の設備を順次稼働させ、2021年秋にプロセス開発、2023年秋に原薬製造の受託を開始する予定。
なお、新拠点は、FDBにおいて、米国テキサス、英国に続く、第3の遺伝子治療薬CDMO拠点となる。
遺伝子治療薬は、疾患の原因となる遺伝子を持った患者に、ウイルス(※3)などを利用して外部から正常な遺伝子を導入することで疾患を治療するバイオ医薬品。遺伝子治療薬の製造には、複数の遺伝子を細胞に導入する高度なバイオテクノロジーやウイルスの封じ込め技術・設備などが求められ、また製造に最適なプロセスの開発も必要であることから、優れた技術と設備を有するCDMOに遺伝子治療薬の生産プロセス開発と製造を一括して委託するニーズが高まっており、受託ビジネスの需要も急伸している。
富士フイルムは、2014年に、FDBの米国テキサス拠点を活用して遺伝子治療薬のプロセス開発・製造受託ビジネスを開始した。現在、さらなるビジネス拡大を図るため、総額約130億円をかけて米国テキサス拠点に遺伝子治療薬のプロセス開発棟の新設と原薬製造設備の増強を進めている。また、英国拠点でも、2021年春の稼働開始に向けて、遺伝子治療薬のプロセス開発・製造施設の開設準備を進めている。
今回、富士フイルムは、最先端の研究開発を行う製薬会社やアカデミアなどが集積する米国ボストンエリアに、遺伝子治療薬のプロセス開発および原薬製造の拠点を新設する。最先端の研究開発を行う顧客のそばで、開発初期段階から受託サービスを迅速に提供することで、顧客の新薬開発を支援する。
新拠点には、細胞培養・精製のプロセス条件の実験・分析設備や細胞培養タンクなどを導入。生産プロセス開発から、初期の臨床試験に用いる治験薬の原薬製造までを受託する。さらに、新拠点を、遺伝子治療薬の原薬の大量製造や製剤化にも対応できる米国テキサス拠点と連携させることで、顧客の開発進展に伴う治験薬のスケールアップや商業生産などの顧客ニーズにも応えることができる。
今後、富士フイルムは、テキサスとボストンの米国2拠点、英国拠点を活用して、遺伝子治療薬のプロセス開発・製造受託ビジネスをさらに拡大していく。
富士フイルムは、抗体医薬品やホルモン製剤、遺伝子治療薬、ワクチンなどあらゆる種類のバイオ医薬品の生産プロセスを開発し、少量生産から大量生産、原薬から製剤・包装までの製造受託に対応できる強みを生かしてさらなる事業成長を図るとともに、高品質な医薬品の安定供給を通じて顧客の新薬創出をサポートし、アンメットメディカルニーズへの対応など社会課題の解決、さらにはヘルスケア産業の発展に貢献していく。
※1 低分子医薬品では実現できない作用を持つ、たんぱく質などの生体分子を活用した医薬品。インスリンや成長ホルモンの他に、ワクチン、抗体医薬品、遺伝子治療薬などを含む。
※2 Contract Development&Manufacturing Organizationの略。薬剤開発初期の細胞株開発から生産プロセス開発、安定性試験、治験薬の開発・製造、市販薬の製造までの幅広いサービスを製薬企業などに提供する。
※3 遺伝子を体内の細胞へ導入する際に、正常な遺伝子を内包したウイルスを運び屋として用いる。運び屋としてのウイルスは、ウイルスベクターと呼ばれ、アデノ随伴ウイルス(AAV)やレンチウイルスなどが用いられる。
<新設する遺伝子治療薬のプロセス開発・原薬製造拠点の概要>
場所:米国ボストンエリア(マサチューセッツ州ウォータータウン市)
総投資金額:約40億円
導入機器:生産プロセス開発設備:細胞培養・精製のプロセス条件の実験・分析機器など。原薬製造設備:細胞培養タンク(50リットル×1基、200リットル×1基)など
着工時期:2021年1月
稼働時期:プロセス開発:2021年秋、 原薬製造:2023年秋
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