日立建機の平野耕太郎社長は12月18日、年末メディア合同ミーティング(対面・オンライン併催)を開催し、2020年を振り返るととともに、2021年以降に向けた取り組みの考え方や方向性などを語った。以下、順不同で内容を抜粋。
■南米で鉱山機械のサービス強化、ディア社と対応協議
まず、大型機が主体の鉱山(マイニング)機械事業では、市場戦略の一環として南米でのアフターサービス体制を強化する。南米市場は、提携先である米ディア社が担当しているエリアだが、ディア社は大型の鉱山機械の開発を行っていないことから、専従のサービス人員、また部品供給体制が整っていない。このため、本体受注におけるハンディとなっていた。今後、買収した子会社、ブラッドケン社などの活用も含め、ディア社との間で同地域におけるサービス体制のあり方を協議し詰めていく。
同社によると、2020年の建設機械需要は、中国を除く世界各地で大幅に減少し、新型コロナウイルスの影響による市況悪化や為替の影響で、日立建機の業績は減収減益となった。上期は工場で生産調整するなど在庫を適正化し、キャッシュフローも黒字化した。
注力しているマイニング市場も、石炭価格の下落などを受け、顧客が新規投資を抑制する傾向がさらに強まっており、オーストラリア東部やインドネシアにおける新車の需要は減少している。ただ、将来的には、インド、アフリカ、ロシアなども含め、新興国は石炭火力発電に依存せざるを得ないことから、石炭に関連する鉱山機械の需要も引き続き期待される。
一般に、鉱山機械ユーザーは、中・小型機のユーザーとは違い、アフターサービスに対する関心は特に高い。日立建機では、アフリカのザンビアやモザンビークではサービス工場を設け、サービス要員を駐在させるなど、24時間365日の体制をとっている。南米市場は、銅関連などで鉱山機械の需要が多いが、提携先のディア社は不得意な分野で、競合他社に比べての手薄感は否めない。
■需要回復のミニショベルは来年もフル生産を継続
エッセンシャル(欠くことができない)ビジネスである建設機械の世界需要は、コロナ禍で厳しい状況にあり、今のところ新車需要は厳しい。ただ今秋以降、機械の稼働率は上がっており、レンタル需要は伸びている。
製品別にみると、まずリーマンショック後の回復パターンと同じで、ミニショベルから回復が始まっている。生産を担当する日立建ティエラ(本社:滋賀県)は、2020年4月から龍ケ崎工場から移設したミニホイールローダの生産も加えているが、現状は夜間稼働を除き昼間はフル稼働状態にある。2021年も引き続きフル稼働を続ける予定だ。
■中国市場には土木専用機を投入、台頭する中国メーカーに対応
地域的にみると、世界最大市場の中国では、価格が2割程度安いとされる、三一重工、徐工など現地メーカーの台頭に対応して土木専用機(6、12、20トン)を発売した。現地メーカー製品は、日系メーカーのエンジンや油圧機器を搭載しており、ここ数年来、性能的には上がってきている。中国国内での市場シェアも拡大しており、近年では東南アジア地域などにも積極的に進出している。日立建機では、今年投入した専用機を中国市場で数十台販売して反応をみつつ、インドネシア、マレーシア、タイなど東南アジアでも販売していく方針だ。
中国市場の見方については、年度ベースの日本企業と暦年ベースの海外企業とでは異なる。2020年の春節需要のピークは、コロナ禍により例年の3月から5月にずれ込んだ。年度ベースでみると、2020年度は春節需要の恩恵を2度受けるが、21年度は1度も受けない。したがって、年度ベースでは中国需要は大きく伸びないと予想せざるを得ない。今後については、中国政府の排ガス規制の時期、また生産規制か販売規制かどのような形で施行されるかが焦点だとしている。
■油圧ショベル同等の性能を目指す電動ショベル
また、欧州、特に北欧を筆頭に、先進国の都市部で主流となるとみられる電動ショベルについても、同一クラスのエンジン式ショベルと同等のパワーを出す機械の開発を目指す考え。すでに日欧で、2トン、5トン、8トンクラスで開発を進めているが、1日あたりの稼働時間、掘削能力など既存ショベルに比べて同等レベルを目指し開発を進める方針だ。
オンライン会見より
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