川崎重工業が10月29日に発表した2021年3月期第2四半期(4~9月)連結業績によると、受注高は前年同期比1,551億円減少(23.6%減)の5,022億円、売上高は前年同期比792億円減収(10.8%減)の6,573億円、営業損益は前年同期比305億円悪化して218億円の損失、経常損益は前年同期比191億円悪化して182億円の損失、親会社株主に帰属する四半期純損益は前年同期比235億円悪化して272億円の損失となった。(数値表記は原文尊重)
新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響は、国内外での経済活動の再開や各国政府による財政政策等により徐々に緩和されつつある。一方、感染収束の見通しは未だ立っておらず、政策効果の息切れや、企業業績の悪化、設備投資の抑制、雇用環境の悪化、個人消費の停滞等も懸念され、今後の実体経済の先行きは不透明な状況である。これに加え、米中関係の悪化により、世界経済の不確実性は一層高まりを増していることから、米中関係の動向には引き続き注視が必要である。
このような環境のもと、受注高は、航空宇宙システム事業、エネルギー・環境プラント事業を中心に減少となった。売上高については、車両事業などが増収となる一方で、航空宇宙システム事業、モーターサイクル&エンジン事業などが減収となったことにより、全体では前年同期比で減収となった。
営業損益は車両事業の改善はあったものの、航空宇宙システム事業での悪化などにより、減益。経常損益は、為替差損益の好転や民間航空エンジンの運航上の問題に係る引当金戻入益の計上はあったものの、営業損益の減益により減益。親会社株主に帰属する四半期純損益は、固定資産売却益の特別利益への計上はあったものの、経常損益の減益に加え、固定資産の減損損失の特別損失への計上や繰延税金資産の一部取崩しを行ったことにより、減益となった。
■セグメント別状況
<航空宇宙システム事業>
航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては厳しい防衛予算の中で概ね安定した需要が存在している。民間航空機については、新型コロナウイルスの感染拡大により世界の旅客需要が低迷しており、機体・エンジンともに需要が低下している。
連結受注高は、民間航空機向け分担製造品や民間航空エンジン分担製造品が減少したことにより、前年同期に比べ862億円減少の724億円となった。
連結売上高は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品、民間航空エンジン分担製造品が減少したことにより、前年同期に比べ823億円減収の1,685億円となった。営業損益は、減収などにより、前年同期に比べ335億円悪化して238億円の営業損失となった。
<エネルギー・環境プラント事業>
エネルギー・環境プラント事業を取り巻く経営環境は、国内ではごみ焼却プラント等において老朽化設備の更新需要が継続しているほか、中長期的には国内外の分散型電源需要、及び新興国におけるエネルギーインフラ整備需要が根強い状況にある。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞や資源価格の不安定化により、顧客の短期的な設備投資判断が見直されるなど、不透明な状況が継続している。
連結受注高は、国内向けごみ処理施設の大規模改修工事やエネルギー事業での大口案件の受注があった前年同期に比べ281億円減少の958億円となった。
連結売上高は、国内向けごみ処理施設案件の工事量増加や国内向けガスタービンコンバインドサイクル発電プラントの売上増加などにより、前年同期に比べ89億円増収の1,045億円となった。営業利益は、増収があったものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響による操業差損の発生などにより、前年同期に比べ6億円減益の44億円となった。
<精密機械・ロボット事業>
精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、精密機械分野では、中国建設機械市場が新型コロナウイルス感染拡大の影響からいち早く回復しており、川崎重工の中国市場向け販売も、昨年度を上回る状況にある。一方、中国以外の地域における建設機械市場は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による市場の停滞により、需要が大幅に減少した。足元では、中国以外の地域においても建設機械需要回復の兆しが見えつつあるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、先行き不透明な状況が継続している。
ロボット分野では、汎用ロボットは、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け案件の期ずれがあるものの、回復が早かった中国市場で堅調に推移しており、半導体向けロボットについても、米中摩擦の影響による不透明感は強まっているものの、足元では堅調に推移しており、中長期的にも需要は着実に拡大していくことが見込まれる。
連結受注高は、半導体向けロボットの増加はあったものの、建設機械市場向け油圧機器の減少により、前年同期に比べ21億円減少の1,024億円となった。
連結売上高は、半導体向けロボットの増加はあったものの、建設機械市場向け油圧機器の減少により、前年同期並みの990億円となった。営業利益は、前年同期並みの34億円となった。
<船舶海洋事業>
船舶海洋事業を取り巻く経営環境は、環境規制強化に伴うガス燃料推進船需要が顕在化する一方で、海運マーケットの長期低迷、新型コロナウイルスの感染拡大による商談の停滞などにより、依然として厳しい状況にある。
連結受注高は、LPG運搬船の受注の減少により前年同期に比べ39億円減少の225億円となった。
連結売上高は、新造船の工事量減少はあったものの、修繕船の売上増加などにより、前年同期に比べ11億円増収の382億円となった。営業損益は、修繕船の売上増加はあったものの、新造船の工事量減少や操業差損の発生などにより、前年同期並みの14億円の営業損失となった。
<車両事業>
車両事業を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により国内では鉄道関連投資計画の見直し、海外では工程の遅れや入札の延期・中止等が現実となりつつあるが、中長期的には、人口集中による大都市の混雑緩和や環境対策のための都市交通整備、アジア諸国の経済発展に伴う鉄道インフラニーズなど、今後も世界的に比較的安定した成長が見込まれる。
連結受注高は、新幹線車両の受注があったものの、国内私鉄・公営鉄道向けの大口案件の受注があった前年同期に比べ87億円減少の303億円となった。
連結売上高は、国内向け車両が増加したことなどにより、前年同期に比べ98億円増収の691億円となった。営業損益は、新型コロナウイルス感染拡大の影響などによる海外案件の採算悪化はあったものの、増収により、前年同期に比べ41億円改善して1億円の営業損失となった。
<モーターサイクル&エンジン事業>
モーターサイクル&エンジン事業を取り巻く経営環境は、主要市場である欧米や東南アジアで新型コロナウイルスの感染が拡大し市場が大きな影響を受けた。足元の小売販売は、米国市場はオフロードモデルに対する需要の高まり等により前年度を上回る水準となり、また欧州市場も前年度並の水準まで回復している。一方、新興国市場は依然として低迷し、前年度を下回る水準が続いている。
連結売上高は、新興国向け二輪車が大きく減少したことなどにより、前年同期に比べ74億円減収の1,397億円となった。営業損益は、減収に加え、対米ドルや対新興国通貨などで前年同期に比べ為替レートが円高で推移したことなどにより、前年同期に比べ18億円悪化して51億円の営業損失となった。
<その他事業>
連結売上高は、前年同期に比べ102億円減収の379億円となった。営業利益は、前年同期に比べ10億円悪化して1億円の営業損失となった。
■連結業績予想などの将来予測情報に関する説明
2021年3月期の連結業績予想については、連結売上高及び連結営業利益ともに前回から改善し、連結売上高1兆5,000億円(前回予想:1兆4,600億円)、連結営業利益200億円の損失(同:△300億円)となる見通しである。また、連結経常利益250億円の損失、親会社株主に帰属する当期純利益270億円の損失、ROICは△2.2%、ROEは△6.1%、連結受注高は1兆3,400億円となる見通しである。
▼修正の理由:モーターサイクル&エンジン事業において、北米や欧州の一部地域で足元の販売が計画を上回って推移していること、精密機械・ロボット事業において、中国 建機 市場向け油圧機器の販売が好調なこと等により、売上高及び営業利益ともに前回から改善する見通しである。
なお、前回公表時に未定としていた、 経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益及び 1株当たり当期純利益について、 現時点で把握できる情報に基づき算定し、公表することとした。
また、新型コロナウイルス感染拡大による影響については、前回公表時から変わらず、事業毎に以下の仮定を置いて算定している 。
① 航空宇宙システム事業は、世界の旅客需要が低迷しており、完全回復には相当期間を要する。② その他の事業は、中国建機市場向け油圧機器や半導体向けロボット等は既に回復基調にあるものの、その他の製品の需要回復には一定期間を要する。
業績予想における為替レートは、1ドル=106円、1ユーロ=123円を前提としている。
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