川崎重工業が8月6日に発表した2021年3月期第1四半期(4~6月)連結業績によると、受注高は前年同期比799億円減少(24.4%)の2,482億円、売上高は前年同期比501億円減収(14.3%)の3,006億円、営業損益は前年同期比217億円悪化して206億円の損失、経常損益は前年同期比145億円悪化して189億円の損失、親会社株主に帰属する四半期純損益は前年同期比35億円悪化して117億円の損失となった。
国内外経済とも、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、人・モノの輸送需要が減退しているほか、サプライチェーンの分断等により企業活動がグローバルレベルで大幅に停滞しており、実体経済にも大きな悪影響が出ている。一部の国・地域では経済活動が再開されつつあるが、先行きは予断を許さない状況である。こうした中で、米中関係は更に悪化しており、両国間経済の分断リスクが懸念されつつあることから、米中関係の今後の動向についても引き続き注視が必要である。
このような経営環境の中で、4~6月期における川崎重工業グループの連結受注高は、航空宇宙システム事業、エネルギー・環境プラント事業を中心に減少となった。連結売上高については、車両事業などが増収となる一方で、航空宇宙システム事業、モーターサイクル&エンジン事業などが減収となったことにより、全体では前年同期比で減収となった。
利益面に関しては、車両事業の改善はあったものの、航空宇宙システム事業での悪化などにより、営業利益、経常利益とも減益となった。親会社株主に帰属する四半期純損益は、固定資産売却益の特別利益への計上や税金費用の減少はあったものの、経常利益の減益により減益となった。
■セグメント別状況
<航空宇宙システム事業>
航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては厳しい防衛予算の中で一定程度の需要が存在している。民間航空機については、新型コロナウイルスの感染拡大により世界の旅客需要が低迷しており、機体・エンジンともに需要が低下している。
このような経営環境の中で、連結受注高は、民間航空機向け分担製造品や民間航空エンジン分担製造品が減少したことにより、前年同期に比べ243億円減少の454億円となった。
連結売上高は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品、民間航空エンジン分担製造品が減少したことにより、前年同期に比べ475億円減収の746億円となった。
営業損益は、減収などにより、前年同期に比べ223億円悪化して175億円の営業損失となった。
<エネルギー・環境プラント事業>
エネルギー・環境プラント事業を取り巻く経営環境は、国内ではごみ焼却プラント等において老朽化設備の更新需要が継続しているほか、中長期的には国内外の分散型電源需要、及び新興国におけるエネルギーインフラ整備需要が根強い状況にある。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞や資源価格の不安定化により、顧客の短期的な設備投資判断が見直されるなど、不透明な状況が継続している。
このような経営環境の中で、連結受注高は、国内向けごみ処理施設の大規模改修工事などの受注があった前年同期に比べ、236億円減少の462億円となった。
連結売上高は、国内向けごみ処理施設などの官公庁向け案件の増加などにより、前年同期に比べ50億円増収の500億円となった。
営業利益は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による操業差損の発生はあったものの、増収などにより、前年同期に比べ7億円増益の15億円となった。
<精密機械・ロボット事業>
精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、建設機械市場向けでは、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、全世界的に需要が大きく低迷した。現在も、新型コロナウイルスの感染拡大による影響は不透明な状況にあるが、中国建機市場はいち早く回復に向かっており、今後の動向を注視している。ロボット市場向けでは、汎用ロボットは、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け案件の期ずれがあるものの、回復が早かった中国市場で好調に推移しており、半導体向けロボットについても、顧客サプライヤーの納入遅延が懸念されるものの、大手半導体メーカーの投資再開により、中長期的には需要は着実に拡大していくと見ている。
このような経営環境の中で、連結受注高は、半導体向けロボットの増加はあったものの、建設機械市場向け油圧機器の減少により、前年同期に比べ21億円減少の507億円となった。
連結売上高は、半導体向けロボットの増加はあったものの、建設機械市場向け油圧機器の減少により、前年同期に比べ29億円減収の454億円となった。
営業利益は、減収により、前年同期に比べ4億円減益の13億円となった。
<船舶海洋事業>
船舶海洋事業を取り巻く経営環境は、環境規制強化に伴うガス燃料推進船需要の顕在化並びにLNG開発プロジェクトの具体化が進む一方で、海運マーケットの長期低迷、新型コロナウイルスの感染拡大による商談の停滞などにより、依然として厳しい状況にある。
このような経営環境の中で、連結受注高は、LPG運搬船を受注した前年同期に比べ116億円減少の99億円となった。
連結売上高は、LPG運搬船や潜水艦の工事量増加はあったものの、修繕船の売上減少などにより、前年同期に比べ7億円減収の221億円となった。
営業損益は、前年同期並みの4億円の営業損失となった。
<車両事業>
車両事業を取り巻く経営環境は、中長期的には、国内については老朽化車両の更新需要が持続的に見込まれます。海外についても、米国では注力市場であるニューヨーク地区をはじめ輸送力増強・更新需要が見込まれており、またアジアでは日本政府によるインフラ輸出促進に伴って新興国向け都市交通建設案件が計画されている。一方で、新型コロナウイルス感染拡大の影響による鉄道事業者の大幅な収入減、海外での新線建設工事の遅延により、今後は国内外の車両調達計画の見直し、納期の見直しが見込まれる。
このような経営環境の中で、連結受注高は、新幹線車両の受注があったことなどにより、前年同期に比べ27億円増加の187億円となった。
連結売上高は、国内向け車両が増加したことなどにより、前年同期に比べ119億円増収の323億円となった。
営業損益は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による海外案件の採算悪化はあったものの、増収に加え、期間費用の減少などにより、前年同期に比べ20億円改善して14億円の営業損失となった。
<モーターサイクル&エンジン事業>
モーターサイクル&エンジン事業を取り巻く経営環境は、主要市場である欧米や東南アジアで新型コロナウイルスの感染が拡大し、市場が大きな影響を受けた。
このような経営環境の中で、連結売上高は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け新興国向けや欧州向け二輪車、米国向け汎用エンジンが大きく減少したことなどにより、前年同期に比べ93億円減収の589億円となった。
営業損益は、減収に加え、対米ドルや対ユーロ、対新興国通貨などで前年同期に比べ為替レートが円高で推移したことなどにより、前年同期に比べ30億円悪化して59億円の営業損失となった。
<その他事業>
連結売上高は、前年同期に比べ65億円減収の169億円となった。
営業損益は、前年同期に比べ6億円悪化して1億円の営業損失となった。
■連結業績予想などの将来予測情報に関する説明
2021年3月期の連結業績予想については、新型コロナウイルス感染拡大による世界的な経済活動の停滞により、川崎重工業においても多大な影響を受ける見込みであり、業績影響を合理的に算出することが困難であるため未定としていたが、現時点で把握できる情報に基づき算定した。
2021年3月期の連結業績の見通しは、連結売上高は1兆4,600億円(前期比11.0%減)、営業損益は300億円の損失となる見通しである。連結受注高は1兆4,000億円となる見通しである。
なお、経常利益以下の損益、ROIC等の予想については引き続き未定とし、合理的な予想が可能となった時点で速やかに公表する。
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