コマツ、20年4~6月売上は24.8%減の4,587億円、通期予想は15.4%減の2兆680億円

 コマツが7月30日に発表した2021年3月期第1四半期(4~6月)連結業績によると、売上高は4,587億円(前年同期比24.8%減少)となった。建設機械・車両部門では、新型コロナウイルス感染拡大の影響などにより、北米、欧州、アジアを中心に需要が減少したことから、売上高は前年同期を下回った。産業機械他部門では、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、鍛圧機械、板金機械及び工作機械の需要が減少し、売上高は前年同期を下回った。利益については、建設機械・車両部門の販売量減少及び地域構成差、円高の影響などにより、営業利益は269億円(前年同期比64.0%減少)となった。売上高営業利益率は前年同期を6.4ポイント下回る5.9%、税引前四半期純利益は284億円(前年同期比57.4%減少)、株主に帰属する四半期純利益は162億円(前年同期比65.8%減少)となった。(数値表記は原文尊重)

 コマツは、2021年の創立100周年とその先の成長を目指し、2019年4月より2022年3月期をゴールとする3カ年の中期経営計画「DANTOTSU Value – FORWARD Together for Sustainable Growth」をスタートし、①イノベーションによる価値創造、②事業改革による成長戦略、③成長のための構造改革 を成長戦略3本柱として掲げている。新型コロナウイルスの世界的大流行による経済活動の停滞などにより、建設機械・車両部門、産業機械他部門ともに先行きは不透明かつ不確実な状況となっているが、将来に向けて、収益向上とESG(環境・社会・ガバナンス)の課題解決の好循環による持続的成長を目指して活動を継続していく。

 今年6月に発行を決定した、コマツとして初めてのグリーンボンド(無担保普通社債)を、7月に国内市場において公募形式で発行した。環境課題の解決に貢献する事業に使途を限定した資金を調達することにより、脱炭素社会の実現に向け、中期経営計画のESGの経営目標の取り組みを更に加速させていく。

 コマツ2021年3月期第1四半期データ

■部門別概況

[建設機械・車両]

 建設機械・車両部門の売上高は4,258億円(前年同期比24.2%減少)、セグメント利益は232億円(前年同期比66.2%減少)となった。

 新型コロナウイルスの世界的大流行による各国の経済活動の停滞などにより、需要が大きく落ち込む中、製品・部品・サービスの継続的な提供を行い、社会インフラを支える事業(Essential Business)に従事する顧客への責任を果たしている。

 中期経営計画における成長戦略3本柱の重点活動では、鉱山向け無人ダンプトラック運行システム(AHS)において順調に総稼働台数を増やし、6月末時点で合計4カ国・11現場で計251台のAHSダンプトラックが稼働しており、2008年の商用導入開始以来、累計総運搬量30億トンを達成した。

 4つのIoTデバイスと8つのアプリケーションから構成される建設現場向けソリューション「デジタルトランスフォーメーション・スマートコンストラクション」については、顧客の現場の新型コロナウイルス感染拡大防止に貢献するソリューションとして訴求すると共に、国内に加え海外展開を推進し、グローバルに建設現場のデジタルトランスフォーメーション実現の加速を目指していく。

 また、国内においては、環境に配慮したバッテリー駆動式ミニショベル「PC30E-5」の市場導入を開始し、中国や東南アジアといった戦略市場においては、燃費低減など最新技術に加え、耐環境性能向上を織り込んだ戦略市場向け新機種「PC210/215-10M0」「PC500LC-10M0」などの導入・拡販を進めた。

■地域別概況

<日本>

 日本では、公共工事などの稼働においては新型コロナウイルス感染拡大の影響は小さかったものの、政府の緊急事態宣言発令による民間工事の停滞や営業・サービス活動の制限により、売上高は前年同期を下回った。

<米州>

 北米では、新型コロナウイルス感染拡大の影響による経済活動の停滞を受け、レンタル向け一般建機を中心に需要が大きく落ち込んだことや、原油安の影響によりエネルギー関連向けの需要が減少したことなどにより、売上高は前年同期を大幅に下回った。

 中南米では、ブラジルにおいては経済優先策により新型コロナウイルス感染拡大の影響が小さかったものの、チリをはじめ、その他各国において一般建機・鉱山機械ともに需要が減少したことにより、売上高は前年同期を下回った。

<欧州・CIS>

 欧州では、主要市場であるドイツ、英国、フランスを中心に政府による経済活動の規制により、需要も大きく減少し、売上高は前年同期を大幅に下回った。

 CISでは、金鉱山向け需要は堅調であったものの、石炭向け鉱山機械需要が低調に推移したことなどにより、売上高は前年同期を下回った。

<中国>

 中国では、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、今年2月の春節(旧正月)後の販売シーズンが3月以降に後ろ倒しとなり、大幅に増加した需要を着実に取り込んだ結果、国産メーカーの販売比率は上昇しているものの、売上高は前年同期を上回った。

<アジア・オセアニア>

 アジアでは、最大市場であるインドネシアにおける燃料炭価格の下落に伴う鉱山機械の需要低迷に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、インドネシア、インド、フィリピンなど各国での政府による経済活動の規制により、一般建機需要が減少したことなどから、売上高は前年同期を大幅に下回った。

 オセアニアでは、鉱山機械の需要が堅調であるものの、豪ドル安の影響により、売上高は前年同期を下回った。

<中近東・アフリカ>

 中近東では、新型コロナウイルス感染拡大の影響による需要減少に加え、原油価格の低迷に伴い産油国を中心に需要が低調に推移したことにより、売上高は前年同期を大幅に下回った。

 アフリカでは、南部アフリカ地域において、新型コロナウイルス感染拡大に対する政府による経済活動の規制により需要が減少したことなどから、売上高は前年同期を大幅に下回った。

[リテールファイナンス]

 リテールファイナンス部門では、北米を中心に資産が減少したことに伴い、売上高は159億円(前年同期比7.9%減少)となった。セグメント利益は、支払猶予の影響及びリースアップ車の評価を見直したことなどにより、18億円(前年同期比44.3%減少)となった。

[産業機械他]

 産業機械他部門では、半導体市場向けエキシマレーザー関連製品の販売は堅調であったものの、鍛圧機械、板金機械及び工作機械については新型コロナウイルス感染拡大の影響による需要減少と顧客の現場における据付け作業の遅延により、売上高は250億円(前年同期比26.5%減少)、セグメント利益は17億円(前年同期比208.1%増加)となった。

 コマツ産機㈱では、今年4月より、プラズマ切断技術をリードするコマツ独自のテクノロジーを集約した中厚板のオールラウンド切断機である、高性能プラズマ切断機ツイスター「TFP510-3」の販売を開始した。

2021年3月期の見通し

 2020年5月18日に公表した「2020年3月期 決算短信〔米国基準〕(連結)」において未定としていた2021年3月期の連結業績予想について、現時点で入手可能な情報や予測などに基づき算出した結果、以下のとおり減収減益を見込んでいる。

 売上高2兆680億円(前期比15.4%減)、営業利益1,150億円(同54.1%減)、税引き前当期純利益1,080億円(同51.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益670億円(56.4%減)。

 建設機械・車両部門では、新型コロナウイルス感染拡大の影響による需要減少もあり、減収の見通し。伝統市場は第3四半期より、戦略市場は第4四半期より、需要は回復基調に入ることを想定している。一方、中国では、今年2月の春節(旧正月)後の販売シーズンの後ろ倒しやインフラ投資などの景気下支え策により、需要は堅調に推移すると想定している。また、機械稼働管理システム「KOMTRAX」から得られる車両稼働状況は回復基調であり、部品・サービスの需要については本体需要よりも早く回復すると見込んでいる。利益については、販売量減少及び地域構成差、円高の影響により減益となる見通し。

 リテールファイナンス部門では、新規取組高の減少などにより減収、支払猶予の影響及びリースアップ車の評価の見直しなどにより減益となる見通し。

 産業機械他部門では、自動車業界向けの新規設備の投資延期・抑制で厳しい環境が続くものの、半導体業界向けの需要が堅調であることなどから、増収増益となる見通し。

 業績見通しにおける為替レートは第2四半期以降を1米ドル=105円、1ユーロ=116円、1人民元=15.0円を前提としている。これにより通期平均の為替レートは、1米ドル=105.6円、1ユーロ=116.7円、1人民元=15.0円となる。

 ニュースリリース

 コマツの2021年3月期第1四半期決算短信

 第1四半期決算説明資料