技研製作所、2020年8月期第3四半期(9~5月)売上は3.8%減の191億円、通期予想は下方修正

 ㈱技研製作所が7月10日に発表した2020年8月期第3四半期連結累計期間(2019年9月~2020年5月)における売上高は19,091百万円(前年同期比4.8%減)、営業利益は事業体制強化のための人件費等が増加したこと等により2,404百万円(同24.3%減)、経常利益は2,639百万円(同18.4%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,704百万円(同23.6%減)となった。(数値表記は原文尊重)

■経営成績に関する説明

 第3四半期連結累計期間における事業環境は、国内の公共建設予算が前年度に続き高水準で確保されている一方、新型コロナウイルス感染拡大に伴う工事の一時中止や工期延長、発注の延期など、限定的ながらも影響が出ている。加えて、建設技能労働者不足や東京五輪後の反動減懸念などから、顧客は設備投資に慎重姿勢を強めており、先行きの不透明感が増している。

 こうした中、技研製作所グループでは、経営方針「インプラント工法で世界の建設を変える」を掲げ、「中期経営計画(2019年8月期-2021年8月期)」に定めた目標の達成に向け、建設をグランドデザインするグローバルエンジニアリング企業への転換を最重要課題として取り組んでいるが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う移動自粛要請や世界各国の入国制限などの影響を受け、その活動は限定的にならざるを得ない状況が続いた。

 一方で3月から開始したテレワークを、今後の新しい働き方と位置づけて定着を図ることで、「5つのレス(ペーパーレス・通勤レス・出張レス・オフィスレス・社宅(転勤)レス)」を推進して生産性の向上を図るとともにコスト削減を図り、新しい時代に向けた企業体質の強化を進めている。

 国内における工法普及活動では、自然災害からの復旧・復興事業や将来に備えた事前防災・減災対策、社会インフラの老朽化対策など国土強靱化施策を中心に、インプラント工法の適用範囲の拡大に取り組み、工法採用は順調に増加している。また、近年の自然災害により被害が頻発している河川堤防についても、「堤防は盛土により築造するもの」とした「土堤原則」を撤廃すべく、国民に訴えかけ、関係省庁にも粘り強く交渉し、インプラント工法による抜本的な対策の実現に向けた取り組みを進めている。

 海外展開では、各海外事業所に国内からエンジニアを派遣するなど技研製作所工法の提案・採用活動を強化しており、そのバックアップを行うエンジニアリング支援体制の整備を進めた。こうした中、5月には、オランダ・アムステルダム市が2018年に公募した世界遺産の運河護岸改修に関わる新技術開発提携の審査において、技研製作所のジャイロプレス工法およびGRBシステムが最高評価を受け、同市との間で連携協定を締結した。同市の管轄運河は600km以上あり、うち200kmについて緊急対策が必要とされている。本案件への応募は、技研ヨーロッパが、提携先のオランダのデ・コーニング社、および地元ゼネコンのヴァン・ゲルダー社と共同で行ったもの。今後、3社で技術開発・パイロット施工を実施した後、審査を経て、先ずは、2023年1月から4年間(8年まで延長可)、年間最大約1km(年間予算約20億円)の護岸改修工事が実施される。また、アメリカ・オーストラリア・ブラジル・アジアでも技研製作所工法の認知度は高まりつつあり、問合せ件数も増加傾向にある。そうした中、インプラント工法の優位性を最大限に発揮できる案件に対して確実な提案・採用活動を行い、機械販売、建設工事の元となるエンジニアリング事業のグローバル展開を進めている。

 地下開発事業では、JR川崎駅東口に、川崎市の発注による機械式地下駐輪場「エコサイクル」2基が完成し、4月1日にオープンした。これでエコサイクルの設置は全国で23カ所(57基)となった。

 技研製作所2020年8月期第3四半期データ

■セグメント業績

<建設機械事業>

 現在販売中のFシリーズは、販売開始から7年が経過し、顧客の買い替え時期に差し掛かっている。4月には、国内で最も使用頻度の高い400mm幅U形鋼矢板の圧入に特化し、施工能率を高めた新型の杭圧入引抜機「スマートパイラーSX1」を、昨年からの一部先行販売を経て、本格販売を開始した。しかしながら、防災需要などで圧入工事は増加傾向にあるものの、前述のように社会経済の先行き不安から、顧客は設備投資に慎重になっており、販売は減少傾向となった。

 その結果、売上高は11,484百万円(前年同四半期比17.4%減)、セグメント利益は2,680百万円(同33.8%減)となった。

<圧入工事事業>

 インプラント工法は、緊急性や重要性の高い工事の計画で採用されており、受注は堅調に推移した。国内工事では、緊急事態宣言の解除後に一部で着工が遅れたものの、一時中止されることはなく概ね順調に推移し、岩手県、高知県などでの海岸堤防工事をはじめ、昨年の台風被害に対する災害復旧工事や九州新幹線の地すべり抑止工事、高速道路の改良工事などを実施した。なお、セネガル共和国ダカール港2期工事での岸壁改修工事は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により工事再開の目途が立たない状況となっている。

 その結果、売上高は7,607百万円(前年同四半期比23.6%増)、セグメント利益は1,369百万円(同164.4%増)となった。

■連結業績予想などの将来予測情報に関する説明

 新型コロナウイルス感染症は世界各地で今なお多くの方々が感染し、各地で感染拡大防止の取り組みがなされ、予断を許さない状況が続いている。このような状況の中、技研製作所グループにおいては、従業員とその家族、顧客をはじめとするステークホルダーの安全確保を最優先に、事業活動を継続している。

 感染拡大に伴う移動自粛要請や世界各国の入国制限などの影響を受け、技研製作所グループの工法提案活動も限定的にならざるを得ない状況が続いている。また、工事の一時中止や工期延長、発注の延期など、事業への直接的な影響も生じている。加えて、建設技能労働者不足や東京五輪後の反動減懸念などから、顧客の投資意欲の減退が顕在化している状況である。

 こうした中、通期の連結業績予想については、売上高を24,500百万円(前期比24.5%減)、営業利益を2,200百万円(同67.1%減)、経常利益を2,450百万円(同63.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益を1,350百万円(同70.5%減)に修正することにした。

 世界的な感染拡大の終息時期が見えない中、当面厳しい状況が予想されるが、その一方で、頻発し激甚化する自然災害への抜本的対策は待ったなしの状況であり、技研製作所工法に対する社会的な期待感とニーズは依然として高いものがある。また、オランダ・アムステルダム市との連携協定締結をはじめ、技研製作所工法の普及拡大は世界各国で着実に進んでいる。

 アフターコロナに向け、技術開発のスピードを上げ、企業体質のさらなる強化を図り、グローバルエンジニアリング企業としての確固たる基盤を構築して、業績を回復させるべく鋭意努めていく。

 技研製作所の2020年8月期第3四半期決算短信