日立製作所、ABB社のパワーグリッド事業の買収を完了し、日立ABB パワーグリッド社として営業開始

・グローバルトップレベルのパワーグリッド事業とデジタル技術を融合した 革新的なエネルギーソリューションにより、持続可能な社会の実現に貢献

 ㈱日立製作所は7月1日、2018 年 12 月 17 日に 締結した ABB Ltd(以下、ABB 社)とのパワーグリッド事業の買収契約*1 に基づき、ABB 社から分社されたパワーグリッド事業会社への80.1%の出資手続きを完了したと発表した。

 新会社は、「Hitachi ABB Power Grids Ltd(CEO:Claudio Facchin(クラウディオ・ファキン)/本社:スイス連邦チューリ ッヒ/以下、日立 ABB パワーグリッド社)」として発足し、同日から営業を開始する。日立でエネル ギーセクターを担当する執行役副社長の西野 壽一氏が同社の会長を兼務し、2016年から同事業をリードしてきたファキン CEO とともに、日立の社会イノベーション事業の中核としてエネルギーソリュー ション事業をグローバルに強化・拡大していく。

 日立と日立ABBパワーグリッド社は、グローバルトップレベルのパワーグリッド事業と、Lumada*2 をはじめとする日立のデジタル技術を組み合わせることで、革新的なエネルギーソリューションをグローバ ルに提供するとともに、エネルギーだけでなくモビリティ、ライフ、インダストリー、IT の各セクターにも事業を拡大していく。日立と ABBの1世紀以上にわたる歴史に基づいた、先進的なエンジニアリン グ技術によって、顧客の事業の効率性や柔軟性を高めるとともに、新たなビジネスモデルの構築や 社会価値、環境価値、経済価値の向上を支援することで、持続可能な社会の実現に貢献していく。

 エネルギー転換に向けて世界の電力市場はかつてない変革期を迎えており、デジタル技術を活用したイノベーションが短期的にも長期的にも求められている。再生可能エネルギーはエネルギーミックスに占める割合を大幅に増加させてきており、世界各国の野心的な脱炭素化目標を達成する上での重要性が高まっている。再生可能エネルギーはその性質上断続的(不安定)なため、複雑な運用が必要となる。多くの国で再生可能エネルギーの導入を推進してきたが、発電量の事前予測が難しく、より臨機応変にエネルギーシステムを管理する必要があるため、柔軟で安定した 運用の確立が求められている。また、電力市場において再生可能エネルギーを普及させるには、さらに多くの系統連系が必要となる。

 また、分散電源の急増や、生産消費者(プロシューマー)の出現をはじめとしたエネルギー消費パター ンの変化など、エネルギー情勢は変化しており、電気自動車の増加やデータセンターの拡大によって電 力需要が増加するとともに、デジタル化による新しいビジネスモデルの確立も求められている。

 2020 年のパワーグリッドの市場規模は約1,000 億米ドルであり、その中でも予兆保守や分散電源、資産最適化などのデジタル化に関する市場は、高い成長が見込まれている*3。

 さまざまなエネルギーの中でも電気は最も需要が増加しており、これに対応しつつ環境負荷を抑 えることが、持続可能なエネルギーの未来に向けた課題となっている。日立 ABB パワーグリッド社 は先進的な技術革新の実績と、約 90 カ国にまたがる製造・サービス・販売・研究開発のネットワーク に支えられた顧客基盤を有しており、マーケットおよびテクノロジーのリーダーとして独自のポジショ ンを確立している。同社は、グローバルトップのグリッドソリューションと日立の先進的なデジタル技 術を融合させることで、顧客やパートナーと共に、“Powering Good for Sustainable Energy”をめ ざして革新的なエネルギーソリューションを協創し、持続可能な社会の実現に貢献していく。

 新会社の約 36,000人の従業員は、今後も「より強じん、よりスマート、よりクリーンなグリッド」 (Stronger, Smarter, Greener Grid)を実現するため、顧客から選ばれるパートナーをめざしていく。また、顧客重視のマインドセットとグローバルクラスの約 2,000人の研究開発部門によって、 顧客サービスやノウハウ、技術、イノベーション、グローバルトップの導入実績を活用して差別化を図 っていく。

 また、日立ABBパワーグリッド社は、日立のデジタルソリューションのポートフォリオを活用することで、 各セクターで事業を拡大することができる。エネルギー、モビリティ、インダストリーセクターに加え、ライフセクターではスマートシティやエネルギー貯蔵など、IT セクターではデータセンター管理などに貢献することで、社会イノベーション事業を拡大する。日立は、日立 ABB パワーグリッド社のエネルギーソリューションを含めて Lumada事業をさらに強化し、先進的なデジタルソリューションを日立 グループのすべての顧客に展開していくことで、持続可能な社会づくりに貢献していく。

■㈱日立製作所 執行役社長兼 CEO 東原敏昭氏のコメント

 「COVID-19 がさまざまな活動を停滞させる中で、計画どおり新会社を発足できたことを嬉しく思います。今回のM&A を通じて、日立を真のグローバル企業に飛躍させる素晴らしいアセットを獲得できました。

 1つ目のアセットは、グローバルな社会イノベーション事業を加速する基盤です。新会社の世界 No.1 のパワーグリッド事業と日立の Lumada を組み合わせてエネルギープラットフォームを作り、さ らに新会社のグローバルな事業基盤を活用して、さまざまな産業分野で社会イノベーション事業を拡大していきます。

 2つ目のアセットは、日立のグローバル経営を加速する基盤です。新会社は、ダイバーシティに富んだタレント集団であり、また先進的なグローバルオペレーションを実行しています。日立は新会社との融合を進めることにより、人財やさまざまなオペレーションでも、真のグローバル企業への変革を加速していきます。

 再生可能エネルギーの導入をはじめ、脱炭素社会の構築は SDGs の中でも喫緊の大きな課題です。日立と新会社は一体となって、この課題に挑戦し、持続可能な社会づくりに貢献してまいります。」

■日立ABB パワーグリッド社CEO クラウディオ・ファキン氏のコメント

 「日立と ABB 社のパワーグリッド事業は、100 年以上にわたる豊富な技術とイノベーションの歴史を持っています。日立ABBパワーグリッド社は、グローバルトップクラスのエネルギーソリューションと日立のオープンなデジタルプラットフォームを組み合わせることで、事業機会を拡大し、新たなカスタ マーバリューをグローバルに提供することが可能となります。

 私たちは、より強じん、よりスマート、よりクリーンなパワーグリッドを実現するために選ばれるパートナーとして、電力供給の安全性、信頼性、効率性を促進することで、持続可能なエネルギーの未来 に貢献していきます。」

 なお、日立 ABB パワーグリッド社の 80.1%分の株式取得金額は、68.5 億米ドル(約 7,400 億円)*4 となった。日立は、2023 年以降に残りの 19.9%の株式を取得し、同社を完全子会社とする予定です。

 また、以下、2018 年 12 月 17 日付のニュースリリースで未定としていた事項および記載の一部を変更した箇所には、下線を付している。

*1 2018 年 12 月 17 日付ニュースリリース「日立が ABB 社のパワーグリッド事業を買収し、エネルギーソリューション事業を強化」 http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2018/12/1217.html

*2 顧客のデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューショ ン・サービス・テクノロジーの総称。

*3 日立製作所調べ。

*4 同社事業価値の110億米ドルから負債などを減じた上で、出資比率 80.1%を乗じた金額。1 米ドル=108 円にて計算。

 詳細は、ニュースリリース(説明資料付き)