建機工、「日本建設機械工業会30年のあゆみ」発刊、今回も力の入った作品

 一般社団法人日本建設機械工業会(略称:建機工、会長:数見保暢)は、2020年6月5日をもって設立30周年を迎え、これを記念して「日本建設機械工業会30年のあゆみ」を発刊した。「日本建設機械工業会20年のあゆみ」(2010年5月)をベースに、直近10年の新しい歴史やデータを加えて編纂したもので、今回も力の入った作品となっている。

 30年誌は、1990年から2020年までの30年に及ぶ工業会活動のほか、我が国における建設機械産業の発展史、製品説明、戦後から高度成長期、厳しい不況、大震災などにおける建設機械の貢献、企業ごとの変遷、そして2020年時点における将来展望など、多面的に分かりやすく構成、編集されている。

 今でこそ統一呼称である「油圧ショベル」、海外では「Excavator」(掘削機)、一般マスコミでは「重機」は、日本では永く「ユンボ」と呼ばれ、新聞の求人欄では「ユンボ、オペ求む」と記しただけで、ショベルの運転者募集ということがわかった時代である。これについては、1961年、新三菱重工業(現・キャタピラー)が仏シカム社と技術提携して売り出した機種「ユンボY35」がヒット商品になったことが全国に浸透したこと。また、水陸両用のブルドーザー(コマツ)、油圧ショベル(日立建機)の開発、溜池のコマツ本社ビル屋上に時代を象徴するかのようなブルドーザーが設置されていた、高度成長期の生産や保有台数も資料として収められている。

 建設機械業界の発展と今後については、概ね以下の目次内の各ページで紹介されているが、これから建設機械業界を調べる人、また改めて業界を見つめなおしたい人にとって、手元に置いておきたい貴重な1冊となりそうだ。今回は当サイトの独断で、目次に加え、「発刊の辞」「祝辞」「編集後記」を紹介するが、全ページ読まれることをお勧めする。

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日本建設機械工業会 30年のあゆみ

2  発刊の辞

3  祝辞

4  日本建設機械工業会の紹介

6  歴代会長(初代~12代)

8  歴代会長インタビュー(13代~19代)

22 日本建設機械史

48 社会貢献

66 日本の建設機械

100 経営高度化への取り組み

102 建設機械メーカーの変遷

110 日本建設機械工業会30年史(2010~2019)

120 組織体制の変遷

125 建設機械の生産動向

126 建設機械の出荷動向

128 沿革

130 賛助会員名簿

131 会員研修会実績

132 建設機械と建設業界のPR活動

139 編集後記

 発刊の辞

 一般社団法人日本建設機械工業会(建機工)は、建設機械産業の健全な発展を図り、日本経済の発展と国民生活の向上に寄与することを目的に設立され、2020(令和2)年、設立30周年を迎えることができました。

 20周年誌の発刊から10年が経ち、振り返りますと国内外で様々なことが起こりました。とりわけ国内では東日本大震災をはじめとする地震や豪雨による自然災害が記憶に残っています。また、米中対立などに伴う国際経済不安定化の継続に加え、新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大による経済活動の停滞局面に直面しています。

 このような激しい外部環境変化の中、持続可能な社会の実現に向けて、各委員会を中心に様々な課題に取り組むとともに、環境・省エネルギー・安全といった社会的な要請に対応すべくハイブリッド建機の導入・浸透、ICTやIoTを活用した情報化施工やi-Constructionの推進といった新しい技術革新を積極的に進めてまいりました。

 我々を取り巻く環境は変化し続けますが、建機工は設立理念である「調和と発展による世界への貢献」ならびに「共生と競争」のもと、①地震や豪雨による自然災害からの復興への貢献、②環境・省エネルギーに対する対応、③会員各社のグローバル展開支援、Di-Constructionなど新しい技術への対応を重要な活動分野として、会員各企業の皆さまとの連携のもと、建設機械産業の更なる発展と持続的な社会の実現に向け一層の努力を重ねてまいります。

 あらためまして、建機工設立30周年を迎えるにあたり、建機工を育てていただきました歴代の会長、会長を支えた歴代の専務理事と事務局スタッフの皆さまおよび会員各企業の皆さまに御礼を申し上げます。

 最後になりましたが、内外の関係各位に重ねて御礼申し上げるとともに、今後も変わらぬご指導、ご支援を賜りたく、心よりお願い申し上げまして、発刊の辞といたします。

 一般社団法人 日本建設機械工業会

 会長 小川啓之(*5月28日総会・理事会で新会長には数見保暢氏が就任)

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  祝辞

 一般社団法人日本建設機械工業会が、創立30周年を迎えられましたことを心よりお喜び申し上げます。

 この30年を振り返りますと、バブル経済の崩壊、阪神・淡路大震災、アジア通貨危機、リーマン・ショックや東日本大震災など経済及び社会の厳しい環境変化もありましたが、貴工業会及び会員の皆様は、変化し続ける経済・社会情勢に対応してこられました。

 排出ガス規制や省エネへの対応、建設機械のハイブリッド化・電動化、遠隔監視技術や情報化施工技術の取り込み、労働災害の防止や取引適正化、アジア・アフリカといった新興国の増大する需要への対応など、様々な社会的要請に積極的に取り組まれ、建設機械業界のみならず、我が国の産業の発展に大きく貢献されてこられたことに、深く敬意を表します。

 現在、日本の産業は、「第四次産業革命」の中で、大きな変革に直面しております。AIやIoTといったデジタル技術の進化により、新たな製品・サービスやビジネスモデルが生まれ、競争領域が広がるなど、競争環境は劇的に変化しています。また、環境問題やエネルギー制約への対応は、世界的な課題として注目が集まり、産業の競争力にも直結してきています。さらに、建設現場や製造現場の人手不足の問題など、課題が山積しています。

 こうした中で、日本の建設機械業界が世界をリードし続けるためには、建設プロセスの効率化・最適化といった更なるサービスの提供や、環境問題やエネルギー制約へ対応する更なる技術革新が不可欠です。中堅・中小企業も含めた裾野の広い建設機械業界の皆様の結束力と果敢な取組により、建設機械業界は今後も発展を続けると確信しております。経済産業省としましても、引き続き、皆様の現場の生の声をお伺いし、それを政策に活かしていきたいと考えております。

 最後になりましたが、創立以来30年にわたり建設機械産業の発展に努めてこられた貴工業会の取組に改めて敬意を表しますとともに、新たな時代において貴工業会及び会員の皆様、そして日本の建設機械業界がさらなる飛躍を果たされることを祈念いたしまして、お祝いの言葉とさせていただきます。

 経済産業省 製造產業局

 產業機械課 玉井優子

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 編集後記

 風薫る五月、「建機工」は毎年その齢をひとつ重ね、今年30周年を迎える。「薫風」は、夏の季語だが、実際の五月は春の終わりから梅雨に入る前の日本で最も清々しい時季である。実りの秋に向けて、過酷な夏を控え、希望を胸に準備にいそしむというのが、日本人の季節感であり、月末に定期総会を営む「建機工」もその例外ではない。ただ、今年は、新型コロナウイルスが様相を一変させている。

 工業会事務局もご多聞にもれず、「在宅7割」や「接触8割減」を実践しながら、通常の「工業会統計」、「証明書発行」、「会員問い合わせ対応」などといった業務を行うとともに、本誌の最終校正やリモート・アクセスの導入といった新たな業務をこなしている。部会以下のレベルでは一部でいわゆる「TV会議」の試行も行われている。今後、恒常的にTV会議を利用するのであれば、会議のレベル、テーマの選定やセキュリティ上の課題の検討も含め、導入にはルールの整備が必要となろう。

 さて、本誌は、2010(平成22)年5月に発行した「20年誌」のその後10年に焦点を当てて編纂されたものである。この10年は、「リーマン・ショック後」、「東日本大震災をはじめとする自然災害」、「地球温暖化」、「IoTの進展」といったキーワードに象徴される。これらの事象に対し、「建機工」では、各会長が述べられている通り、「グローバル化への支援」、「災害復興への社会貢献」、「環境問題への対応」及び「新技術への取組」といういわゆる「四本柱」の事業を展開してきている。一方、永年の工業会運営において、どうしても「なれ」の部分が生じてしまうのも摂理であるところ、「コンプライアンスの徹底」や「活動、組織の棚卸し」にも注力してきた10年間である。

 このような「社会的な要請」や「環境変化」に対応し、「長い目で見れば、建設機械産業は右肩上がりの産業」であることを実践してきた「建機工」の歴史を本誌を通じ再度認識していただき、「リーマン・ショック」から始まった先の10年と同様に「コロナ禍」から始まった次の10年も「右肩上がりの産業」として進んでゆく一助となれば、広報部会をはじめ編集関係者一同にとってこれにすぐる幸いはない。

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 前回版20年のあゆみは→こちら