DMG森精機、2020年12月期第1四半期受注は35%減、売上収益は28%減

 DMG森精機が5月28日に発表した2020年12月期第1四半期(1~3月)連結業績によると、売上収益は前年同期比27.6%減の87,255百万円、営業利益は同85.7%減の3,272百万円、税引前四半期利益は同85.7%減の1,261百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は同97.9%減の128百万円となった。(数値表記は原文尊重)

 DMG森精機2020年第1四半期データ

■第1四半期の受注動向

 第1四半期の全社受注額は783億円となり前年同期比では35%減となった。工作機械受注は2018年第1四半期にピークを迎え、その後2年間調整し、年初からはやや回復の兆しを見せていたが、COVID-19の影響により2月には中国の、3月にはその他地域の顧客が設備投資に対して再度慎重な姿勢に転じている。

 ただ、設備投資を継続する顧客では、工程集約、自動化、デジタル化を進めており、1台当たりの受注単価は前年度に比べて8%増となった。また、機械復旧サービス・補修部品も顧客の操業度低下に伴い受注額は16%減となった。一方、半導体製造装置関連の部品を供給する子会社などは健闘し、その他受注は4%増となった。

 機械受注は、第1四半期の前半比較的堅調だった米州が前年同期比1%減に留まったが、その他地域は大きく調整し、日本が同44%減、欧州が同51%減、中国を含むアジアが同45%減となった。

 産業別には、医療機器関連、半導体製造装置関連、金型関連向けは堅調だったが、今まで好調だった航空機関連向けの需要が急速に冷え込んだほか、自動車関連向けはさらに弱含みで推移した。

 機種別には、5軸加工機、複合加工機に加え、市場環境の変化に迅速に対応可能なAM機や半導体関連部品向けに用途を広げている超音波加工機などの先端加工技術の評価が高まった。

 4月は、各国の外出・移動規制なども含めて営業・サービス活動がやや停滞したが、5月中旬以降はグローバルにDMG森精機におけるそれらの活動も回復しており、また、顧客も徐々に操業度の向上が見られることから工作機械の需要環境も好転していくものと期待している。その中で、DMG森精機は、工程集約機を中心として、自動化・デジタル化を推し進め受注の増大に努めていく。

■2020年12月期見通し:売上収益は34%減の3,200億円

 2020年12月期の連結業績予想については、売上収益3,200億円(前期比34.1%減)、営業利益50億円(同85/6%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は未定とした。これは、EU、米州、中国、東南アジアなどDMG森精機の主要事業地域においてビジネス上の渡航制限などが解除されること、また、COVID-19に対するワクチンなどの開発が進み、現状以上の混乱などが生じないことを前提としている。

 DMG森精機の2020年12月期第1四半期決算短信

 説明会資料

 決算Q&A集

■第1四半期の取り組み

 DMG森精機は、工作機械メーカーから機械加工の全プロセスを提供するトータル・ソリューション・プロバイダへの進化を遂げており、事業戦略として、5軸・複合加工機やアディティブマニュファクチャリング(積層造形技術)機(以下、AM機」をプラットフォームとした自動化・デジタル化の促進を掲げている。

 DMG森精機はNTTコミュニケーションズ㈱及びKDDI㈱と連携して、工場内でのワーク搬送ロボットの自動走行や人工知能(AI)を利用した切屑除去など、5Gを駆使した新たなソリューションの開発実験を進めている。顧客は、ポータルサイト「my DMG MORI」を通じて、保有機のメンテナンス情報や稼働率を確認できる他、オペレーター教育や遠隔での修理復旧サポートなどを依頼することができる。

 オペレーター教育に関しては今年夏に「DMG森精機 デジタルアカデミー」が始動予定であり、いつでも学習可能なeラーニング形式と従来からの加工実習形式を併用することで学習効率を高める。また、アプリ作成プラットフォームTULIPを活用することで、製造現場のオペレーターは、作業手順書の作成から機器のモニタリングまで実現するアプリをプログラミングの専門知識を用いずに簡単に作成して生産性の向上を図ることができ、既に導入済みのDMG森精機工場でも大きな成果を上げている。

 加えて、2020年代は加工と計測とが1台で完結する機内計測が進化する時代になると見据えており、カメラやレーザなどの非接触計測技術の工作機械への活用を念頭に、高い技術を保有する企業との提携を進める。DMG森精機と㈱ニコンは、DMG森精機機のオプション仕様である非接触計測システムに同社製のレーザスキャナを搭載して販売することに合意した。同社から計測やカメラ技術の提供を受けることで、より高精度でデジタル化を加速させる工作機械の開発に繋げる。

 技術面については、超短パルスレーザ(フェムト秒レーザ)による微細加工を機械加工後の加工物にほどこすことへの需要の高まりを背景に、フランスのGLOphotonics SASに資本参加し、フェムト秒レーザ伝送技術の共同研究開発を進めている。今後も市場の変化にいち早く対応し、社会に貢献できる新製品を開発する。

 販売面では、世界的なCOVID-19の拡大により、世界各地での展示会への出展並びに自社展示会の開催を見合わせている。顧客にDMG森精機の最先端技術を直接体験してもらう場としては、5月に開催を予定していた伊賀事業所でのイノベーションデーに代わり、6月から12月にかけての毎週金曜日に「テクノロジーフライデー」と称する毎回少人数のイベントを開催予定。また、DMG森精機は、紙のカタログや実機の見学だけでは十分に披露しきれない性能や投資効果を分かりやすく顧客に伝えるため、フルCGと4K映像を組み合わせた超高精細な製品紹介動画を多数制作している。

 さらに、オンライン会議システムを活用し、出荷前の工作機械やシステムに取り付けた複数のカメラ映像をリアルタイムで顧客に確認してもらう「デジタル立ち会い」を開始した。DMG森精機は、引き続きデジタルソリューションを最大限活用し、顧客の生産性向上に貢献していく。

 DMG森精機は、社員の健康を最優先事項として迅速な対策を行っている。在社時間の制限や有給休暇の取得率の徹底的なモニタリングによって、全社員の心身ともに充実した生活を後押ししている。

 また、感染症予防の観点から、日本国内では全拠点で公共交通機関を利用した出社を禁止して在宅勤務の導入を進め、テレビ会議システムの活用や社内教育の配信などによって遠隔地での円滑な業務遂行を支援している。

 環境保護の取組として、欧州のDMG MORI AGにおいて今年度中にCO2 Neutralを達成するという目標を掲げており、日本でも東京グローバルヘッドクォータにおける電力供給会社をオリックス㈱に切り替えてCO2の排出量ゼロの電力を購入する。これにより年間約385.8トンのCO2排出を削減できる見込みで、今後、国内の他の拠点にも導入を予定している。

 さらに自治体と連携した教育支援にも引き続き力を入れており、兵庫県との連携協定に基づいて、ものづくり大学への機械の無償貸出を行う。

 DMG森精機は、グローバル企業としての責務を全うし、持続可能な発展によって継続的に企業価値を高めていく。

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