㈱日本製鋼所が5月25日に発表した2020年3月期(2019年度)連結業績によると、受注高は、素形材・エネルギー事業は増加したものの、産業機械事業が減少し、2,115億71百万円(前年同期比2.1%減)、売上高は、産業機械事業及び素形材・エネルギー事業が共に前年同期並みの実績を確保し、2,175億27百万円(同1.2%減)となった。
営業利益は187億9百万円(同23.0%減)、経常利益は199億7百万円(同 28.7%減)となった。また、18年度は固定資産売却による特別利益を計上した一方、2019年度は株式市場全体の株価下落により投資有価証券評価損を計上したこと及び既設の風力発電機の保守・補修等のメンテナンス事業における追加費用として事業再構築引当金繰入額を特別損失に計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は93億10百万円(同53.4%減)となった。(数値表記は原文尊重)
■経営成績の概況
2019年度における海外経済は、米中貿易摩擦の影響を主要因とした米国製造業の停滞や中国経済の減速に加え、英国のEU離脱や中東における地政学リスクの高まりなど、景気減速が強まる状況が続いた。わが国経済も、海外経済の減速に伴い輸出は低迷し、内需においては消費増税の影響が見られるなど、景気は低調に推移した。さらに、第4四半期には、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により経済活動が抑制され、製造業の操業停止、物流停滞や渡航制限が生じ、わが国を含む世界全体で景気が急速に悪化した。
日本製鋼所グループを取り巻く経営環境は、産業機械事業では、自動車分野向け樹脂製品の需要減速や中国での車載用リチウムイオン電池素材の市場停滞が続き、素形材・エネルギー事業では、大型鋳鍛鋼品の市場規模縮小に加え、 天然ガスの需要拡大に伴い回復が期待されたクラッド鋼板・鋼管においても価格競争が激化するなど、厳しい状況が続いた。
このような状況のもとだが、日本製鋼所グループでは「産業機械で『成長』、素形材・エネルギーは『新 生』」をコンセプトとして掲げ、2018年5月に策定した2021年3月期までの3ヵ年の中期経営計画(JGP2020)に 沿って、1.経営資源の最適化とアライアンスの強化、2.フターサービス(ストック型ビジネス)の強化、3.新事業探索、育成の活性化の3つを基本方針とした事業活動を推進してきた。
■セグメント別業績
<産業機械事業>
受注高は、樹脂製造・加工機械及び成形機が減少したことから、1,626億51百万円(前年同期比7.5%減)となった。売上高は、樹脂製造・加工機械が増加したものの、成形機及びFPD装置が減少したことから、1,714億16百万円(同1.3%減)となった。営業利益は、売上製品構成の変化などにより、192億72百万円(同18.3%減)となった。
<素形材・エネルギー事業>
受注高は、鋳鍛鋼製品及びクラッド鋼板・鋼管が共に増加したことから、449億91百万円(前年同期比31.8%増)となった。売上高は、鋳鍛鋼製品及びクラッド鋼板・鋼管が共に前年同期並みの実績を確保し、414億18百万円(同0.4%増)となった。 営業利益は、減価償却費の増加などにより、24億84百万円(同7.1%減)となった。
<その他事業>
受注高は39億28百万円、売上高は46億91百万円、営業損失は1億46百万円となった。
■今後の見通し
今後の経済見通しについては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の停滞により、当面は世界的な景気減速が見込まれる。中国、米国及び欧州など、一部で経済活動の再開に向けた動きはあるものの、感染拡 大の収束時期が見通せず、海外経済及び日本経済の先行きは不透明な状況となっている。
日本製鋼所グループを取り巻く経営環境は、産業機械事業では、短期的には自動車分野向け樹脂製品需要は低い水準で 推移すると共に、車載用リチウムイオン電池素材の市場停滞が予想されるが、更なるコスト削減や新製品の開発 により製品競争力の強化を図っていく。
素形材・エネルギー事業では、鋳鍛鋼製品の市場規模縮小とクラッ ド鋼板・鋼管の競争激化により、厳しい事業環境が継続すると見込まれますが、2020年4月に設立した日本製鋼所M&E株式会社を中心に、事業体質の強化を着実に進めていく。
また、日本製鋼所グループとしては、新型コロナウイルス感染拡大による経営への影響を最小限に抑えるべく、資金管理、生産・在庫の確認やサプライチェーンの確保等の措置を講じると共に、新型コロナウイルスの感染拡大収束後の市場動向を見据えて、引き続き中期経営計画(JGP2020)の基本方針に基づく施策を推進していく。
なお、2021年3月期の連結業績予想については、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を精査中であり、現時点では合理的な算定が困難であるため未定とした。今後、連結業績予想の算定が可能となった時点 で速やかに開示する。
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