㈱アマダが5月20日に発表した2020年3月期(2019年度)連結業績によると、受注高は303,179百万円(前期比9.6%減)、売上収益は320,112百万円(5.3%減)となった。売上収益の内訳は、国内145,668百万円(2.2%減)、海外174,443百万円(7.8%減)となった。(数値表記は原文尊重、カッコ内は特に断りがない場合を除いて前期比)
損益面については、販売商品構成の改善や製造合理化の推進による増益効果はあったものの、減収や円高の影響により、営業利益は34,682百万円(23.2%減)となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は、連結会計年度末において円高に向かったことで為替差損が発生した事などにより、23,390百万円(29.8%減)となった。
なお、アマダは、2019年度において企業結合に係る暫定的な会計処理を確定し、暫定的に測定された公正価値の修正を行ったため、前連結会計年度の財務数値を修正している。これに伴い、遡及修正後の数値で前期比較を行っている。
■経営成績の概況
2019年度における世界経済は、米中貿易摩擦等の影響により先行き不透明感が強まった。米国経済は底堅く推移したものの、一方の中国では経済成長の鈍化が見られ、韓国などアジアの一部周辺国もその影響が波及し、製造業の設備投資にも減速感が見られた。欧州でもドイツの景気低迷等から製造業の景況感が悪化した。そのような中、我が国経済においても第3四半期以降の設備投資の慎重化に加え、消費税の増税等による個人消費の低迷も相まったことで低調に推移した。また、第4四半期においては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い世界経済全体で一層の減速が見られた。
■事業別の概況
<金属加工機械事業>
受注高は245,395百万円(9.9%減)、売上収益は257,133百万円(5.8%減)となった。板金部門では、重点地域である北米において戦略商品であるENSISシリーズをはじめとするファイバーレーザマシンの販売が好調に推移したことで増収となったが、欧州や日本を含むアジアでの販売の減少が大きく、全体としての売上収益は228,556百万円(6.0%減)となった。
微細溶接部門では、北米医療機器向けに、欧州車載電池向けにレーザ溶接システム関連の大型案件があったことで増収となった一方、国内において前年度にモバイル機器向けのレーザ加工システムの大型案件があった反動減があり、売上収益は28,569百万円(3.6%減)となった。
いずれの部門も減収となった事により、金属加工機械事業の営業利益は、27,537百万円(22.8%減)となった。
金属加工機械事業について、2019年度に行った主な活動については以下のとおり。
・世界初の「LBC テクノロジー」を搭載したファイバーレーザマシン「VENTIS-3015AJ」を新発売、第62回十大新製品賞「本賞」受賞
・超高速3軸リニアドライブ・ファイバーレーザマシン「REGIUS-3015AJ」をFABTECH 2019で発表・自動機モデルもラインナップした最新鋭ベンディングマシン「HRB」シリーズを新発売
・米国ノースカロライナ州にベンディング工場が完成、併せてニューヨーク州の金型工場も増強
・フィンランドの持分法適用会社であった板金切断加工機用の周辺装置メーカー「LKI Käldman LTD.」を完全子会社化し、「AMADA AUTOMATION EUROPE LTD.」へ商号変更・中長期的な成長につながる調査研究と、AIを中心とする先端技術の獲得を目的に、「株式会社アマダAIイノベーション研究所」を設立
・国内外での大型展示会出展(CEATEC 2019、MF-TOKYO 2019、FABTECH 2019、EMO Hannover 2019等)
<金属工作機械事業>
受注高は56,544百万円(8.5%減)、売上収益は61,750百万円(3.9%減)となった。切削部門では、北米において前期に子会社化した米国の切削機械メーカーであるアマダマーベル社の業績が貢献したものの、国内等で大手鋼材業の設備投資の様子見が見られたことなどにより、売上収益は35,916百万円(7.0%減)となった。
プレス部門では、前期に子会社化したプレス加工の自動化装置メーカーであるアマダオリイ社(2020年4月1日付けで株式会社アマダプレスシステムに商号変更)の業績が寄与し、国内外で増収となり、売上収益は19,241百万円(10.7%増)となった。
研削盤部門では、全地域で先行き不透明感から設備投資の延期が見られる中で、受注残もあり比較的底堅く推移していた日本でも、自動車関連向け等での販売が減少したことで、売上収益は6,587百万円(20.2%減)となった。切削部門や研削盤部門の減収により、金属工作機械事業の営業利益は6,510百万円(28.5%減)となった。
金属工作機械事業について、2019年度に行った主な活動については以下のとおり。
・米国のアマダマーベル社の竪型チルトバンドソー「VTシリーズ」の輸出を開始
・兵庫県のブレード工場である小野工場を拡張し、高寿命・高生産性の超硬ブレード増産体制を構築
・国内外での大型展示会出展(MECT 2019、METALEX2019、EMO Hannover 2019、MF-TOKYO 2019等)
<地域別の状況>
日 本:板金部門では、上期を中心にサッシや建築金属、冷蔵・冷凍ショーケースなどの建築関連向けの販売が堅調に推移したが、設備投資の慎重化が見られた工作機械等の産業機械向けの販売が低調に推移したことで、売上収益は145,668百万円(2.2%減)となった。
北 米:板金部門や微細溶接部門において医療機器関連向けの販売が好調に推移した。また板金部門では、販売代理店の買収や新工場の設立等を進めている東部を中心に販売が拡大した。切削部門では前期に子会社化したアマダマーベル社の業績が、プレス部門でも同様にアマダオリイ社(2020年4月1日付けで株式会社アマダプレスシステムに商号変更)の業績が寄与したことで、売上収益は69,233百万円(2.5%増)となった。
欧 州:英国においては厨房や空調設備等の建築関連向け等を中心に販売が伸長し、低調だった前年を上回ったが、ドイツではコンピュータ機器や通信機器などの精密関連向けの販売が低調に推移した。またフランスやイタリアでも販売が減少したことで、売上収益は59,781百万円(5.2%減)となった。
アジア他:中国では、一部で通信機器向けの需要増が見られたものの、景気減速や米中貿易摩擦の影響等により、販売が減少した。この影響で韓国等の周辺国も需要は低調に推移した。またインドでも金融機関の不良債権問題等による景況感の悪化から販売は低調に推移した。以上に加え、第4四半期に中国を中心に新型コロナウイルスの感染拡大による影響もあり、売上収益は45,428百万円(22.4%減)となった。
■今後の見通し
新型コロナウイルスの感染拡大により各地域において経済活動が制限され、世界的に急速な景気減速が起きている。感染拡大を食い止める手段も現状では発見されておらず、各国や地域の政策にも左右されることから終息の時期や経済への影響度を見通すことが困難であり、極めて不透明な状況が続くことが見込まれる。
これに伴う製造業の設備投資の停滞が、アマダグループの業績にも負の影響を与えることが見込まれる。一方でアマダグループの主要な販売先である金属加工業において、省人化のための自動化需要は一層高まっていくことが予想される。
このような状況の中、次期の業績については、現時点では次のとおり見込んでいる。
(2021年3月期通期の連結業績見通し)
売上収益225,000百万円(前期比29.7%減)、営業利益6,000百万円(82.7%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益3,000百万円(87.2%減)
為替レートは、1米ドル=105円、1ユーロ=115円を前提としている。
アマダグループの2021年3月期(2020年度)の連結業績見通しについては、現時点でアマダが把握可能な情報に基づいて見込んでおり、新型コロナウイルス感染症の影響による設備投資の低迷が、2021年3月期の上半期中は続行し、下半期に徐々に回復に向かいながらも、感染拡大前の水準に戻るには更なる時間を要するという前提を置いている。これに従い、新型コロナウイルスの感染症の収束状況や各国、地域の経済財政政策、競合状況等により当予想は大きく変動する可能性があるとしている。
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