タダノ、2020年3月期売上は過去最高の2,279億円、今後は大幅減速見込む

    ㈱タダノが4月28日に発表した2020年3月期(2019年度)連結業績によると、売上高は過去最高の2,279 億4千9百万円(前期比121.0%)、海外売上高比率は54.1%となった。売上高のうち、日本向けは、建設用クレーン・車両搭載型クレーンが増加、高所作業車は横ばいで、1,045 億2千7百万円(前期比107.7%)。海外向け売上高は、すべての地域で増加し、1,234 億2千1百万円(前期比135.1%)となった。(数値表記は原文を尊重しています

 売上増加の一方で、コストアップや製品構成の変化により売上原価率は悪化、また成長に向けた前向き投資や買収費用もあり販売費及び一般管理費は増加した。営業利益は156 億2千3百万円(前期比98.7%)、経常利益は154 億6千1百万円(前期比99.1%)となった。特別損失として24 億1千6百万円の投資有価証券評価損を計上した結果、親会社株主に帰属する2019年度純利益は78 億7千6百万円(前期比68.7%)となった。

 タダノ2019年度データ

■経営成績等の概況

 2019年度における国内経済は、設備投資はほぼ横ばいで推移したが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、年度末にかけて輸出や個人消費が減少し、景気は急速に悪化している。海外も、年明け以降の感染拡大の影響により景気は急速に悪化、加えて原油価格の下落や点在する地政学的リスクもあり、極めて厳しい状況にある。

 タダノの関連業界は、日本では、2020 年夏に開催が予定されていた東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設需要や復旧復興・防災減災・インフラ老朽化対策・民間建設投資等により稼働が堅調に推移し、需要は横ばいで推移した。海外では、中東・豪州・アフリカは減少したものの、その他の地域は増加し、全体として需要は増加した。

 このような経営環境の中、タダノグループは、国内外で引続き新モデルを投入し、販売価格の維持とストックビジネスに注力した。加えて、原価低減を推進した。また、長期目標である 「LE(Lifting Equipment)世界 No.1」 達成に向け、積極的な投資活動を行った。

 今後大きな成長が期待されるインド市場に対応するため、2018 年12 月に合弁会社Tadano EscortsIndia Private Ltd.を設立した。インド市場でのタダノ製クレーンの販売拡大のみならず、インドからの輸出可能性も踏まえて、現地での設計・ものづくりによる競争力強化に取り組んだ。

 高松市内に建設中であった香西工場は、建設用クレーンの生産能力拡大とともに生産性の大幅な向上を目指して、2019 年8月に稼働を開始した。また、ブーム・シリンダ等の主要部品を海外生産拠点に供給する。

 2019 年2月、米国Terex 社と、同社が所有するDemag ブランドのクレーン事業(本拠地ドイツ)の株式取得等に関する契約を締結し、同年7月31 日をもって買収を完了した。同事業の買収により、オールテレーンクレーン事業の更なる拡充を図り、新たにクローラクレーンをタダノグループの製品ラインナップに加え、幅広い顧客ニーズに対応することが可能になる。現在、12 の機能別クロスカンパニーチーム(CCT)を組成し、統合活動とベストプラクティスの実現に取り組んでいる。なお、2019年度の連結財務諸表においては、同事業の貸借対照表(12 月末)及び損益計算書(8~12月)を連結している。

 一方、2018 年1月19 日に公表した米国排ガス規制の緩和措置に関する自己申告については、現在、米国当局(環境保護庁・司法省)との協議が進行中。協議の終了時期は見通せていないが、今後、開示が必要な事由が判明次第、適時適切に対応する。なお、現在は、最も厳しい規制に適合するエンジンを搭載した建設用クレーンのみを販売しており、北米での販売に影響は出ていない。

■セグメント別状況(タダノ及び連結対象子会社の所在地別の売上高・営業利益で仕向地別売上高とは異なる)

1)日本

 日本向けは、建設用クレーン・車両搭載型クレーンが増加、高所作業車は横ばいで、売上は増加した。また、海外向けも増加し、その結果、売上高は1,614 億5千4百万円(前期比106.6%)、営業利益は170 億4千8百万円(前期比108.4%)となった。

2)欧州

 建設用クレーン売上は、Demag ブランドのクレーン事業買収によりドイツ子会社Tadano DemagGmbH を含む欧州7社を連結した結果、売上高は685 億5千3百万円(前期比159.5%)となった。同社の損失とドイツ子会社Tadano Faun GmbH の新モデル移行や品質対応に伴うコスト増により、営業損失は47 億2百万円(前期は11 億2千3百万円の営業損失)となった。

3)米州

 建設用クレーンの需要が増加する中、拡販に注力し、売上高は591 億3千7百万円(前期比143.0%)、営業利益は37 億1千9百万円(前期比243.2%)となった。

4)その他

 建設用クレーン需要が増加し、売上高は162 億2千6百万円(前期比105.6%)となった。インド子会社Tadano Escorts India の立ち上げもあり、営業損失は1千4百万円(前期は2億9千4百万円の営業利益)となった。

■主要品目別状況

1)建設用クレーン

 日本向け売上は、需要は横ばいの中、大型機種の拡販に取り組み、478 億3千3百万円(前期比113.2%)となった。

 海外向け売上は、すべての地域で増加し、1,029 億8千4百万円(前期比136.8%)となった。

 この結果、建設用クレーンの売上高は1,508 億1千8百万円(前期比128.3%)となった。

2)車両搭載型クレーン

 日本向け売上は、安全装置法制化と小型トラックの排ガス規制による駆け込み需要が年度前半で終息したが、拡販に注力し、202 億9千2百万円(前期比108.8%)となった。

 海外向け売上は、拡販に注力したものの、18 億7千万円(前期比93.1%)となった。

 この結果、車両搭載型クレーンの売上高は221 億6千2百万円(前期比107.2%)となった。

3)高所作業車

 高所作業車の売上高は、小型トラックの排ガス規制による駆け込み需要が年度前半で終息し、179 億8千6百万円(前期比98.2%)となった。

4)その他

 部品、修理、中古車等のその他の売上高は、369 億8千2百万円(前期比115.9%)となった。

■次期見通し

 今後の経済見通しについては、新型コロナウイルスの感染拡大により、大幅な減速が見込まれる。このような環境の中、タダノグループの海外拠点は、3月下旬から工場閉鎖や時短勤務を余儀なくされている。また、今後は需要と供給の両面への影響が想定され、タダノグループの販売だけでなく生産への影響が懸念される。

 以上により、2021 年3月期の通期連結業績予想については、新型コロナウイルスによる影響を適正かつ合理的に算定することが困難なため、現時点では未定とし、今後算定が可能となった時点で速やかに開示する。

 ㈱タダノ2020年3月期決算短信

 決算説明資料

 タダノグループ中期経営計画(20-22)

 *なお、タダノは、新型コロナウイルスの感染に配慮し、5月中旬に予定していた東京でのアナリスト決算説明会を中止した。代わりに決算に関する動画の配信および同社サイトへの資料の掲載を、5月下旬に予定している。