オークマ、2020年3月期売上は18.7%減の1,720億円、通期見通しは見送り

 オークマが4月28日に発表した2020年3月期(2019年度)連結業績によると、世界的な工作機械需要の後退の影響が大きく、2019年度の受注額は140,473百万円(前期比35.7%減)、売上高は172,094百万円(前期比18.7%減)、営業利益は14,995百万円(前期比45.6%減)、経常利益は15,549百万円(前期比44.8%減)、親会社株主に帰属する2019年度純利益は10,712百万円(前期比42.2%減)となった。(数値表記は原文を尊重しています

 オークマ2019年度データ

■経営成績等の概況

 2019年度の世界経済は、米中貿易戦争の影響に加え、英国のEU離脱や中東情勢をはじめとする政治・外交面の不透明感の高まり等により、景気減速が強まる展開となった。さらに2020年2月からは世界的な新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、経済活動は大きく制限され、各国の景気は急速に悪化し、年度末には世界経済は大幅な収縮に向かう局面となった。

 米国経済は、史上最長と言われる好景気が続いてきたが、米中貿易戦争による先行き不透明感が強まり、製造業は、年間を通して停滞が続いた。年度終盤にはウイルス感染拡大の影響を受けて雇用情勢は急速に悪化した。

 欧州経済は、製造業の低迷による景気の下押し圧力が続く中、年度末に急拡大したウイルス感染が景気を大きく押し下げた。

 中国経済は、米中貿易戦争の激化を受け、対米輸出の減少を減税等の内需拡大策により下支えするも、下期の後半には、外出禁止措置等の厳格なウイルス感染防止策の実施により、経済活動の急激な収縮が見られた。

 国内経済は、海外経済の減速に伴い輸出は低迷し、内需においては消費税増税後の影響が一部で見られるなど景気の足踏みは続き、また年度末にかけてコロナ禍の影響が顕在化し始めた。

 工作機械の需要動向については、世界での需要減速が続く中で、回復の底を探る動きが見えつつあったが、新型コロナウイルスの感染拡大が回復の足取りを大きく阻害する形となっている。

■市場別概況

 米国市場では、航空機産業からの需要は底堅く推移したが、自動車関連等、他の産業においては、総じて設備投資は抑制的な動きに留まり、中小規模事業者を中心に、景気の先行き等を懸念し、月を追うごとに設備投資の先送りが顕著となった。

 欧州市場では、米中貿易戦争による世界的な景気減速の影響を受け、輸出は弱含み、製造業が低迷する中、設備投資は慎重な動きが続いた。

 中国市場では、総じて弱い展開が続いたが、建設機械関係など一部の産業では設備投資に底堅さが見られた。景気対策効果等により工作機械需要は、一時期持ち直しの兆しが見られたが、ウイルス感染の拡大により設備投資の見直しや先送りが急速に広がった。

 国内市場では、労働力不足等への対応から設備投資に対する意欲は見られるものの、輸出の減少や長期化する米中貿易戦争の先行きを警戒し、投資を先送りする動きが続いた。そのような中でもデジタル分野や新技術対応等への投資は根強く、半導体製造装置や電気自動車関連等の設備投資には動きが見られた。

■オークマの取り組み

 このような経営環境の下、オークマグループは、自動化・無人化の需要に応えるべく、AI・知能化技術を搭載するスマートマシンを幅広く提供し、生産性向上に貢献するスマートマニュファクチャリング技術・自動化システムの提案を推し進め、受注・売上・利益の獲得に努めた。

 営業戦略においては、中国国際工作機械展覧会「CIMT2019」(北京、2019年4月開催)、欧州国際工作機械見本市「EMO2019」(ドイツ・ハノーバー、2019年9月開催)等、世界的な国際見本市をはじめ、各地の地方展示会にも積極的に出展し、オークマブランドの浸透と拡販に努めた。2019年11月に本社工場と可児工場で開催した「オークママシンフェア」では、国内外から8,000名近くが来場、オークマのスマートマシン、自動化・無人化ソリューションに対し高い関心が示された。

 また、欧州の主要市場であるドイツでは、現地販売代理店を「Okuma Europe GmbH」の子会社化し、「OkumaDeutschland GmbH」を設立、ユーザーにより密着した販売、サービスの展開を進めた。さらに、インドネシアでは現地法人「PT. Okuma Indonesia」(ジャカルタ市)にショールームを新設、国内では東北CSセンター(郡山市)を開設し、営業、サービスの強化を図った。

 技術戦略においては、自動化・無人化への対応として、工作機械と同じ操作感で使用でき、複雑なティーチングが不要な次世代ロボットシステム「ARMROID」と簡単ロボットセル「STANDROID」の適用機種の拡大を進めた。

 また、半導体製造装置や自動車用金型等の大型化への対応として、大型部品加工に最適な精密立形マシニングセンタ「MB-80V」を上市した。さらに、「加工と計測を融合」する技術として、空間精度を高精度に補償し維持・校正できる「3Dキャリブレーション」をプレス金型向け高精度門形マシニングセンタ「MCR-S」に搭載し、トータルリードタイム短縮を実現する技術の開発を行った。このように、生産革新に貢献するスマートマシン、自動化・無人化システムの開発を推し進めた。

 「ARMROID」は工作機械とロボットの機構と操作性を完全に融合させた次世代ロボットシステムとして評価され、「第49回機械工業デザイン賞最優秀賞(経済産業大臣賞)」(日刊工業新聞社主催)を受賞、また、その技術開発に対し、「2019年度(第39回)精密工学会技術賞」を受賞した。

 「MCR-S」は、三次元測定機に匹敵する高精度三次元計測を機上で行う能力を持ち、1台で高品位な切削加工からレーザ焼入れ、三次元積層までも可能とした超高精度、工程集約・高効率の金型加工機として評価され、「2019年十大新製品賞(本賞)」(日刊工業新聞社主催)受賞した。

 製造戦略においては、スマートファクトリーDS3(Dream Site3)の稼働を2019年6月から開始し、立形・横形マシニングセンタの自己完結一貫生産、超高効率生産を実現した。また、新生産管理システム、新物流管理システムを全工場へ適用し、生産効率の向上、リードタイムの短縮を図り、内製化率の引き上げとコストダウンを推し進めた。

 海外では、中国市場におけるプレミアム・エコシリーズ「GENOS」の需要拡大を受け、短納期対応、エンジニアリング力強化を図るべく、江蘇省常州市に生産子会社「大隈(常州)机床有限公司」を設立し、2020年3月に稼働を開始した。

■今後の見通し

 今後の世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、当面はマイナス成長での推移が見込まれる。感染の収束が進むにつれ各国政府、金融当局による財政、金融政策により、経済成長は持ち直しに転じるものと見られる。一方、その回復の時期や水準、地域別、産業別の動きは大変見通しにくい状況。

 工作機械、生産財についても、感染の収束が進む動きの中で全体需要は持ち直していくことが見込まれるが、回復度合いなど先行きは不透明な状況。回復後の需要の在り方の激変に柔軟に先んじて、ビジネス展開していく。

 このような経営環境の下、オークマグループは、企業体質の強化、収益力強化、受注の確保、獲得を進めていく。

 営業面では、半導体製造装置やプレス金型等の好調業種、有望顧客への販売活動をグローバルに展開すると共に、新市場、新規顧客の開拓を進め、販売拡大を図っていく。新型コロナウイルス感染の終息後の経済社会は、新たなる構造変化が進むと考えられている。生産分野においては、安定稼働のための自動化・無人化ニーズの拡大、安心・安全稼働のためのデジタル革新、マスカスタマイゼーションにおける超短納期対応などが考えられる。

 技術面では、独自のAI・知能化技術を搭載したスマートマシンの開発を進めると共に、自社開発の次世代ロボットシステム「ROID」シリーズ等、自動化・無人化システムの仕様展開の充実を図り、自動化・無人化ソリューションを提案して需要を喚起していく。またデジタル技術活用のリモート試切削対応や加工技術支援対応を強化し、受注拡大につなげていく。

 製造面では、超複合加工機「MULTUS U4000 LASER EX」での焼入れ・旋削・ミーリングの工程集約、次世代ロボットシステム「ARMROID」での自動化等の次世代製造技術の展開等により、生産効率の向上を推し進め、コストダウンの拡大を図っていく。

 オークマが培ってきた「機電情知(機械・電気・情報・知識創造)」融合の強みを展開し、無人化・自動化の対応力、デジタル革新技術の提案力、トータルソリューションの提供力の強化を図っていく。今期の営業、技術、製造の戦略を進めながら、新型コロナウイルス感染終息後の経済社会の変化を捉えるための成長の土台を築いていく。

 業績予想は、2021年3月期第2四半期累計(上半期)のみ予想。売上高は580億円(前年同期比35.1%減)、営業利益5億円(同94.6%減)、経常利益7億円(同92.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益5億円(同91.9%減)としている。

 業績予想の前提となる為替レートは、1ドル=107円、1ユーロ=119円を前提としている。

 通期の連結業績予想については、新型コロナウイルスの感染拡大による工作機械の需要規模等が不透明であり、通期業績を見通すことは困難な状況にあることから公表を見送った。

 オークマの2020年3月期連結決算短信

 決算発表(参考資料)

 決算説明資料