ファナックが4月24日に発表した2020年3月期(2019年度)連結業績によると、売上高は5,082 億5,200万円(前期比20.0%減)、営業利益は883億5,000万円(同45.9%減)経常利益は1,028 億1,600万円(同44.0%減)、当期純利益は733 億7,100万円(同52.4%減)となった。
■経営成績の概況
2019年度(2019 年4月~20 年3月)における事業環境は、米中貿易摩擦の影響により、中国市場を中心に設備投資に慎重な動きとなるなど、総じて厳しい状況となった。さらに、年度末には新型コロナウイルス感染症の影響が重なり、極めて不透明で厳しい事業環境となっている。
ファナックグループは、中長期的な視点に立った経営を継続するため、「one FANUC」、「壊れない」「壊れる前に知らせる」「壊れてもすぐ直せる」および「サービスファースト」をキーワードに、信頼性・保守性に優れた商品開発の推進、高品質・短納期を実現する生産体制の構築、顧客の生産活動を支えるサービス体制の強化などの重要テーマに、グループ一丸となって取り組んだ。
同時に、現在の厳しい市場環境に対処するため、全社で経費と時間の削減、業務の合理化に取り組み、優先度に応じて設備の導入計画を見直すなど、地道に企業体質の強化を図った。
なお、2019年度において、アームにケーブルを内装し、デザインと機能を両立させた「ファナックロボット R-2000iD/210FH」が「2019 年日刊工業新聞十大新製品賞本賞」および「2019 年日経優秀製品・サービス賞優秀賞 日経産業新聞賞」を受賞した。また、経済産業省特許庁が実施する「知財功労賞」において、知的財産権制度活用優良企業(オープンイノベーション推進企業)として「経済産業大臣賞」を受賞した。
■部門別の状況
<FA 部門>
CNC システムの主要顧客である工作機械業界において、米中貿易摩擦の影響等を受け、中国市場での機械需要が落ち込んだほか、中国市場に大きく依存している台湾でも機械需要が落ち込んだ。日本国内、欧州についても、設備投資抑制の動きを受け、需要が落ち込んだ。また、韓国や前期堅調だったインドでも、内需の弱さ等により低調に推移した。世界的に、機械需要への影響が大きい自動車関連への投資が冷え込んでいる状況。これらの結果、ファナックグループのCNC システムの売上高は前年度に比べ減少した。レーザについては、拡販に努めたが、海外メーカとの競争がさらに厳しさを増している。
FA 部門の連結売上高は、1,432 億4,700万円(前期比32.1%減)、全連結売上高に対する構成比は28.3%となった。
<ロボット部門>
ロボット部門については、米州では堅調に推移した。国内では自動車産業向けが若干増加、一般産業向けが若干減少した。中国および欧州では、自動車産業向け、一般産業向けともに売上が低調だった。これらの結果、ロボット部門全体の売上高は前年度に比べ減少した。
ロボット部門の連結売上高は、2,024 億9,100万円(前期比6.9%減)、全連結売上高に対する構成比は39.8%となった。
<ロボマシン部門>
ロボマシン部門については、ロボドリル(小型切削加工機)は、IT関係の一時的需要がほぼなくなったが、自動車部品市場への拡販に注力した。しかし、自動車関連も2019年度後半から減速したため、売上が減少した。ロボショット(電動射出成形機)は、自動車部品、IT関係、医療市場向けを中心に粘り強く拡販に努めたが、売上は若干減少した。ロボカット(ワイヤカット放電加工機)についても、中国市場を中心に売上が減少した。
ロボマシン部門の連結売上高は、749億1,200万円(前期比34.9%減)、全連結売上高に対する構成比は14.7%となった。
<サービス部門>
サービスについては、「サービスファースト」のキーワードのもと、サービス体制の強化、IT 技術の積極的な導入による効率アップ、サービス技術の向上、サービスツールの充実などを進めた。世界中に260 以上のサービス拠点を置き、108か国をカバーする体制を構築し、顧客の工場でのダウンタイムを最小限にするための迅速な保守サービス活動を行っている。
サービス部門の連結売上高は、876億200万円(前期比4.7%減)、全連結売上高に対する構成比は17.2%となった。
■今後の見通し
今後の新型コロナウイルス感染症の拡大の程度や収束時期を現時点で合理的に予想することが困難なこと、IT 関係の一時的需要が引き続き見込めない状況が続くことに加え、貿易摩擦の影響を含む各国の関税政策や為替動向などの様々な不透明な要因から、総じて予断を許さない状況が続くものと想定。第2四半期累計(上半期)のみ公表した。それによると、売上高は、1,979億円(前年同期比24.2%減)、営業利益189億円(同61.4%減)、経常利益231億円(同59.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益164億円(同59.2%減)。
2021年3月期の通期連結業績予想については、今後の新型コロナウイルス感染症の拡大の程度や収束時期を現時点で合理的に予想することが困難な状況にあることから公表を見送り、開示が可能となった時点で速やかに公表するとしている。
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