日本貿易保険(NEXI)は2月17日、2019年8月20日にデンマークの輸出信用機関(ECA)であるデンマーク輸出信用基金(EKF Denmark’s Export Credit Agency(EKF))との間で締結した再保険協定1に基づき、このほどEKFが行うタンザニアのライトレール改修・建設プロジェクトに対する輸出信用につき、再保険の引受を決定したと発表した。この案件は、同協定下で再保険引受を行う第一号案件。
プロジェクトは、タンザニア政府主導のもと、東岸のダルエスサラームから北部のムワンザまで全長1,219kmを結ぶ最高時速160kmの準高速鉄道設備(線路、橋梁、信号システム、駅舎、管理室等)を5区間に分けて改修・建設する大型インフラプロジェクト。現在建設が進んでいるダルエスサラーム~モロゴロ間、モロゴロ~マクテュポラ間の二区間において三井物産が輸出する日本製鉄製の鉄道レールが納品される。
今回、OeKB(オーストリア)、Euler Hermes(ドイツ)、SACE(イタリア)、CESCE(スペイン)、SERV(スイス)の5つのECAもNEXIと同様にEKFと連携し、再保険を通じてそれぞれ自国品の輸出を支援する。なお、同プロジェクトのファイナンスには、NEXIを含めた先述の7つのECAに加えて、スウェーデンのECA(EKN)、南部アフリカ開発銀行(DBSA)、東部・南部アフリカ貿易開発銀行(TDB)も参画する予定。
2019年8月28日~30日に横浜で開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)に代表されるように、日本は官民一体となりアフリカにおけるビジネスを推進している。アフリカ地域におけるインフラ整備需要は旺盛であり、本邦企業の潜在的な参画余地は大きいと思われる一方、ファイナンス面ではアジア地域と比べ参画のハードルが高い状況にあると言える。NEXIは本邦企業によるアフリカ向け貿易・投資を促進するため、円滑な案件組成に向け各関係機関との連携を強化しており、同プロジェクトはその取組が具現化したもの。EKFは近年アフリカ向け中長期プロジェクトに対するファイナンスへの取組を強化しており、今後も再保険協定に基づくOne-Stop-Shop再保険スキームを活用することにより、アフリカ地域における二国間の幅広い分野での産業協力が可能になる。
また、2019年9月27日にはベルギー・ブリュッセルで第1回欧州連結性フォーラムが開催され、近年日本とEUが強化に取り組んできた両者のパートナーシップの戦略的重要性を一層明確に示す「持続可能な連結性及び質の高いインフラに関する日EUパートナーシップ」に安倍総理とユンカー欧州委員長が署名するなど、日本と欧州の協力は益々重要性を増している。今回の案件は、日本と欧州のECAが再保険という形で協調し、一つのプロジェクトを実現に導く象徴的な取組と言える。さらに、日本の高品位な鉄道レールが導入される点で、日本政府が掲げる「質の高いインフラパートナーシップ」にも合致するプロジェクトと言える。
NEXIは、今後も日本の政策金融機関として、再保険を通じた第三国連携の推進により、本邦企業の国際的な事業展開を積極的に支援していく。