ヤマシンフィルタが2月5日に発表した2020年3月期第3四半期連結累計期間(2019年4~12月)の売上高は91億8,600万円(前年同期比13.3%減)となり、営業利益は6億円(同62.4%減)、経常利益は5億100万円(同67.8%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は3億4,500万円(同69.7%減)となった。売上高については、建機用フィルタ事業において、19.7%の減収となったが、2019年8月に完全子会社化した㈱アクシーの売上高をエアフィルタ事業として第3四半期連結累計期間より含めていることから、全体で13.3%の減収となった。
営業利益については、建機用フィルタ事業における売上高の減少等の影響により66.8%の減収となった一方で、エアフィルタ事業の新規取込みによる業績貢献により62.4%の減益となった。経常利益については、営業利益の減少及びアクシーの子会社化に係るアドバイザリー費用等の発生により67.8%の減益となった。四半期純利益については、経常利益の減少等に伴い69.7%の減収となった。
■2019年4~12月期の概況
2019年4~12月、主要市場である油圧ショベルを中心とした建設機械市場は、日本では2019年10月に発生した台風19号の影響により主要得意先の生産に大きな影響が出たものの、公共投資や設備投資は増加基調が継続し、需要は全体では前年並みに推移した。北米では、米中貿易摩擦については部分合意される等、短期的には沈静化が図られており、需要は堅調に推移した。欧州では、英国のEU離脱問題がいったん収束に向かったことにより不透明感は払拭されているが、需要は若干減少した。中国では、景気減速が伝えられる中、政府主導による公共事業投資により建機需要は下支えされており、2020年12月以降予定される第4次環境規制対応に向けた新車の駆け込み需要等が見込まれ、新車販売台数については過去最高を記録している。
このような市場環境を背景に、中国系建機メーカーの市場占有率拡大が継続し、その結果、ヤマシンフィルタの主要得意先各社の市場占有率は大幅な縮小を余儀なくされている。東南アジアでは、一部地域での政情不安定感が残るものの、インフラ整備に伴う潜在的な需要には堅調さが見られる。
なお、2019年12月以降発生した新型肺炎の急速な拡大により、中国政府は春節の連休延長を発表するなど中国国内のみならず周辺各国の物流、生産等への影響が出始めており、今後の状況によっては、世界経済への影響も危惧されている。
既存ビジネスである建機用フィルタ事業は、強みである油圧ショベルの作動油回路用フィルタ製品を主軸に、新素材やIoT技術を活かしたフィルタ製品のラインナップの充実を図り、純正部品の採用率向上に努めた。とりわけ、世界最大の建機市場である中国市場では、中国系建機メーカーへのリターンフィルタを主軸とした製品の新規採用に向けた取り組みを強化しており、その採用実績は増加している。また、もう一つの大市場である北米市場で、主要製品であるリターンフィルタ製品に加え、燃料用、トランスミッション用フィルタ等の新規採用活動についても大きな進展を見せている。
更には、独自開発した合成高分子系ナノファイバーを使用したロングライフのフィルタ製品やタンク内の気泡を除去するエアレーション技術、フィルタの汚染度や交換頻度を感知するセンサ技術を搭載したフィルタ製品の主要得意先への積極的な提案を実施している。
ヤマシンフィルタの中国系建機メーカーへのシェア拡大並びに既存主要得意先への製品の採用拡大に向けた取り組みは着実な進捗を見せており、来期以降の建機用フィルタビジネスに更なる成長が見込まれる。
また、主力事業の建設機械用油圧フィルタ事業に加え、2019年8月23日付でエアフィルタ事業会社である㈱アクシーを傘下に加え、ヤマシンフィルタの合成高分子系ナノファイバー技術を活用した新商品の開発による新規事業領域への積極的な参入を進めている。アクシーについては、ヤマシンフィルタの第2の事業セグメントであるエアフィルタ事業の基幹会社として、第3四半期連結累計期間よりグループの連結業績に寄与している。
なお、2020年1月28日開催の臨時取締役会において、エアフィルタ事業の中期的成長のための生産規模拡張及び応用技術開発拠点の取得による迅速な製品化の実現を目的とし、アクシーの新社屋及び新工場の取得を決議した。当該物件の取得、工場移転によりアクシーの高収益化が実現するとともに、グループへの安定的な業績貢献に寄与することが見込まれる。
更には、事業ポートフォリオの拡大に向けたもう一つの取り組みとして、国内大手アパレルメーカー数社に対し、秋冬物衣料の中綿材として、「YAMASHIN Nano FilterTM」の量産供給を開始し、引き続き次期シーズンに向けた新素材の提案活動等を積極的に展開している。
このように、ヤマシンフィルタグループは、建機用油圧フィルタ並びにエアフィルタの2つの事業を軸として、新たに開発した合成高分子系ナノファイバーの量産化技術を基に、中期的持続的な事業成長を図り、グループ経営基盤の強化に努め、企業価値の向上を図っていく。
■2020年3月期の連結業績見通し
2020年3月期連結業績は、売上高127億円(前回予想:134億円)、営業利益8億8,000万円)、経常利益6億8,500万円(同11億3,500万円)、親会社株主に帰属する当期純利益4億6,000万円(同:8億円)に修正した。
・連結業績予想値の修正概要
a. 売上高については、既存事業である建機用フィルタ事業に関しては、主要得意先各社の生産計画の下方修正に伴い、前回開示した業績予想に比べ約5.8%の減収となる見込み。一方で、2019年8月23日付で完全子会社化が完了した株式会社アクシーの売上見通しについては予想を据え置くことから、売上高全体では、前回開示した業績予想に比べ約5.2%の減収となる見込み。
b. 営業利益については、建機用フィルタの売上高の減少に伴い、前回開示した業績予想に比べ29.6%の減益となる見込み。
c. 経常利益については、営業利益の減少等により、前回開示した業績予想に比べ39.6%の減益となる見込み。
d. 親会社株主に帰属する当期純利益については、経常利益の減少に伴い、前回開示した業績予想に比べ42.5%の減益となる見込み。
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