川崎重工業は12月5日、商用化に向けた新型水素液化機による実証試験を播磨工場で開始したと発表した。新たに開発した水素液化機は、川崎重工が2014年に開発した従来機より液化効率を約20%向上させ、業界トップクラスの性能を達成した。実証試験(液化能力 約5トン/日)は、2020年5月まで連続運転を実施し、商用機としての性能を確認後、営業活動を開始する。
水素は、使用時に温室効果ガスが発生しないクリーンなエネルギーとして、発電用や燃料電池車用などの燃料として普及が見込まれている。日本では、2030年度に二酸化炭素の国内排出量を26%削減(2013年度比)する目標を掲げており、この対策の一つとして水素エネルギーの利用拡大を推進し、水素社会の実現を目指している。2017年に省庁連携共通シナリオとして発表された水素基本戦略では、2030年代には約30万トンの水素が活用されるロードマップが提示された。
川崎重工は、水素社会の実現に向け、効率よく貯蔵および輸送するための手段として、マイナス162度で天然ガスを液化する技術を応用し、マイナス253度で液化することで体積が800分の1になる水素の性質に着目して液化技術の研究開発に取り組み、2014年には純国産独自技術による水素液化システムを開発した。
新型水素液化機も従来機と同様に、圧縮した原料の水素ガスを冷凍サイクルで冷やされた水素と液化機内で熱交換しながら冷却することで、1日あたり約5トンの液化水素を生産する能力を有するが、液化工程の改良や効率化に寄与する設計見直しを行った結果、液化効率を約20%向上させつつ、本体重量を30%軽量化することでコストダウンを実現した。また、このシステムをもとに、1日あたり約25トンの液化水素を生産するシステムまでラインアップを整えていく計画。
実証試験では、商用化に向けた性能の信頼性、設備の耐久性などを確認しつつ、液化工程における様々なデータを取得することで、将来的にはさらなる大型化を目指す。
川崎重工は、種子島宇宙センターにある国内最大の液化水素貯蔵タンクを建設以来、30年以上にわたるその運用実績や、LNG船やLNG貯蔵基地などの建造・建設で積み上げてきた液化天然ガスの輸送・貯蔵技術を強みに、水素の液化・輸送・貯蔵などトータルパッケージでの提案を行っていく。
また、水素社会の実現に向けて、液化水素運搬船や大型液化水素貯蔵タンク、水素燃料100%で発電できるガスタービンなど、サプライチェーンの上流から下流まで一貫した技術開発、商用化を進めていく。持続可能な開発目標(SDGs)の観点からも水素エネルギーの普及を目指し、脱二酸化炭素を推進することで、世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する。
■液化水素の特長:水素は最も軽く、毒性・匂い・温室効果のない気体である。重量あたりの熱量が最大であるため、ロケット燃料などの用途で30年以上前から使用され、近年では燃料電池自動車などにも用いられている。マイナス253℃で液体になり、体積を800分の1にすることができる。液化した水素は高純度(99.999%以上)なため、輸送後に蒸発させるだけで燃料電池や発電に使用することが可能。
画像:新型液化機を組み込んだ液化システム
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