日精エー・エス・ビー機械が11月12日に発表した2019年9月期(2018年10~19年9月)連結業績によると、受注高は26,056百万円(前期比90.3%)、売上高は26,129百万円(同93.9%)とそれぞれ前期を下回る結果となった。また、当期末の受注残高は9,508百万円(前期末比94.3%)となった。売上高は四半期ごとに順調に伸長したが、不安定な経済情勢の影響を受け、顧客の設備投資需要は一部市場で依然として弱含んだ。
利益面については、売上高の四半期ごとの伸長を受け、各段階の利益は着実に改善してきた。しかし通期ベースでは、売上規模の減少と大型機生産拠点である国内工場の操業度が低下した結果、売上総利益は11,640百万円(前期比89.8%)、営業利益は4,304百万円(同84.1%)と、それぞれ減益となった。また最終損益である親会社株主に帰属する当期純利益も3,154百万円(同72.5%)と減益となったが、これは主に前期に計上した多額の投資有価証券売却益の反動減によるものである。(*数値の表記方法は原文表示としています)
■経営成績等の概況
2019年9月期における世界経済は、米中貿易摩擦の長期化、中国や欧州経済の景気減速懸念を受け、不透明感が高まっている。一方、国内経済は、前半は堅調な企業収益に支えられたものの、後半は世界経済の減速傾向を受け、輸出関連産業を中心に足踏み感が強まっている。また、G20大阪サミットで共有された、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現に向けて、廃プラスチック問題への関心が高まっている。
このように、同社を取り巻く経営環境は、依然として予断を許さない状況が続いている。こうした環境下、同社グループは「人と社会に豊かさを提供する」「高い技術、サービスで恒久的な存続を追求する」との経営理念に基づき、中長期的な成長発展方針を継続し、事業規模の拡大を見据えた各種戦略的施策の展開に注力した。
技術面では、同社が従前より得意とする高品質・高付加価値生産が特徴のワンステップ成形機の優位性を更に高める「ゼロ・クーリングシステム」と命名した新技術の開発実用化を進め、製品競争力を強化した。これは、ワンステップ成形機の中でも同社の4ステーション方式でしか成し得ない、容器の生産性・物性強度・外観品質・軽量化を同時にかつ飛躍的に向上させる画期的な新技術である。とりわけ、軽量化についてはプラスチック材料の使用量削減を実現できるため、廃プラスチック問題への対策としても有効な技術である。
販売面では、全世界の既存・新規マーケットへの「ゼロ・クーリングシステム」周知活動に注力するとともに、国内新工場(千曲川工場)で開催した社内展示会、及び世界各地の主要展示会に同システム搭載機を積極出展し、市場浸透を図った。
生産面では、インド第3工場の立ち上げを完了し、成形機の部品加工及び機械組立における安定稼働を達成した。また旺盛な金型需要に対応するため、インド工場への金型生産設備の追加投資を決定し、2020年6月の取得完了に向け、導入を開始した。一方、千曲川工場は、新技術及び新型機の研究開発拠点として、またグループ全体の物流拠点として有効活用を開始した。
廃プラスチック問題への取り組みに関しては、業界のリーディングカンパニーの社会的使命として、古くからリサイクルを始めとする環境配慮型技術の開発に取り組んできた。現在ではそのテーマを「3R+α」として、「Reduce=材料使用量の削減(ゼロ・クーリングシステム)」、「Reuse=使い捨てない容器の成形提案(高耐熱性技術)」、「Recycle=あらゆるリサイクル材料の成形」、「+α=生分解性プラスチックなど新素材への取り組み」の各テーマ全てに具体的なソリューションを提供している。
また、業界活動にも積極的に参加し、日本プラスチック工業連盟の「プラスチック海洋ごみ問題の解決に向けた宣言活動」の趣旨に賛同・署名したほか、環境省主導のプラスチック・スマート運動に取り組み事例を登録・紹介するなど、環境配慮型技術の情報発信にも積極的に取り組んでいる。このように廃プラスチック問題は、技術蓄積のある同社にとっては大きなビジネスチャンスでもあり、循環型社会の実現と持続可能な社会の構築に向け、今後も真摯な対応を続けていく。
■製品別の売上高状況
ストレッチブロー成形機が13,878百万円(前期比91.0%)と減収になったものの、金型が7,520百万円(同97.6%)、付属機器が1,720百万円(同97.6%)、部品その他が3,009百万円(同96.8%)とそれぞれ前期並みの水準を維持した。なお、金型については過去2番目の売上高となり、需要の底堅さを示している。
■セグメント業績
<米 州>
北米市場は比較的堅調に推移しているものの、中南米市場で前期大幅増収の反動減により、地域全体の売上高は6,623百万円(前期比78.8%)と減収となった。セグメント利益も減収の影響などにより、1,966百万円(同86.4%)と減益となった。
<欧 州>
英国の欧州連合(EU)離脱問題、及び欧州経済の先行き不透明感を受けて、設備投資需要が冷え込んでいるため、地域全体の売上高は5,541百万円(前期比83.7%)と減収となった。セグメント利益も1,800百万円(同72.0%)と減益となった。
<南・西アジア>
中東、オセアニア、アフリカでの増収により、地域全体の売上高は9,138百万円(前期比101.7%)と増収となった。一方、セグメント利益はインド工場の固定費増加により、1,590百万円(同89.3%)と減益となった。
<東アジア>
主要市場の中国・韓国で増収となり、地域全体の売上高は2,261百万円(前期比145.5%)と増収となった。セグメント利益も、増収により609百万円(同138.5%)と増益となった。
<日 本>
国内の容器需要が底堅く推移したため、売上高は2,564百万円(前期比112.7%)と増収となった。セグメント利益も、747百万円(同111.2%)と増益となった。
■2020年9月期見通し
次期(2019年10月1日~2020年9月30日)においては、世界経済の先行き不安、為替相場の変動リスク、廃プラスチック問題の議論加熱など、同社を取り巻く外部環境は依然として不安定な状況が予想される。このような中、同社では中長期的な事業規模の拡大と、更なる企業競争力の向上を図るため、重要施策を実施していく。
技術面では、画期的な新技術であるゼロ・クーリングシステムの更なる進化、リサイクル材料や生分解性プラスチックなどの新素材に対応した環境配慮型技術の開発、2ステップ市場のシェア拡大を企図する量産技術の開発強化に取り組んでいく。
営業面では、ゼロ・クーリングシステム搭載機や環境配慮型技術を世界各地の主要展示会に出展し、一層の市場浸透と顧客需要の開拓に努めていく。
生産面では、インド第3工場の活用による原価低減や、金型生産設備の増強により、収益性の向上や生産リードタイムの短縮を図っていく。
経営成績については、次のとおり見込んでいる。売上高288億円(前期比10.2%増)、営業利益48億円(同:11.5%ぞう)、経常利益46億円(同:9.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益34億円(同:7.8%増)。
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