川崎重工業が10月31日に発表した2020年3月期第2四半期(4~9月)連結業績によると、受注高は前年同期比731億円減少(10%減)の6,573億円、売上高は前年同期比484億円増収(7%増)の7,365億円、営業利益は前年同期比2億円増益の86億円、経常利益は前年同期比6億円増益の8億円、親会社株主に帰属する四半期純損益はほぼ前年同期並みの37億円の損失となった。
4~9月期の受注高は、航空宇宙システム事業を中心に減少となった。売上高は、エネルギー・環境プラント事業などが減収となる一方で、航空宇宙システム事業、車両事業などが増収となったことにより、全体では前年同期比で増収となった。
営業利益は車両事業の改善やエネルギー・環境プラント事業の増益はあったものの、精密機械・ロボット事業などが減益となったことにより、全体ではほぼ前年同期並みとなった。経常利益は為替差損の増加があった一方で、民間航空エンジンの運航上の問題に係る負担金の減少などで、増益となった。親会社株主に帰属する四半期純損益は、固定資産売却益を特別利益に計上した一方で、税金費用が増加したことにより、ほぼ前年同期並みとなった。
■セグメント別業績
<航空宇宙システム事業>
航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては、厳しい防衛予算の中で一定程度の需要が存在している。民間航空機については旅客数の増加に伴って機体・エンジンともに需要が増加している。
このような経営環境の中で、連結受注高は、民間航空エンジン分担製造品が高水準を維持したものの、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品が減少したことにより、前年同期に比べ423億円減少の1,587億円となった。
連結売上高は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品、民間航空エンジン分担製造品が増加したことにより、前年同期に比べ406億円増収の2,508億円となった。
営業利益は、増収があったものの、民間航空エンジン分担製造品の新規プログラム開発費償却負担増加などにより、前年同期並みの97億円となった。
<エネルギー・環境プラント事業>
エネルギー・環境プラント事業を取り巻く経営環境は、海外では資源開発や天然ガス関連投資が回復基調にあることに加え、アジアではエネルギーインフラ整備需要が継続している。また環境・省エネルギー投資意欲の向上などにより、分散型電源の需要が増加している。国内ではごみ焼却プラントや産業機械において老朽化設備等の更新需要が継続している。一方で分散型電源は、潜在的需要は大きいものの、電力自由化を睨んで投資計画が若干遅れ気味になっている。
このような経営環境の中で、連結受注高は、国内向けごみ処理施設の大規模改修工事などの受注があったものの、国内向けコンバインドサイクル発電プラントや国内向けLNGタンクなどの大型案件を受注した前年同期に比べ227億円減少の1,240億円となった。
連結売上高は、エネルギー事業や国内向けごみ処理施設の工事量減少等により、前年同期に比べ83億円減収の956億円となった。
営業利益は、減収があったものの、海外向け化学プラントやエネルギー事業での採算改善などにより、前年同期に比べ28億円増益の50億円となった。
<精密機械・ロボット事業>
精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、建設機械市場向けでは、中国市場における油圧ショベル需要の鈍化等により在庫調整を行うメーカーが見られるものの、今後も新興国を中心に堅調な需要があるものと見ている。ロボット市場向けでは、米中貿易摩擦の影響による中国市場での設備投資延期等により市況は厳しい状況が継続しているが、半導体市況については、台湾の大手半導体メーカーの投資等が出始めている事、その他米国主要装置メーカーの需要予測等の情報から、底を脱したと見ている。中長期的には、ロボット需要は着実に拡大していくと見ている。
このような経営環境の中で、連結受注高は、各種ロボットが減少したことにより、前年同期に比べ108億円減少の1,046億円となった。
連結売上高は、各種ロボットが減少したことにより、前年同期に比べ39億円減収の982億円となった。
営業利益は、各種ロボットの減収や油圧機器の資材費、研究開発費の増加などにより、前年同期に比べ64億円減益の32億円となった。
<船舶海洋事業>
船舶海洋事業を取り巻く経営環境は、環境規制強化に伴うガス燃料推進船需要の顕在化並びにLNG開発プロジェクトの具体化が進む一方で、海運マーケットの長期低迷、韓国政府による造船業支援政策の継続などにより、依然として厳しい状況にある。
このような経営環境の中で、連結受注高は、LPG運搬船を受注したことなどにより、前年同期に比べ100億円増加の265億円となった。
連結売上高は、修繕船の売上増加があったものの、LNG運搬船及びLPG運搬船の工事量減少により、前年同期に比べ26億円減収の371億円となった。
営業損益は、新造船の減収及び操業差損の発生などにより、前年同期に比べ27億円悪化して14億円の営業損失となった。
<車両事業>
車両事業を取り巻く経営環境は、国内については老朽化車両の更新需要が安定的に存在している。海外については、米国では注力市場であるニューヨーク地区をはじめ新造・更新需要が見込まれており、またアジアでは日本政府によるインフラ輸出促進に伴って新興国向け案件の形成が計画されている。
このような経営環境の中で、連結受注高は、国内向け車両の受注があったものの、米国向け車両・改造工事などを受注した前年同期に比べ213億円減少の391億円となった。
連結売上高は、海外向け部品の減少はあったものの、国内向けや米国向け車両が増加したことにより、前年同期に比べ138億円増収の593億円となった。
営業損益は、一部案件におけるコスト変動はあったものの、増収に加え、前年同期に発生した米国向け案件での一時的費用の減少などにより、前年同期に比べ45億円改善して43億円の営業損失となった。
<モーターサイクル&エンジン事業>
モーターサイクル&エンジン事業を取り巻く経営環境は、二輪車では主に欧州において市場の緩やかな成長が持続している一方、一部新興国は市場が軟調である。また、四輪車では主に北米において市場が安定した成長を続けており、汎用エンジン市場も堅調に推移している。
このような経営環境の中で、連結売上高は、米国向け四輪車の増加により、前年同期に比べ28億円増収の1,472億円となった。
営業損益は、増収に加え、販促費の期ずれや前年同期に販管費の一時的な増加があった反動などにより、前年同期に比べ12億円改善して33億円の営業損失となった。
<その他事業>
連結売上高は、前年同期に比べ59億円増収の481億円となった。営業利益は、前年同期並みの8億円となった。
■2020年3月期の見通し
2020年3月期の連結業績については、売上高、営業利益、経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は前回(9月30日)公表値を据え置いた。
受注高は、精密機械・ロボット事業等で減少が見込まれることから、前回公表値(7月30日)から500億円減少の1兆6,500億円、ROICは4.8%、ROEは5.2%となる見通しである。
なお、業績見通しにおける為替レートは、1ドル=107円、1ユーロ=118円を前提としている。
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