三井E&S、大水深用ライザー接合技術確立に向け第一熱処理工業と共同開発開始

 ㈱三井E&Sホールディングス三井E&S造船は10月11日、石油・ガス・地熱発電などの掘削用に使われるドリルパイプを製造する日本唯一のメーカーである第一熱処理工業(本社:千葉県船橋市)と、大水深用ライザー接合技術を確立するため、共同開発を開始したと発表した。

 日本の排他的経済水域(EEZ)の海底には、レアアース、表層型メタンハイドレート、砂層型メタンハイドレート、海底熱水鉱床、コバルトリッチクラストなどが存在しており、純国産の海底資源として今後の開発が期待されている。この中でレアアース泥は、水深4,000から6,000mの海底にあり、最大水深3,000mである石油や天然ガス向けの技術をそのまま適応することはできない。

 特に、船上から海底まで降ろすライザー管は、レアアース泥にとどまらず大水深の海底石油や天然ガス開発において、技術面での最大の課題のひとつになっている。一般的に、ライザー管は鋼管で、その接合方法は、鋼管の端部に溶接接合されたフランジをボルト等で螺合する方式などが採用されている。

 そのため、大水深になると、ライザー管の総重量も非常に重くなり、船上よりライザー管を吊り下げることが非常に困難となる。それに対し、大水深用に対応するため、近年、板厚を薄くできる高強度のライザー管の開発が進められている。

 しかし、フランジ接合のライザー管は、円周溶接部の靱性の低下を招かないような溶接性能が求められるため、材料の炭素等量等が制限され、高強度化が容易ではなかった。

 これに対して、三井E&Sホールディングスと第一熱処理工業は、新たなライザー管の接合技術として、焼きばめ接合の開発を開始した。

 焼きばめ接合とは、ライザー管の外径よりも小さい内径の短鋼管(接続管)を加熱し膨張させ、ライザー管を、その接続管の両端から挿入し、その後冷却することで接合させる技術である。

 ライザー管の接合方法として焼きばめ接合を採用すれば、フランジ構造に比べ接続管の重量が軽いことに加え、接続管長さも各接続箇所で容易に最適なサイズに変更できるため、フランジ接合に比べ接合部の軽量化ができる。

 さらに、ライザー管自体も、円周溶接部がないため、溶接性能、疲労性能が求められないため、一般的なライザー管の鋼管(API 5L規格)よりも高強度な鋼管が使用でき、容易に軽量化を図ることができる。

 このように、焼きばめ接合は、従来に比べ格段にライザー管重量を軽量化できるため 稼働水深を6,000mまで大きく延ばすことが期待できる技術と考えている。現在、焼きばめ接合された小規模試験体の引張実験を実施し、焼きばめ接合の有効性を確認することができた。さらに、現在、水深6000m級ライザー管の実機サイズでの強度実験も行うべく準備を進めている。

 焼きばめ接合は、さらなる大水深開発が進みつつある海底石油や天然ガス開発においても、有効な技術として期待できる。

 三井E&Sホールディングスは、ライザー管挙動シミュレーション技術などを保有し、さらには海洋構造物の製造に関して幅広い実績を有している。また第一熱処理工業は、海底石油・天然ガスの掘削部品製造において高品質で世界に貢献している。

 三井E&Sホールディングスと第一熱処理工業は、この強力な連携によって、大水深用ライザー接合技術を、石油や天然ガス向け産業への展開も視野に入れて、活動を進めていく。

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