富士経済、中国の産業用ロボット市場調査を発表

・2018年後半から需要が落ち込むも2019年後半以降は再び堅調な伸びが期待される

・2025年市場予測(2018年比)

 中国の産業用ロボット市場 9,838億円(2.7倍)、スカラロボットや小型垂直多関節ロボットなど組立・搬送系の大幅な伸びが市場拡大をけん引

 総合マーケティングビジネスの㈱富士経済(本社:東京都中央区))は6月17日、グローバル市場において産業ロボットの最大の需要地となっている中国市場を調査したと発表した。その結果を「急成長する中国新興ロボット関連プレーヤーの最新動向調査」にまとめた。

 この調査では、中国の産業ロボット市場(組立・搬送系、溶接・塗装系、クリーン搬送系、アクチュエータ系)の現状を分析し、将来を予測するとともに、中国ロボットメーカー19社、中国ロボット部材メーカー9社の動向について整理した。

 中国の産業ロボット市場は、人手不足や賃金上昇への対応、スマートフォンや自動車関連をはじめとした主要需要分野の好調などにより、今後も中長期的には堅調な拡大が予想される。また、国家主導による中国メーカー・部材メーカーの育成なども進んでいる。市場拡大に伴い、大手メーカーに限らず中小も含めた様々なメーカーが実績を伸ばしており、今後は新旧ロボットメーカーのシェア構造の変化が想定される。

<調査結果の概要>

■中国の産業用ロボット市場

 中国の産業ロボット市場は、主に自動車の製造に使用される溶接・塗装系が市場をけん引してきたが、人手不足や人件費の高騰を背景に自動車製造以外の用途でもロボット需要が増えており、近年は組立・搬送系が伸びている。

 市場全体として、2018年前半までは大幅な伸びがみられたが、2018年後半から設備投資の抑制により伸びが鈍化した。ただし、2019年後半には設備投資の回復により堅調な伸びが予想され、2025年の市場は2018年比2.7倍の9,838億円が予測される。

1.組立・搬送系

 2017年はスマートフォン関連の需要増加により伸びたが、2018年はスマートフォン関連需要の減少、米中貿易摩擦による設備投資抑制などの影響で伸びは鈍化した。2018年に比較的好調だったのはスカラロボットであり、中国ロボットメーカーも実力をつけてきている。2019年は米中貿易摩擦の影響緩和が期待され、人手不足や人件費の高騰を背景とした底堅い自動化ニーズにより今後の伸びが予想される。スカラロボットや小型垂直多関節ロボットなどの伸びが市場拡大をけん引するとみられる。

2.溶接・塗装系

 主に自動車、自動車部品の製造ラインで採用されており、中国の産業ロボット市場をけん引してきた分野である。2018年は環境規制の強化や米中貿易摩擦を背景に自動車の生産が低迷したため、溶接・塗装系市場の伸びも鈍化した。しかし、2019年以降はEVなど向けの設備投資の増強を背景に堅調な需要が予想される。

3.クリーン搬送系

 ガラス基板搬送ロボットとウエハー搬送ロボットを対象とした。ガラス基板搬送ロボットは、中国FPD(フラットパネルディスプレイ)メーカーの設備投資に大きく左右される。2018年は設備投資が停滞したため市場は縮小に転じた。FPDの供給過多や、有機ELの低コスト化が進展していないことから当面は設備投資が低調なため、市場の本格的な回復は2021年以降になるとみられる。ウエハー搬送ロボットは、2018年後半に急激に需要が落ち込んだ。2019年末頃から需要が回復すると予想される。

4.アクチュエータ系

 2017年に市場は大幅に伸びたものの、2018年後半はスマートフォン関連の設備投資の縮小や、米中貿易摩擦の影響により需要が急激に落ち込んだ。しかし、2019年以降はスマートフォン関連の潜在案件に加え、米中貿易摩擦の影響緩和が期待され、堅調な伸びが予想される。

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