川崎重工業は6月7日、高効率の自社製発電設備を浮体に搭載した浮体式LNG(液化天然ガス)発電プラント(画像はイメージ)を開発し、DNV GL(※1)からガスエンジンモデルにおいて、最新の2018年版「Gas Power Plant」規則に基づいた設計基本承認(※2)を取得したと発表した。
浮体式LNG発電プラントは、LNG燃料タンク、LNG気化装置、発電設備、受変電設備の全てを浮体に搭載した統合型システムで、海上や河川を曳航し、設置場所に係留しながら浮体上で発電することによって、陸上の送電網に電力を供給する。
電力需要の伸びが著しい東南アジア諸国をはじめとした島嶼地域などの安定電源確保に課題を抱える地域や、陸上の発電所建設用地が不足するなどの地理的条件に課題を持つ地域での需要が見込まれている。
また、燃料となるLNGは、重油に比べて発電コストにおいても優位性があり、さらに石炭や重油に比べて温暖化ガスの排出が少なく、環境にやさしい燃料として需給規模と用途の拡大が期待されている。
■川崎重工の浮体式LNG発電プラントの特長は次のとおり。
(1)自社開発のクラス世界最高水準の発電効率を誇るガスエンジン(49.5%)・ガスタービン(単体:40.3%、コンバインドサイクル:54.4%)を搭載している。これらは、窒素酸化物(NOx)の排出量が少なく、環境への負荷が低いシステムである。
(2)ガスエンジンは起動開始から10分以内に100%の出力に達する高速起動のシステムである。また、広範囲な出力域(単機運転で30%~100%)で高効率な運用が可能である。
(3)小型LNG運搬船・LNGバンカリング船と同仕様の堅ろうで防熱性能の高いアルミ製タンクを採用している。
(4)発電主要機器、タンク、バージ建造から搭載まで自社工場でシームレスに手掛けられることから、安定した品質と確実な納期の確保が可能である。
川崎重工は、1981年にアジア初のLNG運搬船を建造以来、大型LNG運搬船・LNG燃料船などの各種LNG関連船を40隻以上建造し、国内初のLNGバンカリング船を受注するなど豊富な知識と経験によりLNG関連の技術をリードしてきた。また、発電プラント分野においても、中核設備である、ガスエンジン、ガスタービン、蒸気タービン、排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)を自社で開発・設計・製作する能力を有するとともに、国内外での豊富なプラントエンジニアリング経験により、LNGバンカリング船やLNG二次基地向けのタンクなどの設備を含むパッケージ対応も可能である。
川崎重工は今後とも、LNG関連の技術シナジーを活かし、グローバルにエネルギー事業を展開していく。
※1 DNV GL:世界有数の船級協会で、海運業界における主導的な地位を担い、あらゆる船型および海洋構造物の安全、品質、エネルギー効率、環境性能の向上にグローバルに取り組んでいる。また、オイル&ガス分野の技術コンサルティングサービスを行うサービス・プロバイダーでもある。
※2 設計基本承認(AiP:Approval in Principle):新製品・新技術の概念設計のリスクアセスメントおよび船級規則への適合性の検証により、第三者としての船級協会による確認を得ること。
<浮体式LNG発電プラントの諸元>
モデル名:Gas Engine ※DNV GLからAiP取得
発電システム構成:ガスエンジン 4基
発電出力:30MW
浮体サイズ:L120m×W36m×D6.5m
LNGタンク:3,500㎥×2基
モデル名:CCPP(Combined Cycle Power Plant) ※DNV GLにAiP申請中
発電システム構成:ガスタービンコンバインドサイクル(ガスタービン2基、排熱回収ボイラ2基、蒸気タービン1基)
発電出力:80MW
浮体サイズ:L110m×W48m×D20m
LNGタンク:5,500㎥×2基
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