富士フイルム、約40億円投じて富士フイルムテクノプロダクツ佐野工場内に内視鏡スコープの新工場を建設

・AIやIoT技術を活用したスマート工場により生産能力を倍増

 富士フイルムは5月28日、視鏡製品の生産拠点である富士フイルムテクノプロダクツ(本社:神奈川県南足柄市)の佐野工場(栃木県佐野市)内に、AIやIoT技術を用いることで生産効率を大幅に高めた新工場を建設し、今年9月より本格稼働させる発表した。新工場では、波長の異なる2種類の光を用いた特殊光観察で、微小な病変の発見をサポートする富士フイルムの内視鏡システム「レザリオ」や「6000システム」に対応した内視鏡スコープを生産する。なお、建設投資額は約40億円で、同拠点での内視鏡スコープの生産能力を従来の2倍にする。

 内視鏡は、体内を直接観察でき、患者の身体的負担が少ない治療が可能なことから、近年グローバルで需要が拡大している。富士フイルムは、臓器の粘膜表層の微細な血管や構造などを強調して表示する機能「BLI(※1)」や、画像の赤色領域のわずかな色の違いを強調する機能「LCI(※2)」などの画像強調機能を用いて、炎症の診断や、微小な病変の発見をサポートする内視鏡システム「レザリオ」や「6000システム」などを国内外に提供している。特に早期がんに特徴的な粘膜表層の微細血管などの変化の観察で、医療機関から高い評価を得ており、これら内視鏡システムとスコープの需要が、グローバルで急増している。

 内視鏡スコープは、患者の体内に挿入し、検査・治療を行うという特性上、製造には微細で高精度な加工技術が求められる。また、操作性や挿入性、耐久性など多岐にわたる性能を持たせることから、その製造工程は非常に複雑です。急増する需要に対応するためには、生産能力の向上が必要だが、微小なレンズの取付作業や、内視鏡映像のピントや色などの目視検査など、熟練者のノウハウや卓越した技能が求められるため、生産効率を大幅に上げることが非常に困難だった。

 今回新設する内視鏡スコープの生産工場は、工場内の人やモノの動き、設備状態をIoTで管理する最新のスマート工場。これまでシステムで管理していた作業工数、製造・検査の記録、部品在庫などのデータに加えて、工場内のさまざまな箇所に配置したセンサーで、設備の稼働状況、作業員の動線などの情報を取得し、一つのプラットフォームに集約。設備の故障予知、生産進捗などの状況を、リアルタイムかつ統合的に把握することで、効率化に向けた分析・改善サイクルの高速化を実現する。

 また、熟練者が目視検査している内視鏡映像の判断基準をAIに学習させて、映像検査工程を自動化することで、検査工数を大幅に削減する。さらに、熟練者の作業をビデオカメラで撮影し、センサーで得られた補助情報と重ね合わせてスマートグラス(※3)に映すなど、現場作業を支援することで、作業の大幅な効率化と安定品質を両立する。このスマート工場の新設により、グローバルで拡大する内視鏡市場に、迅速かつ安定的に高品質な製品を提供できる体制を構築し、内視鏡事業をさらに強化する。

 富士フイルムは、今後もさまざまな医療現場のニーズに応え、検査の効率化と医療の質の向上、人々の健康維持・増進に貢献していく。

<新工場の概要>

名称:富士フイルムテクノプロダクツ N-1工場

所在地:栃木県佐野市小中町700

総投資金額:約40億円

生産品目:内視鏡スコープ

総延床面積:11,275m2(鉄骨、地上2階建)

竣工時期:2019年6月末

稼働開始時期:2019年9月

※1 「Blue Light Imaging」および「Blue LASER Imaging」の略。

※2 「Linked Color Imaging」の略。

※3 眼鏡型のウエアラブル端末。拡張現実(AR)技術により、現実の風景に実在する風景にバーチャルの視覚情報(文字や映像)を重ね合わせて表示する。

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