東京計器が5月10日に発表した2019年3月期(2018年度)連結業績によると、売上高は前期比2,889百万円(6.6%)増収の46,692百万円となった。また、売上高の増加に加え、原価率及び販管費率の好転等により、営業利益は1,121百万円(85.1%)増益の2,440百万円、経常利益は1,148百万円(76.0%)増益の2,660百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は816百万円(72.8%)増益の1,936百万円といずれも大幅な増益となった。
■経営成績の概況
2018年度における国内経済については、輸出はアジア・その他地域向けが弱含んでおり、生産も一部に弱さがみられるものの、企業の設備投資は増加し、雇用情勢も着実に改善していることなどから、景気の緩やかな回復基調が続いた。このような経営環境の中、東京計器グループは、2018年5月に発表した中期経営方針及び中期事業計画の成長戦略である「既存事業の強化」、「グローバル化の推進」、「事業領域の拡大」に取り組んできた。
「既存事業の強化」については、流体機器事業において、国土交通省が定める「危機管理型水位計」の基準に対応した新しい電波レベル計を短期間で製品化することに成功し、計画を大幅に上回る受注に成功した。さらに、大量受注に対しても遅滞なく対応した。
「グローバル化の推進」については、油空圧機器事業でアジア地区での新たな販売パートナーの確保や海外現地社員の採用等の販売力強化を推進したほか、流体機器事業ではベトナム駐在員事務所を設立し、より具体的な販路開拓を開始した。
また、その他の事業では、鉄道機器事業において初の海外向けレール探傷車を納入し、国内では圧倒的なシェアを保有する当該事業の海外進出へ大きな一歩を踏み出した。「事業領域の拡大」については、油空圧機器事業において、新規事業として推進してきた高圧ガス関連事業である水素圧縮装置は、特定顧客から量産契約を受注した。
■セグメント業績
なお、2018年度より報告セグメントの区分を変更、前期比は変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較している。
<船舶港湾機器事業>
同事業では、国内市場は大きな伸びはないものの、海外市場ではアジア向け新造船需要や欧州向けOEMジャイロコンパスの販売が堅調に推移した。
この結果、同事業全体として売上高は前期比92百万円(1.0%)増収の8,949百万円、営業利益は前期比294百万円(182.4%)増益の456百万円となった。
<油空圧機器事業>
同事業では、海外市場で中国の成形機需要が減少したものの、工作機械市場、建設機械市場、油圧応用装置がそれぞれ堅調に推移した。このような状況の中、新商品については、高圧ピストンポンプ PHC80D、高圧ピストンコントローラ PC2、圧力センサー ESWを市場投入した。
この結果、同事業全体として売上高は前期比211百万円(1.6%)増収の13,064百万円、営業利益は前期比118百万円(50.0%)減益の118百万円となった。
<流体機器事業>
同事業では、民需市場及び海外市場が低迷したものの、消火設備市場(前期は「その他の事業」の防災機器事業)が堅調に推移したことに加え、官需市場は、河川防災向けの新商品として投入した危機管理型水位計 MD-10の注文が計画を大幅に上回ったことから好調に推移した。
この結果、同事業全体として売上高は前期比662百万円(19.2%)増収の4,101百万円、営業利益は前期比401百万円(90.4%)増益の845百万円となった。
<防衛・通信機器事業>
同事業では、半導体メーカーの次世代プロセスの生産立ち上がりの遅れから主力の半導体製造装置用マイクロ波増幅器が低迷したものの、農業機械関連機器及び道路関連機器の需要が増加したことに加え、官需市場が堅調に推移した。このような状況の中、新商品については、農業機械用直進自動操舵補助装置 AG-GEAR3、平坦性計測解析装置 レーザー・プロファイラ LP-310を市場投入した。
この結果、同事業全体として売上高は前期比858百万円(5.3%)増収の16,909百万円、営業利益は前期比66百万円(14.3%)増益の525百万円になった。
<その他の事業>
同事業では、検査機器事業は新製品の投入により堅調に推移したほか、鉄道機器事業は役務工事が堅調であったことに加え、海外向けレール探傷車の納入や各種機器販売が好調となった。
この結果、同事業全体として売上高は前期比1,066百万円(41.0%)増収の3,667百万円、営業利益は前期比503百万円(718.3%)増益の573百万円となった。
■2020年3月期(2019年度)の見通し
我が国経済については、国内では各種政策の効果により景気は緩やかな回復基調が期待されているものの、海外では米中通商問題が与える世界経済の動向と政策に関する不確実性等、予断を許さない状況が続いている。
このような経営環境の中、次期の見通しについては、当期に比べ、全ての報告セグメントで増収になる見込みであることから、売上高は2,808百万円(6.0%)増収の49,500百万円を予想しています。然しながら、製品ミックスの変化による原価率の悪化に加え、重点方針である事業領域の拡大、グローバル展開の加速等の成長に向けた研究開発の強化等により、研究開発費及び設備投資費等が増加することから、営業利益は750百万円(30.7%)減益の1,690百万円、経常利益は890百万円(33.5%)減益の1,770百万円、親会社株主に帰属する当期純利益も616百万円(31.8%)減益の1,320百万円を予想している。
■経営方針
(1)会社の経営の基本方針
東京計器グループは、「計測、認識、制御といった人間の感覚の働きをエレクトロニクスなどの先端技術で商品化していく事業を核として社会に貢献すること」を経営理念とし、「革新的な技術の追求」、「マーケティング志向の強化」、「新たな価値の創造」、「高い品質の商品とサービスの提供」、「人材の育成」、「健全で公正な企業活動の推進」、「限りある資源の保全」、「ステークホルダーの期待と要請に応える」を経営の方針としている。
また、東京計器グループは自らの発展に止まらず、全社員がその一員であることを誇りに思えるような、社会に広く貢献する質の高い会社を目指している。このために、東京計器グループはコーポレートガバナンスを充実させ、内部統制体制を適正に整備・運用し、正しい決算を行って財務報告の信頼性を確保していく。
なお、地球環境に負荷をかけるような廃棄物は出さないという基本的な考えのもとに、環境保全と環境に優しい商品の提供に努めていく。
(2)目標とする経営指標
東京計器グループは、企業価値を高めるべく「高収益体質の実現と財務基盤の強化」を目指し、経営指標として連結売上高営業利益率及び自己資本利益率(ROE)の向上を目標に掲げていたが、連結売上高営業利益率は前期と比べ2.2ポイント増の5.2%、ROEは前期と比べ2.7ポイント増の6.8%となった。
今後については、リスク管理を強化しながら更なる事業収益の改善と財務基盤の強化に注力するとともに、資本効率の向上にも努力していきます。なお、連結売上高営業利益率及びROEについては安定して8%以上となることを目標としていく。
(3)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題
東京計器グループは2019年5月10日に開示した中期経営方針及び中期事業計画の成長戦略である「事業領域の拡大」、「グローバル化の推進」、「既存事業の継続的強化」に取り組んでいく。
この中期経営方針が目指すところは、市場のリーダーとして、技術・技能を改良・革新し、時代や社会にとって欠くことのできない独自の高付加価値な商品を創造し続けることで、「安全」と「環境」へ貢献する。そして稼ぐ力を高めながら増収・増益を積み重ね、キャッシュを増加させることで、多種多様なステークホルダーの要請と期待に応えていく。
詳しくは、5月10日に開示した、「中期経営方針及び中期事業計画について」を参照。
コメントを投稿するにはログインしてください。