㈱タダノが4月26日に発表した2019年3月期(2018年4月~2019年3月)連結業績によると、売上高は1,884 億5千1百万円(前期比108.5%)、海外売上高比率は48.5%となった。
うち日本向け売上高は、建設用クレーン・車両搭載型クレーンが増加、高所作業車が減少し、970 億6千9百万円(前期比99.5%)となった。海外向け売上高は、中東向け売上は大幅に減少したが、中東を除くすべての地域で売上が増加し、913 億8千1百万円(前期比120.0%)となった。
売上は増加したが、コストアップや製品構成の変化による売上原価率は悪化、また成長に向けた前向き投資もあり販売費及び一般管理費は増加した。結果、営業利益は158 億3千5百万円(前期比102.1%)、経常利益は156 億4百万円(前期比104.7%)となった。特別利益として6億8千8百万円の投資有価証券売却益を計上したため、親会社株主に帰属する2018年度純利益は114 億6千2百万円(前期比122.1%)となった。
なお、昨年1月19 日に公表した米国排ガス規制の緩和措置に関する自己申告については、今後、米国当局(環境保護庁・司法省)との協議が進められていく予定。協議の終了時期は見通せていないが、今後、開示が必要な事由が判明したら、適時適切に対応する。なお、現在は、最も厳しい規制に適合するエンジンを搭載した建設用クレーンのみを販売しており、北米での販売に影響は出ていないとしている。
■2018年度の経営概況
建設用クレーン関連業界は、日本では、東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設需要や復旧復興・防災減災・インフラ老朽化対策・民間建設投資等により稼働は堅調に推移した。大型ラフテレーンクレーンの需要が増加した一方で、ミニラフテレーンクレーンの排ガス規制駆け込み需要の反動減もあり、全体として需要は減少した。海外では、機種別・地域別にばらつきはあるものの、需要は回復基調となった。
このような経営環境の中、タダノグループは、国内外で引続き新モデルを投入し、販売価格の維持とストックビジネスに注力した。加えて、原価低減を推進した。また、長期目標である LE(Lifting Equipment)世界 No.1達成に向け、積極的な投資活動を行っている。「人と機械が調和し、次世代につながるスマート工場」をコンセプトに、高松市内に建設中の香西工場は、今年8月に稼働開始予定である。
昨年12 月、インドEscorts 社と、インド市場向け製品の開発・製造・販売を目的として、合弁会社(Tadano Escorts India Private Ltd.)を設立した。インド市場でのタダノ製クレーンの販売拡大のみならず、現地での設計・ものづくりによる競争力強化に取り組んでいく。
今年2月、米国Terex 社と、同社が所有するDemag ブランドのクレーン事業(本拠地ドイツ)の株式取得等に関する契約を締結した。同事業の買収により、新たにクローラクレーンをタダノグループの製品ラインナップに加えるとともに、オールテレーンクレーン事業の更なる拡充を図ることで、幅広い顧客ニーズに対応することが可能になる。なお、買収完了は今年7月を予定している。
■セグメント別の状況
(タダノ及び連結対象子会社の所在地別の売上高・営業利益で、仕向地別売上高とは異なる)
<日 本> 日本向けは、高所作業車が減少したものの、建設用クレーン・車両搭載型クレーンが増加し、売上は増加した。また、海外向けも増加し、その結果、売上高は1,515 億9百万円(前期比107.5%)、営業利益は157 億2千3百万円(前期比101.0%)となった。
<欧 州> 建設用クレーン売上は欧州域内・欧州域外が共に増加し、売上高は429 億8千7百万円(前期比116.9%)、新モデル移行や品質対応に伴うコスト増により、営業損失は11 億2千3百万円(前期は2億7千7百万円の営業損失)となった。
<米 州> 北米でのラフテレーンクレーンの需要回復が鮮明になる中、新規顧客開拓にも注力した結果、売上高は413 億6千6百万円(前期比138.6%)、営業利益は15 億2千9百万円(前期は2億4千4百万円の営業損失)となった。
<その他> 建設用クレーン需要が増加し、売上高は153 億7千万円(前期比124.2%)、営業利益は2億9千4百万円(前期は4千4百万円の営業損失)となった。
■主要品目別の状況
<建設用クレーン> 日本向け売上は、需要が減少する中、新モデルを中心とした大型機種の増販に取り組み、422 億5千万円(前期比110.7%)となった。
海外向け売上は、中東向け売上は大幅に減少したが、中東を除くすべての地域で売上が増加し、753 億6百万円(前期比123.8%)となった。
この結果、建設用クレーンの売上高は1,175 億5千6百万円(前期比118.7%)となった。
<車両搭載型クレーン> 日本向け売上は、安全装置法制化と小型トラックの排ガス規制による駆け込み需要により、186億5千8百万円(前期比103.8%)となった。
海外向け売上は、東南アジア・中東向け販売体制を強化し、20 億8百万円(前期比117.7%)となった。
この結果、車両搭載型クレーンの売上高は206 億6千7百万円(前期比105.0%)となった。
<高所作業車> インフラ点検補修用途のニーズを背景にしたレンタル業界向け売上が一巡、電力電工向け、通信業界向けも売上が減少し、高所作業車の売上高は、183 億2千万円(前期比74.2%)となった。
<その他> 部品、修理、中古車等のその他の売上高は、319 億7百万円(前期比105.2%)となった。
■2020年3月期の見通し
今後の経済見通しについては、日本では、堅調な雇用環境を背景に個人消費は底堅く推移するものの、輸出低迷や設備投資の伸び鈍化により、力強さに欠ける展開が予想される。海外では、景気回復が期待される一方、米中貿易摩擦、英国のEU 離脱問題、点在する地政学的リスク等もあり、引続き不透明な状況が懸念される。
タダノグループを取り巻く市場環境は、日本では、建設用クレーンは高稼働を維持するものの、オペレーター不足もあり需要は横ばい、小型トラック排ガス規制駆け込み需要の反動減により、車両搭載型クレーン・高所作業車は減少を見込んでいる。海外では、機種別・地域別にばらつきはあるものの、引続き回復基調と予想している。
現時点における業績予想は、売上高2,000億円(前期比6.1%増)、営業利益175億円(同10.5%増)、経常利益175億円(同12.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益120億円(同4.7%増)との見通し。
為替レートは、108 円/米ドル、125 円/ユーロを前提としている。
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