・北米・アジア・オセアニア中心に建機需要を着実に取り込む
・今期売上4%減、営業利益は15%減の予想
・「世界の現場を、ダントツでつなぐ」中期経営計画も発表
コマツが4月26日に発表した2019 年3 月期(2018 年4 月~2019 年3月)連結業績によると、売上高は2 兆7,252 億円(前期比9.0%増)となった。建設機械・車両部門では、北米やアジア・オセアニアを中心に多くの地域で需要を着実に取り込んだことから、売上げは前期を上回った。産業機械他部門では、自動車業界向けの鍛圧機械及び工作機械の販売が増加したことなどにより、売上げは前期を上回った。
利益については、各地での売上げの増加や一昨年4 月より連結に加わったコマツマイニング㈱において買収に係る一時費用の減少などがあったことにより、営業利益は3,978 億円(前期比48.2%増)となった。売上高営業利益率は前期を3.9 ポイント上回る14.6%、税引前当期純利益は3,774 億円(前期比29.4%増)、コマツ株主に帰属する当期純利益は2,564 億円(前期比30.6%増)となった。
■部門別の概況
【建設機械・車両】
建設機械・車両部門の売上高は2 兆4,789 億円(前期比8.7%増)、セグメント利益は3,653 億円(前期比33.8%増)となった。
2015 年2 月にスタートした建設現場向けソリューション事業「スマートコンストラクション」を着実に推進し、これまでに7,500 を超える現場に導入した。同事業については、昨年5 月より新サービス「EverydayDrone」を開始し、自動運航する専用ドローンと現場で高速にデータ処理ができるエッジコンピューティングを使うことで、これまで丸1 日かかっていた現場の3D 現況測量データ生成を約20 分で完了させるなど、現場の進捗管理を日々可能にした。10 月には、アジア最大級の規模を誇る国際展示会「CEATEC JAPAN 2018」に初出展し、「もっと安全で、もっと生産性の高い、もっとスマートな未来の現場」をテーマに、開発中の自律稼働建機や5G を用いた遠隔操縦技術など、「スマートコンストラクション」の新しい挑戦を紹介した。今後は、これらの技術の早期実用化へ向けた研究開発などを進め、安全と生産性を高めた「未来の現場」の実現を加速させていく。
また、今年3 月、コマツ中近東の本社敷地内に「ドバイトレーニング&デモンストレーションセンタ」を開設した。同施設は、代理店に必要な営業、サービス、運転操作など様々なトレーニングに加え、販売促進として、顧客向けの商品デモンストレーションや試乗、オペレーター向けのトレーニングなど、幅広い用途に対応している。今後、同施設を活用し、中近東・アフリカ地域における事業拡大に向けて代理店の人材育成を強化していく。
■地域別の概況
<日 本> 災害復興等によるレンタル需要の増加があったものの、一昨年9 月に施行された新排出ガス規制に伴う駆け込み需要の反動減などの影響により、売上げは前期並みとなった。
<米 州> 北米では、エネルギー関連やインフラ工事関連を中心に一般建機・鉱山機械ともに需要が引き続き好調であり、売上げは前期を上回った。
中南米では、アルゼンチンにおいて経済情勢悪化に伴い需要が減少したものの、ブラジルでの需要が増加したことなどにより、売上げは前期を上回った。
<欧州・CIS> 欧州では、主要市場であるドイツや英国、フランスを中心に需要が堅調であり、売上げは前期を上回った。
CIS では、一般建機・鉱山機械ともに需要が引き続き好調であり、売上げは前期を上回った。
<中 国> 全国的にインフラ工事関連に伴う需要が増加したものの、下期に大きく減速したことなどから、売上げは前期並みとなった。
<アジア・オセアニア> アジアでは、最大市場であるインドネシアにおいて伸び率は鈍化したものの、一般建機・鉱山機械の需要が増加したことなどから、売上げは前期を上回った。
オセアニアでは、一般建機・鉱山機械ともに需要が引き続き好調であり、売上げは前期を上回った。
<中近東・アフリカ> 中近東では、イエメンの内戦に伴う各国政府の緊縮財政の影響などにより公共工事の需要が減少したことや、トルコの通貨安の影響もあり、売上げは前期を下回った。
アフリカでは、南アフリカでの鉱山機械の需要が増加したものの、他地域での需要減少の影響などにより、売上げは前期並みとなった。
【リテールファイナンス】
リテールファイナンス部門では、前期にチリでのリース契約の中途解約に伴う中古車売上という特異要因があったものの、北米などにおいて増収となり、売上高は635 億円(前期比5.4%増)となった。
セグメント利益は、中国で2016 年度に貸倒引当金を計上した債権について回収が実現し、引当金の戻しを行ったことなどにより、175 億円(前期比35.0%増)となった。
【産業機械他】
産業機械他部門では、自動車業界向けの鍛圧機械及び工作機械の販売増加に加え、半導体市場でのエキシマレーザー関連製品の販売増加などにより、売上高は2,032 億円(前期比9.6%増)となった。セグメント利益は186 億円(前期比30.0%増)となった。
コマツ産機では、昨年12 月に新型レベラーフィーダ「SF100H-1」を発売した。当該機は、搬送能力を高めるとともに、同3 月に発売した新型サーボプレス「H2FM」との完全同期運転に対応している。プレスとレベラーフィーダが一体となって機能する構造などにより、簡易な操作で従来機比約30%の生産性向上を実現した。
■次期の見通し
コマツは、新たな3 カ年の中期経営計画「DANTOTSU Value - FORWARD Together for SustainableGrowth」を今年4 月よりスタートした。新たな3 つの成長戦略として、①イノベーションによる価値創造、②事業改革による成長戦略、③成長のための構造改革を掲げ、これら成長戦略3 本柱の考えに基づいた成長分野への重点投資を優先的に行い、需要の変動に左右されず、収益向上とESG の課題解決の好循環による持続的成長を目指す。外部環境が大きく変化する中、建設・鉱山機械の需要は中長期的には緩やかな成長が見込まれるものの、短期的にはボラティリティ(需要の変動幅)が高く推移すると予想され、2020 年3 月期の連結業績は、以下のとおり減収減益となる見通し。
建設機械・車両部門では、伝統市場※の需要は堅調なものの、中国、インドネシアでの需要の減速や円高の影響により、売上げは減少となる見通し。また、販売価格の改善に取り組むものの、物量差・地域構成差及び成長分野への重点投資による固定費の増加が見込まれることなどから、利益は減少する見通し。
リテールファイナンス部門では、増収が見込まれるものの、2018 年度に実現した中国の債権回収に伴う引当金戻し益がなくなることから、減益となる見通し。
産業機械他部門では、鍛圧機械の需要が堅調であることなどから、増収増益となる見通し。
2020年3月期連結業績は、売上高2兆6,170億円(前期比4.0%減)、営業利益3,370億円(同15.3%減)、税引前当期純利益3,170億円(同16.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,150億円(同16.2%減)の見通し。
業績見通しにおける為替レートは、1 米ドル=105 円、1 ユーロ=119 円、1 人民元=15.6 円を前提としている。
※コマツにおける「市場」の位置づけ
伝統市場:日本、北米、欧州/戦略市場:中国、中南米、アジア、オセアニア、アフリカ、中近東、CIS
2019年度見通しと中期経営計画については
→ 2018年度決算説明会資料(中期経営計画含む、55ページ)
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