オークマ、2019年3月期売上は16.3%増の2,184億円、今期見通しは5.1%減の2,010億円

   オークマが4月26日に発表した2019年3月期(2018年4月~2019年3月)連結業績によると、受注額は2,184億90百万円(前期比5.5%増)、連結売上高は2,117億32百万円(同16.3%増)、営業利益は275億75百万円(同22.6%増)、経常利益は281億86百万円(同24.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は185億21百万円(同30.2%増)となった。

 オークマ2019年3月期データ

■経営成績等の概況

 工作機械の需要動向は、米国市場は大企業からジョブショップ(中・小規模加工業者)まで自動車や航空機を中心に、幅広い業種で活発な設備投資が続いた。欧州市場は、一般機械や自動車等からの需要が堅調に推移したが、年度後半には減速感が見られた。中国市場は、第2四半期以降、設備投資は様子見の動きが強まり、需要は大きく減少した。国内市場は、自動車や半導体製造装置、ロボット、建設機械、減速機等を中心に非常に好調な需要が続いたが、年度後半は、半導体製造装置、ロボットおよびその減速機関連の設備投資が大きく減少に転じた。

 このような経営環境の下、オークマグループはAI(知能化技術)を搭載したスマートマシンの提供や、生産性向上に寄与するスマートマニュファクチャリング技術・製品の提案を進め、受注・売上・収益の拡大に努めた。

■2018年度の取り組み

<2018年度の営業戦略>

 中国国際工作機械工具展覧会「CIMES2018(北京、2018年6月開催)」、国際工作機械見本市「IMTS2018(米国シカゴ、2018年9月開催)」のほか、世界各地で開催された展示会に積極的に出展し、オークマブランドの浸透と拡販に努めた。

 2018年11月に開催された日本国際工作機械見本市「JIMTOF2018」では、オークマ独自の知能化技術、自社開発の革新的なロボットを組み込んだスマートマシンを出品すると共に、IoTを駆使し工場全体の最適化を図るスマートマニュファクチャリングを提案し、自動化、無人化、高効率生産という市場ニーズへの提案を進めた。

 アジア・新興国市場では、顧客拡大を図るため、インドではグルガオンテクニカルセンターを開設し、中国では山東省に済南テクニカルセンターを開設した。韓国では仁川市に新社屋を建設して販売・サービス体制の強化を図った。また台湾においては、生産子会社である大同大隈股份有限公司の新工場に隣接するテクニカルセンターを設け、販売強化を図った。

<2018年度の技術戦略>

 生産性向上に貢献する5軸制御マシニングセンタや複合加工機等のスマートマシン、そして自動化技術の開発強化を図った。

 5面加工門形マシニングセンタ「MCR-S(Super)」では、オークマ独自のNC制御技術「Hyper-Surface」を搭載し、金型加工に求められる高速・高精度・高品位加工の更なる高度化を実現した。省スペースで多品種少量生産から量産ラインまで柔軟なシステム構築を可能とする新基軸の5軸制御立形マシニングセンタ「MU-S600V」は、日刊工業新聞社主催の「第48回機械工業デザイン賞最優秀賞(経済産業大臣賞)」を受賞した。

 労働力不足により自動化、無人化の潮流が高まる中、中小企業においても導入が容易な次世代ロボットシステム「ARMROID」を開発し、「JIMTOF2018」に出品した。

 「ARMROID」は、工作機械に内蔵するロボットシステムであり、部品加工の自動化と生産性向上を図る革新的なロボットシステムとして、展示会等において高い評価を得た。「ARMROID」は、日刊工業新聞社主催の「2018年十大新製品賞本賞」を受賞した。

<2018年度の製造戦略>

 部材や鋳物の調達問題に苦しみ、好調な受注に応えきれなかった面があるが、諸施策を展開し、コストダウンの推進、売上確保に全力を傾注した。本社の最新鋭工場DS2(Dream Site 2)による高効率生産、また新生産管理システム、新物流管理システムの全工場への適用により、生産効率の向上、リードタイムの短縮を図りした。DS2は多品種少量、変種変量での高効率生産を実現するスマートファクトリーとして高い評価を受け、一般社団法人日本能率協会主催の「2018年GOOD FACTORY賞ものづくりプロセス革新賞」を受賞した。

 2018年7月には、DS1、DS2でノウハウを積み上げたスマートファクトリーを、マシニングセンタを生産している可児工場に展開するため、立形・横形マシニングセンタの部品加工を行う可児第6工場(K6)の建設に着手した。

 海外生産においては、台湾の生産子会社である大同大隈股份有限公司の新工場が完成し、グローバル市場で受注拡大が進む「GENOSシリーズ」の旋盤及び立形マシニングセンタの増産を図った。

■2020年3月の見通し

 今後の世界経済の見通しについては、米中貿易戦争に対する懸念が続くものの、総じて緩やかな拡大基調を維持すると予想される。

 米国経済は、米中貿易戦争の影響は限定的なものに留まり、良好な雇用情勢や緩和的な金融・財政政策の下、成長のペースは若干鈍化するものの、堅調に推移するものと見込まれる。欧州経済は、BREXITの下押し圧力があるものの、中国経済の持ち直しによる輸出増が見込まれ、緩やかな拡大が期待される。中国経済は、米中経済対立の緩和や金融・財政政策等により景気は回復に向かうものと見込まれる。その他のアジア新興諸国の経済は、回復が続くと期待される。国内経済は、堅調な米国経済や中国経済の持ち直しを背景に、緩やかな拡大が続くものと予想される。

 このような経済情勢の下、構造的な労働力不足への対応として、世界的に自動化、無人化の設備投資は着実に進み、また競争力強化や成長分野への投資、次世代技術の研究開発投資に対する意欲は強く、工作機械市況は底堅く推移すると予想される。

 米国市場では、米中貿易戦争や保護主義的な政策を懸念し、設備投資を抑制する動きが一部で予想されるが、好調な経済を背景に、幅広い産業から工作機械の需要が見込まれる。欧州市場では、航空機産業等、好調業種における投資意欲は強く、また短期的な景気動向に関わらず、競争力強化に向けた企業の合理化投資が見込まれる。中国市場では、経済の回復に伴い工作機械需要の回復が期待される。国内市場では、力強さを欠く世界経済が設備投資に影響を及ぼすものの、自動化・無人化への投資が牽引し、工作機械の需要は底堅く推移すると予想される。

 このような経営環境の下、オークマグループは生産性向上を図る技術・製品の提供により、「総合ものづくりサービス企業」を目指していく。

<2019年度の営業戦略>

 中国、インド等に開設した新たな販売・サービス拠点を活用し、オークマブランドの浸透と顧客基盤の拡大を図っていく。また、国内および海外の展示会に積極的に参加し、顧客の付加価値向上に寄与するオークマの技術・製品の優位性を強力にアピールし、販売拡大を図っていく。

<2019年度の技術戦略>

 独自の知能化技術を搭載したスマートマシンの開発を更に進め、また、IoT、AIを活用したスマートマニュファクチャリング技術の強化を図り、ものづくりサービスの提供を進めていく。

 オークマの新開発ロボット「ARMROID」のシリーズ化を強力に進め、自動化、無人化のニーズに幅広く応え、またAI技術を活かしたIoTソリューション「Connect Plan」の進化を図っていく。

<2019年度の製造戦略>

 国内の可児工場では、立形・横形マシニングセンタの部品加工を行う新たなスマートファクトリー可児第6工場(K6)の稼働を開始する。K6の稼働により、可児工場にて立形・横形・門形マシニングセンタの一貫生産を開始し、高効率生産を実現していく。海外では、台湾の子会社において新たな工場の建設に着手し、世界的に需要が高まっているGENOSシリーズのNC旋盤、マシニングセンタの更なる生産能力の増強を図る。

 2020年3月期の連結業績予想については、売上高2,010億円(前期比5.1%減)、営業利益240億円(同13.0%減)、経常利益245億円(同13.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益163億円(同12.0%減)の見通し。

 オークマの2019年3月期決算短信

 決算発表(参考資料)