川崎重工、2019年3月期売上は1兆5,947億円、今期1兆7,000億円見込む

 川崎重工業が4月25日に発表した2019年3月期(2018年4月~2019年3月)連結業績によると、受注高は前期比220億円減少の1兆5,859億円、売上高は前期比205億円増収の1兆5,947億円、営業利益は前期比80億円増益の640億円、経常利益は前期比53億円減益の378億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比14億円減益の274億円となった。また、ROIC※は4.5%、ROEは5.8%となった。

※ROIC = EBIT(税引前利益+ 支払利息) ÷ 投下資本(有利子負債+ 自己資本)

■2018年度の経営成績概況

 世界経済は、実体経済が好調な米国を中心に緩やかな成長が継続する一方、一部の新興国・資源国経済の減速などにより、総体的に勢いを欠く状況となっている。これらに加え、米中貿易摩擦に起因する企業業績の悪化が顕在化しつつあることや、英国のEUからの離脱が延期となったものの、合意なき離脱の可能性は残っていることなどから、今後の実体経済の先行きに対する不透明感が続いており、引き続き世界景気の下振れリスクに十分な注視が必要である。

 国内経済は、設備投資の緩やかな増加や企業収益の改善などの影響を受け、緩やかに回復している。今後も、総じて緩やかな成長が期待されるが、米国をはじめとする各国の経済政策などにより円高に振れる可能性もあることから、引き続き為替相場に対しては注視が必要である。

 このような経営環境の中で、2018年度における川崎重工グループの連結受注高は、船舶海洋事業などで増加となったものの、車両事業、航空宇宙システム事業での減少により、全体として減少となった。

 連結売上高は、車両事業などでの減収があったものの、モーターサイクル&エンジン事業や精密機械・ロボット事業などでの増収により、全体として増収となった。利益面に関しては、営業利益は船舶海洋事業での改善やエネルギー・環境プラント事業での増益などにより、全体で増益となった。経常利益は営業利益の増益があったものの、民間航空エンジンの運航上の問題に係る負担金などにより、減益となった。親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の減益などにより、減益となった。

川崎重工2019年3月期セグメントデータ

■部門別概況

<航空宇宙システム事業>

 航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては、厳しい防衛予算の中で一定程度の需要が存在している。民間航空機については旅客数の増加に伴って機体・エンジンともに需要が増加している。

 このような経営環境の中で、連結受注高は、民間航空エンジン分担製造品が増加したものの、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品が減少したことにより、前期に比べ672億円減少の4,316億円となった。

 連結売上高は、民間航空エンジン分担製造品が増加したものの、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品が減少したことにより、前期に比べ55億円減収の4,639億円となった。

 営業利益は、民間航空機向け分担製造品の収益性改善などにより、前期に比べ17億円増益の326億円となった。

<エネルギー・環境プラント事業>

 エネルギー・環境プラント事業を取り巻く経営環境は、海外では資源開発や石油・天然ガス関連投資が回復基調にあることに加え、アジアではエネルギーインフラ整備需要が継続している。また環境・省エネルギー投資意欲の向上などにより、分散型電源の需要が増加している。国内ではごみ焼却プラントや産業機械において老朽化設備等の更新需要が継続している。一方で分散型電源は、潜在的需要は大きいものの、電力自由化を睨んで投資計画が若干遅れ気味になっている。

 このような経営環境の中で、連結受注高は、国内向けコンバインドサイクル発電プラントや国内向けLNGタンクを受注したことなどにより、前期に比べ398億円増加の2,635億円となった。

 連結売上高は、国内向けごみ処理施設や海外向け化学プラントの工事量減少があったものの、エネルギー事業の工事量増加などにより、前期に比べ14億円増収の2,530億円となった。

 営業利益は、エネルギー事業での採算改善などにより、前期に比べ39億円増益の116億円となった。

<精密機械・ロボット事業>

 精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、建設機械市場向けでは、中国市場におけるショベル販売競争は日々激しくなってきており、中国市場でシェアを落としている外資系建機メーカーを中心に中国マーケット(特に中小型)の先行きに対する懸念・不透明感の声は上がっているものの、未だ川崎重工の生産能力を超える需要があり、増産対応を進めている。中国市場の状況については引続き注視している。

 ロボット市場向けでは、米中貿易摩擦の影響による中国市場での設備投資延期や半導体メーカーの投資先送りにより足元の市況は悪化しており、海外市場は今後暫くの間は不安定な状況が続くと予想されますが、年度後半には半導体投資が再開され需要は回復に向かうと見られ、国内市場においては、人共存分野など産業分野全般において需要は着実に拡大していくとみている。

 このような経営環境の中で、連結受注高は、半導体向けロボットが減少したものの、建設機械市場向け油圧機器が増加したことにより、前期に比べ153億円増加の2,224億円となった。

 連結売上高は、半導体向けロボットが減少したものの、建設機械市場向け油圧機器が増加したことにより、前期に比べ230億円増収の2,220億円となった。

 営業利益は、売上は増加したものの、増産対応費用や研究開発費等の販管費の増加などにより、前期並みの213億円となった。

<船舶海洋事業>

 船舶海洋事業を取り巻く経営環境は、新造船価の緩やかな回復基調や環境規制強化に伴うガス燃料推進船需要の顕在化がある一方で、LNG開発プロジェクトの遅れによるLNG運搬船需要の後ろ倒し、韓国政府による造船業支援政策の継続などにより、依然として厳しい状況にある。

 このような経営環境の中で、連結受注高は、防衛省向け潜水艦を受注したことなどにより、オフショア作業船にかかる造船契約の合意解除を行った前期に比べ764億円増加の811億円となった。

 連結売上高は、LNG運搬船とLPG運搬船の構成変動等により、前期に比べ166億円減収の789億円となった。

 営業損益は、減収があったものの、建造コストの改善などにより、前期に比べ49億円改善して10億円の営業利益となった。

<車両事業>

 車両事業を取り巻く経営環境は、国内については老朽化車両の更新需要が安定的に存在している。海外については、米国では注力市場であるニューヨーク地区をはじめ新造・更新需要が増加しており、またアジアでは日本政府によるインフラ輸出促進に伴って新興国での需要が増加している。

 このような経営環境の中で、連結受注高は、ニューヨーク・ニュージャージー港湾局向け通勤電車などを受注したものの、ニューヨーク市交通局向け新型地下鉄電車などを受注した前期に比べ1,210億円減少の1,360億円となった。

 連結売上高は、米国やアジアなど海外向けが減少したことなどにより、前期に比べ170億円減収の1,246億円となった。

 営業損益は、前期に続き米国向け案件における採算の悪化などにより、前期に比べ13億円悪化して137億円の営業損失となった。

<モーターサイクル&エンジン事業>

 モーターサイクル&エンジン事業を取り巻く経営環境は、二輪車では主に欧州において市場の緩やかな成長が持続しており、新興国向けでも市場の底打ちの兆しが見えつつある。また、四輪車では主に北米において市場が安定した成長を続けており、汎用エンジン市場も堅調に推移している。

 このような経営環境の中で、連結売上高は、先進国向け二輪車や四輪車の増加により、前期に比べ251億円増収の3,568億円となった。

 営業利益は、売上は増加したものの、米国における鋼材等資材価格の上昇、新興国通貨安の影響などにより、前期に比べ8億円減益の143億円となった。

<その他事業>

 連結売上高は、前期に比べ100億円増収の951億円。営業利益は、前期に比べ4億円減益の25億円となった。

■2020年3月期の見通し

 2020年3月期の連結業績については、連結売上高は、航空宇宙システム事業、車両事業、精密機械・ロボット事業等で増加が見込まれることから、前期比1,053億円増の1兆7,000億円となる見通しである。

 利益面では、前期大きな損失を計上した車両事業の回復、精密機械・ロボット事業における売上の増加に伴う利益増加等により、連結営業利益720億円、連結経常利益610億円、親会社株主に帰属する当期純利益380億円、またROICは6.7%、ROEは7.8%となる見通しである。連結受注高は前期比1,141億円増の1兆7,000億円となる見通しである。

 なお、業績見通しにおける為替レートは、1ドル=110円、1ユーロ=125円を前提としている。

 川崎重工業の2019年3月期決算短信

 2018年度決算説明資料

 経営概況説明資料