日立建機が4月24日に発表した2019年3月期(2018年4月~2019年3月)連結業績によると、売上収益は、特に北米・アジア大洋州・欧州で新車販売及び部品サービスを中心とするバリューチェーンの双方で増加したことなどにより、1兆337億3百万円(前年同期増減率7.8%)となった。
利益項目については、売上原価率の低減を図り、部品サービスとマイニング事業の貢献により、調整後営業利益は1,168億4千1百万円(同24.9%)、営業利益は1,022億9千6百万円(同6.9%)、親会社株主に帰属する当期利益は685億4千2百万円(同14.2%)と大幅に向上した。
■各セグメントの業績
①建設機械ビジネス
油圧ショベル需要は、日本・中近東・アフリカを除く各地域で前年同期を上回った。また、マイニング機械需要は鉱山会社の投資増加を受け、前年同期を上回っている。
2018年度の売上収益は、コンストラクションとマイニングの新車販売と、部品サービスを中心とするバリューチェーンの双方で伸びた。地域としては日本・オセアニア・北米・アジアで売上が伸び、ユーロ安や新興国通貨安による為替影響を受けたものの、9,377億2千7百万円(前年同期増減率8.2%)となった。
調整後営業利益は、生産増加に伴う費用や研究開発費などの間接費が増加したものの、新車販売の増加に加え、部品サービスやレンタルなどが貢献し、1,109億9千2百万円(同21.8%)となった。
②ソリューションビジネス
2016年度に連結子会社化した、主としてマイニング設備及び機械のアフターセールスにおける部品サービス事業を行うBradken社とサービスソリューションを提供するH-E Parts社で構成されている。
2018年度の売上収益は、米州や欧州・ロシアCIS等でマイニング機械向け売上が堅調に推移し、968億4千7百万円(前年同期増減率4.5%)、調整後営業利益は、58億4千9百万円(同141.2%)となった。
なお、上記、①②の売上収益については、セグメント間調整前の数値である。
■2018年度の状況と取り組み
日立建機グループは、2017年度からの中期経営計画「CONNECT TOGETHER 2019」に掲げる経営施策を推進している。顧客の事業課題である「安全性向上」「生産性向上」「ライフサイクルコスト(燃料費・維持費・修理費等を含む費用)低減」に繋がるICT・IoTを活用した解決策を「Solution Linkage」と位置付け、その開発・提供を推進している。
また、従来からの部品サービス事業に加え、2016年度に連結子会社化したH-E Parts社、Bradken社のマイニング設備及び機械のアフターセールスにおける部品サービス事業強化の取り組み、ACME社への出資を通じた北米レンタル事業への本格参入に続き、イギリスでもレンタル事業会社のSynergy Hire社を2019年1月に設立するなど、新車販売以外での収益拡大を図るべくバリューチェーン(新車販売以外の事業である部品サービス、ソリューションビジネス、レンタル等の事業)の深化を推進中である。
部品サービス事業の中でも「ConSite」では、建設機械業界初となる、センサによりオイルの状態を遠隔で検知しエンジンや油圧機器の故障予知を行う「ConSite OIL」等をメニューに加え、顧客のライフサイクルコストの低減に寄与している。
ICT・IoTを活用した解決策の提供推進としては、日立建機として初めて海外市場におけるICT油圧ショベルの市場投入を決定し、日立建機ヨーロッパ社のアムステルダム工場内にICT施工が体験できるICTデモサイトを開設する等、日本に加えて欧州地域でもICT施工の普及に努めている。
オセアニアにおいては、さらなるマイニング機械や建設機械の販売拡充と部品・サービス事業拡大のため、2019年4月より同地域の事業を統括する新会社を設立することとした。
環境規制の厳しい欧州においては、EV建機市場の立ち上がりを見込み、建設機械の電動化および応用開発製品の開発を行うためにドイツの代理店と設立した新会社EAC社において、8tクラスと2tクラスの電動ショベルのコンセプト機を開発した。
マイニング事業については、日立グループと力を合わせて高度な車体安定化制御を実現したリジッドダンプトラックAC-3シリーズの拡販に努めるとともに、鉱山運営の効率化に貢献するマイニング機械の運行管理システムの提供や自律運転技術(AHS)の開発に積極的に取り組んでおり、現在、オーストラリアのホワイトヘイブン社と協業を進めている。
グローバルな製品開発力と競争力の強化に向けては、昨年9月に発表した通り国内主要開発・生産拠点の大幅な再編を行い、高効率で市場変動に強い生産体制を構築すると同時に将来の設備投資の適正化や固定費削減等を実現し、変化に強い高収益体質の確立に取り組んでいる。
その取組みの一環として、日立建機の完全子会社でありホイールローダの開発・生産を担う株式会社KCMを2019年4月1日付けで吸収合併した。
また、茨城県内5工場での取り組みが評価され、平成30年度「省エネ大賞」(主催:一般財団法人省エネルギーセンター)省エネ事例部門の「省エネルギーセンター会長賞」を受賞した。
■2020年3月期の見通し
2020年3月期の建設機械ビジネスについて、油圧ショベルの需要見通しは、世界全体で2019年3月期需要を若干下回るものと想定している。地域別には、日本は増加傾向となるものの、中国や西欧、アジア等で減少すると見ている。
一方、マイニング機械は、大規模鉱山を所有するマイニング会社の安定した投資継続が見込まれ、特に超大型のダンプトラックや油圧ショベルの需要は増加傾向が続く見通しである。ソリューションビジネスも、主たる顧客であるマイニング会社の順調な資源生産に伴う機械・設備の稼働増が見込まれる。
このような状況を踏まえ、日立建機グループでは、部品サービスを中心としたバリューチェーンの拡大や、マイニング事業の強化を通じて、顧客の課題に対する最適な解決策を提供することで競争力の強化を図るとともに、引き続き、原価低減、たな卸資産の適正化を図り、経営効率の向上を推進していく。
2020年3月期連結業績予想(2019年4月~2020年3月)については、米中経済摩擦や英国のEU離脱等のさまざまな懸念材料を踏まえて下記の通りとした。
売上収益9,500億円(前期比8.1%減)、営業利益860億円(同26.4%減)、税引前当期利益800億円(同22.1%減)、親会社株主に帰属する当期利益480億円(同29.9%減)。
業績見通しの前提として、需要は前年度を若干下回る想定とし、為替レートについては日立建機予想変動レンジ下限の米ドル100円、ユーロ110円、人民元15.0円、豪ドル77円を想定している。
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