・期後半の中国IT関係の需要減少が影響
ファナックが4月24日に発表した2019年3月期(2018年4月~2019年3月)連結業績によると、売上高は6,355 億68 百万円(前期比12.5%減)、経常利益1,834 億59 百万円(前期比26.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,541 億63 百万円(前期比15.3%減)となった。なお、特別利益として厚生年金基金代行返上益250 億81 百万円を計上した。
なお、当期(2018年度)において、製造現場のダウンタイムをゼロにする実用的なIoT商品「ZDT(ゼロダウンタイム)」が、「第8 回ロボット大賞 経済産業大臣賞/総務大臣賞」を受賞した。また、安定した超精密加工を実現する超精密加工機「ファナック ロボナノ α-NMiA」が「2018 年日刊工業新聞十大新製品賞 本賞」および「2018 年日経優秀製品・サービス賞 最優秀賞 日経産業新聞賞」を受賞した。
■2018年度の事業環境と取り組み
2018年度におけるファナックグループを取り巻く事業環境については、期の初めは需要が概ね堅調に推移したものの、米中貿易摩擦の影響と前年度活発だった中国のIT 関係の一時的な需要がなくなったことなどから、期の後半を中心に極めて厳しい状況となった。
このようななかファナックグループは、「one FANUC」、「壊れない」「壊れる前に知らせる」「壊れてもすぐ直せる」および「サービス ファースト」をスローガンに掲げ、ファナック商品およびサービスを通じて、信頼性が高く効率的・先進的な生産体制を顧客が安心して構築・維持できるようにするための取り組みをグループ一丸となって推進した。またIoT への対応として、様々な企業が参加できるオープンプラットフォームであるFIELD system (FANUC Intelligent Edge Link and Drive system) の機能拡張およびアプリケーション(パートナー企業製を含む)の充実を図り、FIELD system の普及に努めるとともに、AI 技術のファナック商品への適用を進めた。
■部門別の状況
<FA 部門>
CNC システムの主要顧客である工作機械業界の需要は、国内、欧州で高い水準が続き、インドも堅調に推移した。しかしながら、米中貿易摩擦の影響により中国、台湾において期の途中から需要が急激に落ち込んだほか、韓国も内需の減速を受け低調に推移した。これらの結果、ファナックグループのCNC システムの売上高は前年度に比べ減少した。
レーザについては、国内、海外において引き続きファイバレーザ発振器の拡販に努めた。
FA 部門の連結売上高は、2,110 億88 百万円(前期比5.0%減)、全連結売上高に対する構成比は33.2%となった。
<ロボット部門>
ロボット部門については、国内および欧州で堅調に推移したものの、米州の自動車産業において設備投資の谷間が続いたほか、中国で特に一般産業向けが弱い動きとなった。これらの結果、ロボット部門全体の売上高は前年度に比べ減少した。
ロボット部門の連結売上高は、2,175 億26 百万円(前期比4.5%減)、全連結売上高に対する構成比は34.2%となった。
<ロボマシン部門>
ロボドリル(小型切削加工機)は、前年度活発だった中国のIT関係の一時的需要がなくなったため、大きく減少した。しかし、自動車部品などIT関係以外の市場では総じて堅調で、特に国内、欧州、インドで販売が伸びた。ロボショット(電動射出成形機)については、前年に引き続き堅調に売上が推移したが、ロボカット(ワイヤカット放電加工機)はやや減少した。
ロボマシン部門の連結売上高は、1,150億56百万円(前期比39.5%減)、全連結売上高に対する構成比は18.1%となった。
<サービス部門>
サービスについては、「サービス ファースト」のスローガンのもと、サービス体制の強化、サービス技術の向上、サービスツールの充実、IT 技術の積極的な導入による効率アップなどを進めた。世界中に263 ヶ所のサービス拠点を置き、108 ヶ国をカバーする体制を構築し、顧客の工場でのダウンタイムを最小限にするための迅速な保守サービス活動を行っている。(注:サービス拠点と対象国数は2019 年3 月末現在)
サービス部門の連結売上高は、918 億98 百万円(前期比6.4%増)、全連結売上高に対する構成比は14.5%となった。
■2020年3月期の見通し
IT 関係の一時的需要が引き続き見込めない状況が続くことに加え、国家間等の貿易摩擦の影響を含む各国の関税政策や為替動向などの様々な不透明な要因から、総じて予断を許さない状況が続くものと思われる。
2020年3月期の業績見通しは、売上高5,369億円(前期比15.5%減)、営業利益757億円(同53.6%減)、経常利益847億円(同53.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益623億円(同59.6%減)。 為替レートは、平均100円/ドル、115円/ユーロを前提としている。
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