●年頭所感 日本産業車両協会 大 西 朗会長

 明けましておめでとうございます。平成最後の年となる今年の年頭にあたり、新年のご挨拶を申し上げます。

 我が国の経済状況は、昨年7~9月期の実質GDPが2四半期ぶりにマイナスとなり、世界経済の先行き不透明感への懸念も出ておりますが、産業車両の国内生産額については増加傾向が続いており、1~9月の累計で7.6%増加、そのうちフォークリフトは16.2%増加で特に好調です。世界のフォークリフト市場も好調で、同じく1~9月までの累計で13.1%増加と、過去最高記録を更新する勢いです。

 本会は昨年6月に創立70周年を迎え、業界の動向は今のところはこのように堅調に推移しておりますが、取り巻く環境は大きく変化しております。

 産業車両は、工場や物流センター、倉庫、港といった物流における結節空間において荷役・搬送に活用されておりますが、トラックドライバーだけではなく、こうした物流の現場でも労働力不足に悩まされており、10月の陸上荷役・運搬作業員の有効求人倍率は5.79倍と、全体平均の1.66倍を大きく上回って、作業の効率化や自動化に対する要望、期待がますます高まっております。

 私どもとしては、産業車両の提供にとどまらず、物流の高度化に資するソリューションをお客様に提案できるよう、技術力や構想力を高めて、問題の解決を図っていくことが必要です。また、こうした取り組みに加えて、今後は日本が目指すソサエティ5.0の実現にも貢献していかなければならないと考えております。

 このような変化の年における協会の活動について、いくつかご紹介いたします。

 私どもは平成26年度に策定した「産業車両(フォークリフト)産業戦略」で掲げた、物流の効率化、安全向上、環境負荷の低減に貢献する、信頼性の高い製品、サービスによって、産業車両における“日本ブランド”を確立し、世界ナンバー1であり続けるとの目標の下、様々な事業を進めておりますが、まず、物流の効率化というテーマでは、物流分野においても、ロボットやIoTを活用した自動化への流れが強く広くなっている中で、関心や期待が高まっている無人搬送車システムに関する取り組みを行なっています。ISOにおける世界初となる無人搬送車システムの安全規格の制定審議に積極的に参画すると共に、国内でも無人搬送車システムの用語に関するJIS規格の改正原案を作成し、まもなく経済産業省から発行される予定です。

 この規格には新たな機種や技術に関する用語を多数追加しており、今後無人搬送車の導入を検討されるお客様への情報提供を図るためのガイドブックの作成においても活用してまいります。無人搬送車はモノの搬送や荷役の自動化、省力化の大きな武器となりますが、一方で車両タイプや誘導方式といった特徴も多様で、目的に合致した無人搬送車を導入する際に参考となるガイドブックにより、お客様のニーズへの対応を業界としてもサポートできればと考えております。

 次に安全向上という視点では、国際物流総合展におきまして、多くの会員企業に最新の安全機能のご紹介をいただきました。こうした新技術による安全向上と併せて本会ではお客様への安全作業の普及啓発もいっそう強化して、JIVA Safety Act~フォークリフト事故ゼロを目指して~という活動を進めてまいります。また、新たに「フォークリフト安全の日(仮称)」を設ける計画もしております。協会をあげてフォークリフトによる事故の防止に努めてまいります。

 次に環境負荷の低減に関しましては、平成28年秋に燃料電池式のフォークリフトが市場投入されましたが、平成29年12月に出された政府の水素基本戦略でも、燃料電池式フォークリフトの普及拡大に向けた施策が掲げられました。本会も安全規格の策定や規制緩和等への取り組みを進めており、今後も水素社会の実現に向け、政府の施策にも協力しながら、よりいっそうの活動を展開してまいります。

 また、低炭素製品やサービス等の普及による環境貢献の見える化を目指すGVC(グローバルバリューチェーン)貢献を政府で推進されておりますが、本会でもフォークリフトを貢献事例に追加し、エネルギーの変換による低炭素化への貢献を広くお伝えしてまいります。

 国際交流事業につきましては、毎年、欧州、アメリカそして中国の産業車両関係団体と協力、アライアンス業界首脳会議を持ち回りで開催しておりますが、昨年は9月にベルギーのアントワープで21回目の会議が開催されました。世界の情勢や貿易を巡っては、Brexitや関税引き上げの応酬といった保護貿易の高まり等の懸念材料がありますが、アライアンス会議の場では、自由で公正な貿易こそ、世界の産業車両業界の健全な発展に必要であるとの認識で一致しました。今年も9月にアメリカ、サンディエゴで開催を予定しており、更なる交流をはかってまいります。

 以上、私ども協会の活動の一環をご紹介させていただきました。

 最後になりますが、先ほどご紹介したように日本産業車両協会は70周年の節目を超えて、次のステップに進んでおります。大きな変化の時代にあたり、製品の提供からソリューションの提案へという業界の再定義化を図りながら、物流の発展に貢献してまいりたいと考えております。会員の皆様のご協力ご支援をよろしくお願い申し上げます。

 そして経済産業省、国土交通省、環境省、厚生労働省をはじめとする関係御当局におかれましても、協会の活動に関しまして、より一層のご指導ご支援を賜わりますよう、お願い申し上げます。

 本年が皆様にとって素晴らしい1年となりますよう心より祈念いたしまして、年頭のご挨拶とさせて頂きます。

 日本産業車両協会

 平成31年の会長年頭挨拶