東京工業大学、災害対応ロボット、パワーロボット用の革新的油圧アクチュエータを開発

・ImPACT研究成果の実用化を推進する大学発ベンチャーを設立

 東京工業大学は12月26日、工学院 機械系の鈴森康一教授らが災害現場など厳しい環境でも動作するタフな油圧駆動型ロボット用アクチュエータ(力を生み出す装置)を開発し、その実用化の推進に向けて東工大発ベンチャー「株式会社H-MUSCLE(エイチマスル)」を設立したと発表した。H-MUSCLEでは、商品のサンプル出荷を2019年2月より開始する。

 現在のロボットの大部分は電気モータで駆動するが、大出力で、衝撃に強く、悪環境でも動作するロボットの駆動には油圧アクチュエータが適している。しかし、パワーショベルなど一般産業機械用に開発された油圧アクチュエータは、ロボット用としては大きくて重すぎるうえ、滑らかな動きや力の制御には適していなかった。

 今回開発した油圧アクチュエータは、こうした課題の解決を目指したもので、従来の電動モータに比べると格段に大きなパワーと耐衝撃・耐環境性を備えるとともに、従来の油圧アクチュエータに比べると、小型、高出力、滑らかな制御性を備えている。この油圧アクチュエータは、「大きなパワーと頑丈な身体」、「良好な制御性」を兼ね備え、災害現場など過酷な環境でもタフに優しく仕事をこなすロボットの実現の道を拓くものという。

 今回の成果は内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)タフ・ロボティクス・チャレンジouterによるもので、東京工業大学、JPN㈱ブリヂストンKYBに加え他大学と油圧機器関連企業が参加して、2014年より、タフなロボット用の油圧アクチュエータの研究開発を進めてきた。このImPACTの成果の実用化を促進するため、H-MUSCLEでは国内メーカーに油圧シリンダと油圧モータのサンプル出荷を開始し、今後販売するアクチュエータの種類を拡大するとともに、用途開拓を進める計画。

■開発の背景

 ImPACT「タフ・ロボティクス・チャレンジ」(2014-2018年度、プログラム・マネージャー 田所諭東北大学教授)では、極限の災害現場でもタフに動けるロボットの実現を目指して研究を進めてきた。その一環でロボットに特化した油圧アクチュエータとそのロボット応用に関する研究テーマが設定され、東京工業大学工学院の鈴森康一教授(ロボット工学、アクチュエータ工学)がリーダーとなり、東京工業大学、岡山大学、立命館大学、JPN、㈱ブリヂストン、KYBが参加、さらに専門性の高い技術を有する複数の企業の協力を得て、従来にない、小型、軽量、大出力、低摺動の油圧ロボット用アクチュエータの開発に成功した。

■㈱H-MUSCLEの現状と今後の展開

 H-MUSCLEは研究成果の社会展開を目的として2018年10月17日に設立した。2018年11月には東京工業大学発ベンチャーの称号を授与された。ImPACTのプログラムでは、油圧シリンダ、油圧モータのほか、油圧人工筋肉、油圧ポンプ、細径油圧ホース、小型油圧継手、小型制御バルブ、等、ロボットに適した小型、軽量、高性能の新しい油圧アクチュエータとその周辺機器を開発してきたが、このうちまず、油圧シリンダと油圧モータを対象として出荷を始める。

 H-MUSCLEでは、顧客企業、東京工業大学、製造委託会社等と協力して、油圧アクチュエータの設計、開発、技術コンサルティング、用途開拓を進める。油圧シリンダとモータの詳細設計、製造は、ImPACTで開発にあたったJPN(東京都大田区)に業務委託する。今後、ImPACTで共同開発を行った企業各社の協力を求め、随時対象とする製品、技術を広げていく予定。

 小型、軽量、低摺動を特徴とするH-MUSCLEの油圧アクチュエータは、ロボット以外にも様々な用途の可能性があると考えている。ロボット以外の用途開拓についても積極的に取り組む計画。

<H-MUSCLEの会社概要>

社名:株式会社H-MUSCLE(エイチマスル)

設立日:2018年10月17日

所在地 :東京都大田区

事業内容:油圧コンポーネントの設計、製造、販売、技術コンサルティング、研究開発

役員:

 代表取締役 鈴森康一(東京工業大学 工学院 教授)

 取締役 難波江裕之(東京工業大学 工学院 助教)

 取締役 日沖清弘

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