日立、ABBのパワーグリッド事業を約7,140億円で買収-エネルギーソリューション事業を強化

 ㈱日立製作所は12月17日、ABB Ltd(本社:スイス連邦チューリヒ/以下、ABB 社)のパワーグリッド事業を買収することを決定し、ABB 社との間で買収に関する契約を締結したと発表した。日立は、2020 年前半をめどに、ABB 社から分社されるパワーグリッド事業会社に80.1%の出資を行うことで、同社を連結子会社化し、さらに、新会社発足から4 年目以降に、完全子会社とする予定。取得総額は約7,140億円。

 再生可能エネルギー市場の拡大や新興国での電力網の整備に伴い、送配電設備に対する需要は一層高まると予想されている。ABBの送配電事業の売上規模は約100億ドル(約1兆1,000億円)。ABBは全社の事業構造見直しの中で、産業用ロボットなどに経営資源を投入する方針で、すでに発電事業を売却。日立とABBは2015年に日本国内向けの高圧直流送電事業に関する合弁会社を設立している。

 日立は、今回の合意により、ABB 社が有するデジタルグリッドソリューションを含むグローバルトップレベルのパワーグリッド事業に、日立のデジタル技術を融合させ、革新的なエネルギーソリューションをグローバルに提供していく。さらに、モビリティやライフ、インダストリーなど、さまざまな分野をつなぐエネルギープラットフォームを構築し、ABB社の広範囲にわたる顧客に展開、協創を進めることで、社会全体でより効率的なエネルギーの活用を進め、社会イノベーション事業のさらなる進化、成長を図る。

 近年、再生可能エネルギーの普及や新興国におけるエネルギーの需要・供給の増加、さらには、電気自動車、蓄電池などを活用した分散型電源の拡大、各国・地域における電力分野の規制緩和、電力システム改革の進展などで、パワーグリッド市場は大きく拡大している。

 2020 年のパワーグリッドの市場規模は、日立によると1,000 億米ドル(約11 兆円)以上で、2017 年から2020 年の年平均成長率は4%以上と着実な成長が予測されている。なかでも、再生可能エネルギーの普及および地域ごとの特性に応じた柔軟なエネルギーインフラの構築に貢献する、デジタル技術を活用した電力供給、貯蔵、制御を行う高度なエネルギーマネジメントシステムや次世代送電ネットワークの実現に向けたグリッド分野におけるイノベーションが急速に進んでいる。

 ABB 社のパワーグリッド事業は、電力ネットワークの安定化のための保護制御システムや遠隔監視制御システム、ならびに、電力取引のための需給調整市場管理システムを手掛ける「グリッドオートメーション」、また、システムインテグレーションやサービスソリューションなどのデジタル変電所システム、高圧直流送電(High Voltage Direct Current/以下、HVDC)システム、パワー半導体などの「グリッドインテグレーション」、さらには、ガス絶縁開閉装置(Gas Insulated Switchgear)などの製品を取り扱う「ハイボルテージプロダクツ」、鉄道向けの変圧器を主力製品とする「トランスフォーマー」の4 事業で構成されており、いずれもグローバルトップレベルのポジションを有している。

 例えば、再生可能エネルギーの増加により、市場が拡大しているHVDCにおいては、世界中の直流送電系統の約半数を占める約120件、130,000メガワット相当の直流送電プロジェクトを手掛けるとともに、主要機器の大半を自社で開発、製造するなど、最先端の技術も有している。さらに、世界の主要電力会社に加えて、鉄道や石油などの天然資源、ITなどの幅広い業種の顧客基盤もグローバルに確立している。

 2017年の同事業の売上高は約100億ドル(約1兆1,000億円)で、Operational EBITA(ABBが用いる経営指標)は約10億米ドル(約1,100億円)。世界各国・地域に約100カ所の製造拠点、さらには、約200カ所の販売拠点を有し、従業員数は約36,000人。

 以下、詳細はニュースリリース参照

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