KYBは12月7日、投資家向けのレポート「2019年3月期第2四半期ブリッジレポート」(株式会社インベストメントブリッジが作成)を掲載した。
■今回のポイントより
・19 年3 月期上期の売上高は前年同期比7.0%増の2,028 億円。AC 事業、HC 事業ともに増収で、特にHC 事業は建機市場の活況を受け数量が増加。セグメント利益は同11.5%減の95 億円。両セグメントとも増収ではあったが、AC 事業は北米市場の落ち込みなどで減益、HC 事業も増産に伴うコスト増で微増益にとどまった。営業利益は113億円の損失。免震・制振用オイルダンパー不適切行為に関する製品保証引当金144 億円のほか、米国独占禁止法関連損失や減損損失を計上した。業績が当初予想を大きく下回ったことに加え、免震・制振用オイルダンパーの不適切行為に関する交換工事の費用及び補償費用など今後の業績悪化要因の影響を見通すことは困難であるため、中間配当の実施を見送ることとした。期末配当については未定とした。
・19 年3 月期の通期業績予想を免震・制振用オイルダンパーの不適切行為に関する引当金計上等を要因に利益を下方修正した。売上高は前期比5.7%増の4,160 億円の予想。HC 事業は2 桁増収を見込む。AC 事業も増収予想。
セグメント利益は同7.2%減の213 億円の予想。AC 事業、HC 事業とも増収ながら減益を見込む。営業利益は同96.6%減の7 億円の予想。上期に計上した免震・制振用オイルダンパー不適切行為に関する製品保証引当金等のほか、四輪車用油圧機器における構造改革費用35 億円を計画している。為替の前提は前年度1USD=110.85 円に対し、今年度は107.63 円、ユーロは前年度129.70 円に対し、128.92 円。下期前提レートは1USD=105 円、1ユーロ=128 円。前述のとおり期末配当は現時点では未定。
・売上構成比は1%にも満たない免震・制振用オイルダンパーであるが、業績の足を大きく引っ張る形となってしまった。
今後の調査の進捗によっては交換工事に要する費用、交換工事の実施に伴って発生する補償等の付随費用など、さらにコストが増大する可能性も現時点では否定できないようであり、投資家としては状況を見守るしかないというところであろう。
ただ、従前から取り組んでいるAC 事業、HC 事業の構造改革は着実に進展しているようだ。
全てのステークホルダーからの信頼回復に努めるとともに、主力事業のさらなる成長に向けどのような施策を実施し、スピード感をもって実績を積み上げていくのかを引き続きウォッチしていきたい。
■免震・制振用オイルダンパー検査工程における不適切行為について
(概要)
2018 年10 月、KYB および子会社カヤバシステムマシナリー株式会社が製造・販売している免震・制振用オイルダンパーの一部について、性能検査記録の書き換え行為により、大臣認定の性能評価基準に適合していない、または、顧客の基準値を外れた製品を建築物に取り付けていた事実が判明した。
KYB としては、不適合品および書き換えの有無が不明な製品は交換を基本方針として引き続き調査を進めていく。
所有者、居住者等の不安・心配を払拭することを経営の最優先事項とし、具体的な対応方針等については、国土交通省及び関係行政機関の指導の下、建設会社、設計事務所に報告の上、安全性の検証を行い、所有者をはじめとする関係者に丁寧に説明していく考えだ。
(書き換え行為の内容)
通常、性能検査工程において基準値から外れた場合は、一旦分解し基準値に入るまで調整を実施するが、基準値から外れた値を書き換え、検査記録として提出していたというものである。
(判明の経緯、対応など)
2018 年9 月8 日、カヤバシステムマシナリー株式会社において、同社従業員による性能検査記録データの書き換えの疑いがあるとの指摘を契機に社内調査を開始し、9 月12 日にはKYB 社内に対策本部を設置し、調査を開始した。
調査の結果、性能検査記録データの書き換えの事実があったとの結論に至り、国土交通省に対し9 月19 日に報告。
以降、対象製品及び対象物件の特定ならびに基準値から大きく乖離した物件の安全性検証のための構造計算を実施している。9 月26 日には外部調査委員会を設置し、より詳細な調査を開始した。