ダイキン、オーストリアの冷凍・冷蔵ショーケース大手AHT社を買収

・コールドチェーンをカバーする商品を拡充、空調との統合システム提案を強化

 ダイキン工業は11月26日、欧州の商業用冷設市場におけるリーディングカンパニーであるAHT社(本社:オーストリア)を買収することを決定したと発表した。買収価格は881百万ユーロ(1ユーロ=130円換算で1,145億円)。子会社のダイキンヨーロッパ社(本社:ベルギー)を通じて、AHT社への出資者であるブリッジポイント社(本社:イギリス)から全株式を取得し、必要な手続きを経た上で、2019年1月に買収を完了する予定である。

 ダイキン工業は、戦略経営計画「FUSION20」で、重点施策の1つとして商業用冷設事業の拡大を掲げた。欧州は、世界で2番目の市場規模があり、省エネ・冷媒に関する環境規制が追い風となっている。欧州では2000年以降、スーパーマーケットやコンビニエンスストア向けの省エネ性の高い冷凍・冷蔵システムの販売を強化してきた。これらに加えて、2016年にイタリアの業務用冷凍・冷蔵機器メーカーのザノッティ社を買収(リリース)し、食品の加工・貯蔵庫向けの産業用、海上コンテナ用や陸上のトラック・バン向けの輸送用冷凍機など、事業領域を拡大してきた。一方で、コールドチェーンで最も顧客と接点の多いショーケースを持っておらず、戦略的な補強が求められていた。

 AHT社は、スーパーマーケット向けに展開している冷凍・冷蔵ショーケース専業メーカー。冷凍ユニットが内蔵されているタイプのショーケースではナンバーワンのシェアを誇り、店舗の形態に応じた新商品を積極的に投入し、市場をリードしてきた。さらに、店舗設計のノウハウと高い技術力を活かしてグローバルでチェーン展開する大手の有力顧客を持っている。

 今回の買収により、AHT社が持つショーケースが商材として加わることで、ダイキン工業が持つ空調と冷凍・冷蔵機器の幅広い製品群をもとにした商品・サービスや、新たな省エネ・環境ソリューション、さらには快適な買い物空間のトータルコーディネートに至るまで、ワンストップで顧客に提供できるようになる。欧州で事業基盤を固め、北米はじめ経済成長が著しく冷凍・冷蔵のニーズが急激に伸びるアジアにも挑戦していく。

 商業用冷設事業は、社会課題の解決に大いに貢献できる事業。ダイキン工業が培ってきた省エネ・インバータ・冷媒制御などの環境技術を活かせる余地が大きく、今後の食料需要の増大、食品安全意識の向上など世界的に高まるニーズに対して、エネルギーや環境を中心としたサービス・ソリューションを切り口に新たな価値を提供していく。

1.AHTの事業環境について

 食品に関する冷凍・冷蔵機器市場は、グローバルで約4兆円の規模があるとされ、そのうちスーパーマーケット向けのショーケースや冷凍機を含む商業用冷設事業は、約1兆7,000億円とみられている。欧州は、米国に次いで約5,000億円の市場規模がある。その半数を店舗用が占め、今後も年間5%程度伸びるとされている。中でもショーケースは、冷凍機よりも商品の更新頻度が高く、年間6%程度の成長が期待される分野である。

 大きな傾向として、欧州をはじめとする先進諸国では、食品は専門店よりもスーパーマーケットチェーンの店舗で購入することが増えてきており、今後は郊外の大型店よりも街中の中小型店舗やコンビニエンスストアの拡大が見込まれている。加えて、米国や中国を中心に、先進的なネット事業者による食品小売への参入も相次ぎ、スーパーマーケット市場は、今後も世界的に拡大することが見込まれている。

2.買収の意義や背景

 ダイキン工業は、これまで欧州ではスーパーマーケットやコンビニなどの店舗向けの空調機や冷凍機のほか、海上コンテナ用冷凍機などの商品を販売してきた。昨今の市場変化に対応すべく、2016年イタリアの冷凍・冷蔵機メーカーであるザノッティ社を買収し、産業用から陸上輸送用、商業用までの幅広い冷凍・冷蔵機器をラインアップし、コールドチェーン全体をカバーするための事業基盤を構築してきた。

 今回の買収で、従来の製品群に加えて、AHT社が持つショーケースと大手スーパーマーケットなどの顧客基盤を獲得することができる。また、機器の設置工事から試運転、保守までを一括で請け負うサービス機能を充実させ、さらにショーケースや低温倉庫、空調を含めた店舗全体の設計のほか、遠隔監視・制御や故障予知、複数の店舗管理に最適なコントロールの提供などのソリューション事業を拡大していく。

 さらには、ダイキン工業が持つ空調や暖房、アプライドも含めて、食品の管理から店舗空間も含めたコールドチェーン全体をカバーするトータルなシステム提案が可能になり、総合空調・冷凍冷蔵機器メーカーとしてさらに事業を強化していく。

3.買収後の体制等について

 欧州におけるショーケースのシェアトップクラスを誇るAHT社の販売、生産体制は基本的に継続する方針。さらに今後は冷凍・冷蔵と空調機器を大手スーパーマーケットチェーンに向けてワンストップで提供できるよう、販売・サービス体制の強化を進める方針。

<AHT社の概要>

会社名:AHT社(AHT Cooling Systems GmbH

本社所在地:オーストリア ロッテンマン市

代表者:マイケル・デイビイ 会長

資本金:35千ユーロ

設 立:1983年

株 主:ブリッジポイント社 100%

事業内容:商業用冷凍・冷蔵ショーケースの製造販売

売上高:481百万ユーロ(625億円※、2017年度)

従業員:1,600名(2017年度末時点)

<ブリッジポイント社の概要>

会社名:ブリッジポイント社 (Bridgepoint Development Capital

本社所在地:イギリス ロンドン市

事業内容:プライベート・エクイティ・ファンド運営業務

ダイキン工業とブリッジポイント社の関係:ダイキン工業と当該会社との間には、人的関係、資本関係、取引関係など特筆すべきものはありません。

<ダイキンヨーロッパ社の概要>

会社名:ダイキンヨーロッパ社(Daikin Europe N.V.)

本社所在地:ベルギー オステンド市

代表者:三中 政次

資本金:155百万ユーロ

設立:1972年

事業内容:業務用・住宅用空調設備・機器、ヒートポンプ暖房機、冷凍・冷蔵機器、その他関連商品の製造・販売・設計

主な事業所:欧州、中東、アフリカ地域の22カ国

売上高:2,529百万ユーロ(3,288億円※、2017年度グループ連結)

従業員:6,881名(2017年度末時点グループ連結)

※1ユーロ=130円で換算

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