オークマと日本電気（NEC)は10月29日、AI(ディープラーニング)を活用し工作機械が自律的にドリル加工の診断を行う技術「OSP-AI加工診断」を共同開したと発表した。
「OSP-AI加工診断」は、OSP(注1)に内蔵したAI技術により、ドリル加工の異常検知と工具 摩耗の可視化をリアルタイムに行い、ドリル工具と工作物の損傷防止や工具費の大幅削減を実現する。
オークマは、「OSP-AI加工診断」をはじめ工作機械の知能化を積極的に推し進め、世界の新しいものづくりを切り拓いていく。NECは、同技術により工作機械による加工の自律的な診断を支援するとともに、今後もNECの最先端AI技術群「NEC the WISE」(注2)を用いて、オークマの工作機械の高度化に貢献していく。
労働人口の減少から、生産システムの自動化、無人化が進んでいる。生産システムに、さらなる安定稼働やコスト低減の要望が高まる中、オークマは2000年以降、加工寸法精度の安定化、加工条件の最適化して高能率化を実現する知能化技術を開発し、工作機械に適用した。しかし依然として工作物の不良につながる工具破損の課題を解決するのは難しく、主である工具摩耗が原因で生じる不具合対策には、現場での経験に基づき、安全を見越して工具交換を行っている。そのため、実際にはまだ使用できる工具が交換されていることがある。それでも工作物の素材や工具のばらつきなどで生じる突発的な工具破損を防止するまでには至っていないのが現状。
共同開発した技術は、工作機械が自律的にドリル加工の状態診断をリアルタイムに実施し、工作物の不具合回避や工具費の削減を実現する。オークマは、CNC装置を内製化する強みを活かし、工作機械の制御情報からリアルタイムに加工状態を得ることを可能にした。OSP上で実現するAIについて、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」の1つである「RAPID機械学習技術」(注3)を用いて共同で開発した。
(注1)OSP：OSP(Okuma Sampling Path Control)はオークマが他社に先駆けて開発した自社製の工作機械のNC装置。オークマは日本で唯一の、工作機械とNC装置の両方を製造する機電一体メーカー。
(注2)「NEC the WISE」(エヌイーシー ザ ワイズ)：NECの最先端AI技術群の名称。
“The WISE”には「賢者たち」という意味があり、複雑化・高度化する社会課題に対し、人とAIが協調しながら高度な叡智で解決していくという想いを込めている。
(注3)RAPID機械学習技術：ディープラーニング技術を搭載し、事前に手本となるデータを読み込むことで傾向を自動で学習するため、データの分類／検知／推薦などの高精度な判断が可能。また、NEC北米研究所の独自技術により、分析エンジンの高速化と軽量化の両立を実現する。これにより、大規模なマシンリソースを必要とせずにサーバ1台から分析処理ができるため、幅広い業務や 企業への適用が可能。