東レ、三井製糖などと設立した膜利用糖化プロセスのタイ実証プラントが竣工

 東レは7月6日、製糖工場で発生する余剰バガスを原料として、各種バイオ化学品生産の共通原料となるセルロース糖を製造する実証プラントを三井製糖三井物産と共同で完成させたと発表した。

 完成した実証プラントは、2017年1月に三井製糖と設立したCellulosic Biomass Technology Co.,Ltd.(本社:バンコク市、以下CBT社)のタイ王国ウドンタニ県に所在する事業所に建設したもの。同日、在タイ日本大使館公使他約60名が出席のもと、竣工式を3社主催で開催した。

 今回の技術実証の取り組みは、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が進める、国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業「余剰バガス原料からの省エネ型セルロース糖製造システム実証事業」の一環であり、東レが保有する水処理分離膜技術とバイオ技術を融合した「膜利用バイオプロセス」の研究・技術開発を行う。

 膜利用バイオプロセスとは、バイオマスの糖化、化学品の発酵プロセスに水処理用分離膜を適用することにより、非可食バイオマスの変換効率を向上させ、分離・精製エネルギーを削減することが可能なプロセス技術。非可食バイオマスから素材・化学品を製造するサプライチェーンの実現を目指している。

 タイは、世界有数のサトウキビ産出国であり、製糖工場には、サトウキビ搾汁後の搾りかすであるバガスが発生する。この食用にできないバガスの一部は製糖工場ボイラーの熱源として再利用されているが、残りのバガスの活用が大きな課題となっている。

 今回の実証プラントでは、未利用のバガスを原料として、バイオエタノール、乳酸、コハク酸などの発酵原料となるセルロース糖と、ポリフェノール、オリゴ糖といった高付加価値品を効率よく併産する技術を実証する。

 実証プラントは2018年7月下旬に運転開始を予定しており、日本発の膜分離技術を活用することで、従来の糖液に含まれる水分を熱により蒸発させて濃縮する製造システムに比べて50%以上の消費エネルギーの削減を目指す。

 今後、2020年度(予定)まで実証プラントの運転を進め、省エネ効果、生産物の性能、システムの経済性等の評価・検証を行う。事業終了後は、バガスを排出する製糖業者に対して事業成果を活用した有用物質の製造工場の建設・稼動を支援していく。また、高分子膜利用技術による省エネ型の有用物質製造技術の教育セミナーやPR活動を行い、サトウキビ主産地である同国東北部・東部地域への同システムの普及、さらには近隣のASEAN諸国へのシステムの普及展開を図る。

 東レは「すべての事業戦略の軸足を地球環境に置き、持続可能な低炭素社会の実現に向けて貢献していく」という経営方針の下、日本の最先端企業としていち早く、LCA思想に基づくLCM環境経営3)を推進している。東レはその一環として、今後、膜利用バイオプロセスに関して、異業種間でのオープン・イノベーション(連携と融合)を積極的に推進し、サプライチェーンの構築とソリューションの提供を進めていく。

<会社の概要>

会社名:Cellulosic Biomass Technology Co.,Ltd.(略称:CBT)

本社所在地:タイ王国バンコク市、事業所:タイ王国ウドンタニ県

設立時期:2017年1月

資本金:680百万バーツ

出資額:東レグループ:456百万バーツ(出資比率67%)、三井製糖:224百万バーツ(出資比率33%)

事業内容:膜利用糖化プロセスの技術実証

 余剰バガス:サトウキビを搾汁した後に残る固形物。バガスは、製糖工場のボイラーで燃焼され電気としてエネルギー回収が行われるが、未利用として残った分を余剰バガスと定義した。

 セルロース糖:非可食バイオマスに含まれるセルロースを加水分解することで得られるグルコースを主成分とする糖液。

 LCA思想に基づくLCM環境経営:あらゆる産業活動、企業活動において、製品やサービスをライフサイクル全体で捉え、(LCA:ライフサイクルアセスメント)、環境負荷を低減しながら、経済・社会的価値の向上を目指す持続的な取り組み(LCM:ライフサイクルマネジメント)

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