NTN、鉄道車両用「小型密封式車軸軸受ユニット」を開発

■車軸軸受ユニットの軸方向寸法の短縮と密封性向上の両立を実現

 NTNは6月25日、鉄道車両用の車軸軸受ユニットの幅寸法(軸方向寸法)を従来品比で約15%短縮した鉄道車両用「小型密封式車軸軸受ユニット」(複列円すいころ軸受)を開発したと発表した。

 車軸軸受ユニットは、車輪がつく車軸に取り付けられ、車体を支持し、一般的にはメンテナンスフリーで60万km以上使用可能な高い信頼性が求められる。車軸には車体重量によるたわみが生じ、車軸の剛性が低く、たわみが大きいと、車軸軸受ユニット部品間にフレッティング摩耗*1が発生する。その摩耗粉が軸受内部に侵入すると、軸受内部の潤滑不良や摩耗、はく離などの不具合につながるおそれがある。車軸のたわみを抑制し、これらの不具合を防止するため、軸方向寸法を短縮した車軸軸受ユニットの要求がある。

 また、密封式の車軸軸受ユニットは、外輪に嵌合(かんごう)したオイルシールによってグリースの漏洩を防いでいるが、グリース密封性を確保するために、オイルシールと軸受回転部(内輪、ころ、保持器)の距離を長くすることで、軸受内部の空間容積を確保することが必要だった。このため、オイルシールを軸受幅の外側に配置することになり、車軸軸受ユニットの軸方向寸法の短縮には制限があった。オイルシールよりも構造が簡易なシールド板を使用することで、軸方向寸法を短縮する方法があるが、オイルシールと比較してグリース密封性の低さに課題があった。

 今回開発した鉄道車両用「小型密封式車軸軸受ユニット」は、シールリップ部にグリースが移動しにくいラビリンス構造を設けるとともに、シールリップ形状を工夫した新しいシール構造を採用している。その結果、オイルシールのグリース密封性の向上と幅寸法を短縮し、オイルシールを軸受幅の内側に配置することに成功しました。これにより、車軸軸受ユニットとして従来品と同等の軸受寿命や高速性*2、グリース密封性などを確保しながら、軸方向寸法を約15%短縮し、摩耗粉の発生につながる車軸のたわみを約30%低減することを可能とした。

 NTNは、開発品を車軸長さの短縮やシールド板のグリース密封性を課題としている顧客に提案し、鉄道車両のさらなる安全で快適な走行に貢献していくとしている。

*1) 接触部分に振動荷重が加わることで発生する摩耗

*2) 軸受サイズ:内径φ130×外径φ240で、車速420km/h×120万km相当の回転試験を実施

特長:

(1)車軸軸受ユニットの軸方向寸法を約15%短縮、車軸たわみを約30%低減(従来品比)

(2)従来品と同等の軸受寿命、高速性、グリース密封性を実現

用途:高速/中低速旅客車両 等

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