富士フイルム、約40億円投じて富山化学工業の拠点に新工場、抗がん剤「FF-10832」などリポソーム製剤生産

 富士フイルムは2月22日、グループ会社の富山化学工業の医薬品生産拠点に約40億円を投資し、新工場を建設すると発表した。新工場では、抗がん剤「FF-10832」など独自技術を活かしたリポソーム製剤の治験薬製造や商業生産を行う計画。新工場は、2018年9月に着工し、2020年2月に稼動する予定。

 リポソーム製剤は、細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質などをカプセル状にした微粒子(リポソーム)の中に薬物を内包した製剤。現在、富士フイルムは、写真フィルムなどで培った、高度なナノ分散技術や解析技術、プロセス技術を活かして、有効成分を効率的に患部に届け薬効を高めるリポソーム製剤の研究開発を推進している。なかでも、既存薬(*1)を約80nmの均一なサイズのリポソームに内包した抗がん剤「FF-10832」では、薬剤の血中での安定性向上、患部への集積性向上、患部での薬剤放出により、リポソーム製剤化していない既存薬(*1)に比べて1/60の低用量でも同剤を大幅に上回る薬効をマウス実験で確認。今年度内の米国臨床第I相試験の開始に向けて、準備を進めている。また「FF-10832」以外のリポソーム製剤においても早期の臨床試験開始を目指して研究開発に取り組んでいる。

 今回建設する新工場は、日・米・欧のGMP(*2)基準に対応した、リポソーム製剤の生産工場。新工場は、富士フイルムの高度な生産技術により独自設計・開発した製造設備や封じ込め設備の導入、富山化学がこれまで注射剤の無菌製造で蓄積してきた生産ノウハウの活用により、高信頼性・高品質のリポソーム製剤の安定生産を実現する。さらに、最先端ICT技術を用いた先進的な生産システムを導入。製造プロセス・品質評価データや設備稼働データの一元管理、電子タグによる原料や部材などの使用管理などが可能となるため、効率的なオペレーションで生産を行うことができる。

 新工場では、「FF-10832」などのリポソーム製剤の治験薬製造や製造販売承認取得後の商業生産を行い、高品質なリポソーム製剤を安定的に供給していく。

 富士フイルムは、化合物の合成力・設計力、ナノ分散技術など写真フィルムで培った高度な技術を活かし、がん・中枢神経系疾患・感染症を重点領域として新薬開発に取り組んでいる。また必要な量の薬物を必要な部位に必要なタイミングに送達するドラッグ・デリバリー・システム(DDS)の技術開発も推進。既存薬のみならず、次世代医薬品の核酸医薬品や遺伝子治療薬への応用展開も目指して、DDSの研究開発に取り組んでいる。今後、革新的かつ高付加価値な医薬品を開発し提供することで、社会課題の解決に貢献していく。

 *1 米国イーライリリー社が開発した抗がん剤(一般名:ゲムシタビン、製品名:ジェムザール)。膵臓がんの第一選択薬として用いられ、そのほかにも幅広いがん(肺がんや卵巣がんなど)に用いられている。

 *2 Good Manufacturing Practice。品質の良い医薬品、医療用具などを供給するための製造管理および品質管理を定めたもの。

<新工場の概要>

建設場所:富山県富山市千原崎一丁目8番70号(富山化学工業 第二工場内)

投資金額:約40億円

生産内容:リポソーム製剤の治験薬製造および商業生産

延床面積:約2,400㎡(地上2階建)

着工時期:2018年9月

稼働開始時期:2020年2月

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