●年頭所感2018 一般社団法人日本産業車両協会 会長 大西 朗
株式会社豊田自動織機 取締役社長
平成30年の年頭にあたり、新年のご挨拶を申し上げます。
我が国の経済状況は、7~9月期まで実質GDPが7四半期連続で前期比プラス成長となり、平成30年度では1.9%増と3年連続での増加が見込まれています。この中で民間設備投資は4四半期連続のプラスが続き、年度でも3.4%と高い伸びが見込まれています。こうした経済成長の中で、失業率は3%を下回り、その一方で有効求人倍率は1.5倍程度となり、様々な産業で人手不足が顕在化している状況です。
私ども産業車両業界も、主力機種のフォークリフトの国内販売台数は、1~12月累計で2.7%増加となっており、そのうち電気式が全体に占める割合が61.5%まで高まり、いわゆるEV化という意味では先頭を走っております。
世界のフォークリフト市場も好調で、9月までの累計で5.9%増と、3年連続で最高を更新するペースで伸びています。日本からの輸出台数も1~12月累計で4.9%増加となっています。
本会は平成29年度においても、平成26年度に策定した「産業車両(フォークリフト)産業戦略」で掲げた、物流の効率化、安全向上、環境負荷の低減に貢献する、信頼性の高い製品、サービスによって、産業車両における“日本ブランド”を確立し、世界ナンバー1であり続けるとの目標の下、様々な事業を進めておりますが、主な取り組みのいくつかをご紹介させていただきます。
まず、物流の効率化という視点では、平成28年度に経済産業省から受託した「IoTを有効活用した全体最適なサプライチェーンシステム構築調査事業」の報告書での提言を踏まえ、現在、経済産業省、国土交通省のご指導ご参加、物流関連9団体のご協力を得て「物流課題に対する技術を用いた解決方策に関する研究会」を立上げ、活動を行っております。
産業車両が使われる物流の現場は、社会・経済を支える基盤として重要な役割を果たしていますが、ここ数年Eコマースの普及等によるニーズの多様化が進む一方で、人手不足や欧米に比べ低い生産性等が顕在化しており、将来に向けた高度化への対応が大きな課題となっております。
この研究会では、昨年7月にまとめられた政府の「総合物流施策大綱2017~2020年度」で今後の方向性として示された、新技術(IoT、BD、AI等)の活用による“物流革命”を具現化していくための取り組みを一層推進できるよう、官・民の関係者によって意見・情報の交換・共有を行って、今後何を行っていくべきか検討を続けているところです。
また、産業車両の自動化に関しては、すでに50年を超える歴史と実績を持つ無人搬送車システムを、さらに発展させ、普及を促進していくため、ISOの安全規格の制定審議に参加して、日本としての意見が採用されるよう取り組んでおり、また国内JISの用語規格の見直しも行っております。
次に安全向上という視点では、平成27年度に厚生労働省のフォークリフト事故データを分析しましたが、今年度は事故の要因別に、どうすれば事故を防ぐことができるのか、あるいは残念ながら事故が発生した場合でも、いかにその被害を小さくできるのか等について、センサやカメラ技術を活用して、産業車両メーカーならではの方策の実現を目指して取り組んでおりますので、ぜひご期待下さい。フォークリフトに関しても、今年度は安全関係のJIS5規格の改正事業を進めており、ISO会議にも出席して、審議に参画しております。
次に環境負荷の低減に関しましては、平成28年秋に燃料電池式のフォークリフトがついに市場投入されましたが、今年度も政府の支援をいただきながら、各地で再生エネルギーの活用等とも組み合わせて導入が進んでおります。また長時間の稼動を可能とする新型の電気式フォークリフトの普及も進めており、国内のみならず、世界の市場でもこうした環境負荷低減に役立つ日本ブランド製品の普及に努めてまいります。
このような物流の効率化、安全向上、環境負荷の低減を促進する様々な取り組みの成果の一端は、今年の9月に開催する、アジア最大級の物流専門展示会、「国際物流総合展2018」でも披露できるものと考えておりますので、ぜひ多くの皆様にご覧いただき、課題の解決に活用いただけることを願っております。
また、毎年、欧州、アメリカそして中国の産業車両関係団体との協力の下、アライアンス業界首脳会議を持ち回りで開催しておりますが、昨年9月には20回目の節目となる会議が中国で開催されました。
この会議は、平成10年に開始されましたが、それ以前の欧米との貿易摩擦を解決し、相互理解を深めることで、産業車両の世界的な発展を目指すために発足したものです。自由貿易や国際標準化の促進をはじめ、過去の“対立”から“協調・連携”へと関係性を改善・強化しながら、毎年様々なテーマの議論を行っており、今後もさらに活動を活発化させていくこととしております。
以上、私ども協会の活動の一環をご紹介させていただきました。
最後になりますが、日本産業車両協会は今年の6月に創立70周年の節目を迎えます。これまで述べたような取り組みの成果を広く知っていただき、物流の効率化、安全の向上、環境負荷の低減に活用いただくための様々な取り組みを行ってまいりたいと考えておりますので、会員の皆様のご協力をお願い申し上げます。
そして経済産業省、国土交通省、環境省、厚生労働省をはじめとする関係御当局におかれましても、協会の活動に関しまして、より一層のご指導ご支援を賜わりますよう、お願い申し上げます。
本年が皆様にとって素晴らしい1年となりますよう心より祈念して、年頭のご挨拶とさせて頂きます。
以上
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