国際協力機構(JICA)、カンボジア向け技術協力プロジェクトの討議議事録に署名

■産業競争力強化に資する物流改善を包括的に支援

 国際協力機構(JICA)は11月14日、カンボジア王国政府との間で、技術協力プロジェクト「物流システム改善プロジェクト」に関する討議議事録(Record of Discussions: R/D)に署名した。

 事業は、高度な産業の誘致・振興により産業構造の転換を目指すカンボジアにおいて、そのボトルネックとなっている物流システムのマスタープランの策定、組織横断的な実施枠組みの整備等を通じて、同国の物流システムを安価で安定性と信頼性を備えるものに改善することに寄与するもの。

 カンボジアはメコン地域の中央に位置し、その立地特性と勤勉かつ安価な労働力を生かした近隣国との水平分業で順調な経済成長を遂げている。グローバル・サプライチェーンが拡大する中、カンボジア政府は地域の連結性を一層向上すべく、南部経済回廊(注)やシハヌークビル港等をはじめとするインフラの拡張整備を進めている。しかし、物流産業の近代化・効率化や通関・配送の情報化の遅れにより、物流事業・サービスの品質とコストは依然として国際水準に劣ることが課題となっている。

 また、カンボジア政府は、今後の更なる経済成長のために、2015年3月に産業開発政策(Industrial Development Policy 2015-2025:IDP)を策定し、現在の経済成長を支える縫製業等の労働集約型産業から、技術労働者中心の産業への転換を2025年までに実現させることを目標に掲げている。投資先としての魅力を高め、より高度な産業を誘致して産業構造を転換していくためにも、安価で安定性と信頼性を備えた物流システム構築が必要となっており、IDPの優先課題の一つとして物流マスタープラン(M/P)策定及び実施が掲げられている。

 プロジェクトでは、カンボジア政府の強いリーダーシップのもとで官民が連携し、物流システムの改善を支援する。具体的には、中・長期的な物流改善ビジョンを含む物流M/Pの策定、その実施枠組みの整備、優先事業の実施・調整、評価・モニタリングを行う。多分野にまたがる物流改善の取り組みを、省庁間及び官民の緊密な連携のもとで包括的に推進することで、ビジネス環境を向上させ、より高度な産業の誘致・振興を図り、産業競争力が強化されることが期待される。また、南部経済回廊等を通じた地域の連結性の向上にも貢献する。

 JICAはこれまでも、南部経済回廊やシハヌークビル港等の整備のための資金協力や貿易円滑化のための技術協力等を実施しており、今後もカンボジアや地域の経済成長を強力に支援していく。

<案件基礎情報>

国名:カンボジア王国

案件名:物流システム改善プロジェクト

実施予定期間:2018年3月~2023年2月

実施機関:カンボジア公共事業運輸省 物流総局

対象地域:カンボジア全土

具体的事業内容(予定):物流M/Pの策定及び実施枠組みの整備、優先事業の実施、評価・モニタリング体制の構築

(注)南部経済回廊:メコンの経済の中心であるホーチミン、プノンペン、バンコクとダウェイ(ミャンマー)を結ぶ。

 ニュースリリース