■約50年間培ってきた油圧制御技術を生かす
日立建機は10月24日、油圧ショベル向けに開発した油圧省エネシステム「TRIAS(特許第5572586号)」が、公益社団法人発明協会の主催する平成29年度関東地方発明表彰「特許庁長官賞」を受賞したと発表した。表彰式は、2017年11月2日にパレスホテル大宮(埼玉県さいたま市)で行われる予定。
関東地方発明表彰は、各地方における発明の奨励・育成を図り、科学技術の向上と地域産業の振興に寄与することを目的として、1921年に開始された全国を8ブロックに分け実施される地方発明表彰の一つ。関東地方において優秀な発明、考案または意匠を完成した者や、実施化に尽力した者、指導、育成、奨励に貢献した者の功績を称え顕彰する制度。
油圧ショベルの掘削作業を効率良く行うためには、オペレータの操作に合わせ、ブームやアーム、旋回装置などに圧油を適切に分配・供給することが必要とされる。
日立建機は、これまでも快適な操作を実現する「複合操作性」を追求してきた。その追求は、1965年に前身の㈱ 日立製作所建設機械事業部時代に開発した純国産技術で初の油圧ショベルであるUH03(日本機械学会機械遺産第48号)を起端としている。
UH03は、それまで主流であった1ポンプ1コントロールバルブ方式に対し、自社技術で開発した2ポンプ2コントロールバルブ方式の油圧システムを採用することにより、ブームを上げながら旋回する複合動作の快適な操作を可能とし、油圧ショベルの作業性を飛躍的に向上させた。
受賞した「TRIAS」は、約50年間培ってきた油圧制御技術を生かし、日立建機の強みである操作性を維持しながら、燃費性能の向上や、環境負荷の低減などのお客さまのニーズに応え開発した3ポンプ3コントロールバルブ方式を採用した省エネ油圧システム。
従来の2ポンプ2コントロールバルブシステムに、新たに第3油圧ポンプを設け、ブームを上げながらアームを引き込む複合操作時に、高負荷となるブームに第3油圧ポンプから優先的に十分な圧油を供給する技術を用いている。
今回受賞した技術の中で特に、ブームとアームの複合操作時のブームの速度低下を防止して操作性を確保するとともに、従来のアーム側への油圧経路の途中に設けた絞りによるエネルギー損失を無くすことで、顧客ニーズである燃費性能の向上に貢献する点が評価されての受賞となった。
日立建機は、今回受賞の技術をはじめとする自社の技術に加え、日立グループのさまざまな技術を活用する「One Hitachi」の取り組みや、パートナー企業が持つ技術を活用するオープンイノベーションを推進し、顧客の課題である「安全性向上」「生産性向上」「ライフサイクルコスト低減」の解決と環境負荷を低減することを常に念頭に置いた高付加価値な製品を開発するための技術革新を進めていく。
■今回評価を受けた制御技術
従来の2ポンプ2コントロールバルブシステムに設けられていたアーム用方向制御弁の上流側に設けた絞りに代えて、新たに第3油圧ポンプを設け、この第3油圧ポンプに対し、第3ブーム用方向制御弁と第3アーム用方向制御弁とをタンデムに接続している。この構成によりブームを上げながらアームを引き込む複合操作時に、第3油圧ポンプの圧油を、第3ブーム用方向制御弁を介してブームへ優先的に供給することにより、高負荷側となるブームに圧油を十分に供給させながら、燃費性能を向上させる技術。