■工事現場において砒素汚染泥水を省スペースで浄化
大成建設は10月16日、2014年に開発した自然由来砒素を含む泥水の浄化装置をシールド工事の泥水処理施設に組み込み、泥水に含まれる自然由来砒素を抽出して除去できることを実証、同工事に設置する砒素汚染泥水浄化装置の省スペース化も実現したと発表した。
国内には砒素などの自然由来の重金属を含む岩石や土壌が広く分布しているため、泥水式シールド工事では掘削後の泥水から環境基準値を超過する自然由来砒素を含む汚泥が大量に発生する場合があり、セメント原料として利用されたり、管理型処分場で埋立処分されている。しかし、このような方法での処理量には限界があるため、泥水処理の過程で砒素を除去して汚泥を浄化し、様々な場所で再生利用することが求められている。
そこで、鉄粉を砒素汚染泥水に混合することにより砒素を鉄粉に吸着させ、鉄粉のみを分離・回収する浄化技術(磁選技術)を改良し、小型磁選機の採用や鉄粉を再生処理して長期間使用する技術の実用化に向けた試験を繰り返してきた。
このほど同技術を組み込んだ実規模の砒素汚染泥水浄化装置をシールド工事の泥水処理施設に付加し、約1ヶ月間に及ぶ運用により、累積で約1,200㎥の泥水を処理した。その結果、以下の成果が得られた。
(1) 泥水処理施設に付加した鉄粉混合槽と小型磁選機(長さ1mの永久磁石を搭載したマグネットセパレータ)を用いて、泥水式シールド工事で発生する泥水から安定して砒素を除去することができた。また、砒素除去のために付加した処理装置は、既存の処理施設に対して10%以下の面積に設置でき、省スペース化を達成した。
(2) 砒素が吸着し、飽和状態に達した鉄粉を、鉄粉リフレッシュ装置に輸送してアスコルビン酸溶液に5分間浸漬するだけで砒素吸着機能が回復し、繰り返し使用できることを確認した。
(3) 弱アルカリ性の泥水に対しても、鉄粉混合槽内のpHを中性域に調整することにより、泥水の砒素濃度が高い場合でも基準値以下に確実に浄化することができた。
今後、大成建設では、泥水式シールド工事に対して本技術の適用を進め、掘削時に大量発生する汚泥に含まれる自然由来の砒素を浄化することで、汚泥の再利用を促進していく予定。