鹿島、コマツと共同でTBMとNATMの優れた機能を兼ね備えた“NATBM掘削機”を開発

■黒部川電力新姫川第六発電所建設工事の導水路トンネルに適用

 鹿島は10月11日、コマツと共同で、トンネル掘削の代表的な工法である、高速掘進が特長の「TBM」と、地質が複雑な地山に柔軟に対応できる「NATM」それぞれの優れた機能を兼ね備えた、“NATBM(ナトビーエム)掘削機”(特許出願中)を開発したと発表した。

 NATBM掘削機は、硬質な地山を掘削する際はTBMモードで高速掘進し、軟弱な不良地山に遭遇した際にはNATMモードに切り替え、カッターヘッドを開口して内部に装備したバケット式掘削機を前面に出し、地山を掘削した後、支保工を構築しながら安定掘進する。

 このNATBM掘削機は、黒部川電力新姫川第六発電所建設工事(II工区)における、導水路トンネルの施工に適用する予定。

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■開発の背景

 硬質な地山で高速掘削が可能なTBMは、1990年代に新東名高速道路や新名神高速道路の先進導坑の構築に数多く用いられていたが、近年は減少傾向にある。その理由として、欧米のように均質な地層を掘削する際には安定した高速掘削が可能なものの、日本では地質が複雑で不良地山が介在するため、補助工法の施工により掘削を停止することが多く、TBMの高速掘削のメリットを十分に活かすことができなかったことが挙げられる。

 一方NATMは、TBMに比べて掘削速度は劣るが、トンネル切羽を直接目視で確認しながら、地山の性状に合せて支保パターン(鋼製支保工・吹付けコンクリート・ロックボルト)を選定することで、不良地山に対し柔軟に対応できる工法。道路トンネルを中心に多くの施工実績がある。

 そこで鹿島はコマツと共同で、「高速掘進可能なTBMの機能」と「不良地山にも柔軟に対応するNATMの機能」を併せ持つ新たな掘削機の開発に取り組み、さらなる施工の合理化を目指した。

■今後の展開

 新姫川第六発電所建設工事(II工区)の地質は、硬質な砂岩や泥岩が主体であるものの、従来のTBMでは掘削が困難な、亀裂の多い粘板岩、過大な変位が懸念される蛇紋岩など、不良地山の出現も事前調査により予測されている。「高速掘進可能なTBMの機能」と、「不良地山に柔軟に対応するNATMの機能」それぞれの特長を併せ持つNATBM掘削機を本工事に用いることで、工期を短縮し、コストを抑え、安全に施工を進める。

<工事概要>

工事名:新姫川第六発電所新設工事のうち土木工事(II工区)

工事場所:新潟県糸魚川市大字山之坊、大字小滝地内

発注者:黒部川電力株式会社 (出資会社 北陸電力50%・デンカ50%)

施工者:鹿島・佐藤特定建設工事共同企業体

工期:2017年7月~2022年10月

工事諸元:TBMトンネル(φ 4,750mm、L=3,718m)、NATMトンネル(L=219m)、立坑他

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