昭和電工、パワー半導体用SiCエピウェハー高品質グレード品の生産能力を増強

 昭和電工は9月14日、パワー半導体の材料である炭化ケイ素(SiC)エピタキシャルウェハー(エピウェハー)の高品質グレードエピウェハ―「ハイグレードエピ(HGE)」の生産能力を増強すると発表した。2018年4月から稼働開始し、月産能力は現在の3000枚から5,000枚(注1)に拡大する。

 SiCパワー半導体は、現在主流のSi(シリコン)に比べ耐高温・耐電圧・大電流特性に優れた半導体材料で、電力制御に用いるモジュールの軽量・小型化と省エネルギー化に貢献することから、次世代パワー半導体として注目されている。データセンターのサーバー用電源、新エネルギーの分散型電源に加え、近年は鉄道車両のインバータモジュールや電気自動車用急速充電スタンドでも採用が進み、2020年までのSiCパワーデバイス市場は年率27%と大きな伸びが見込まれている。(注2)。

 高電圧・大電流に耐えうるパワーモジュールには主にSBD(注3)とMOSFET(注4)が搭載されているが、現状はSiC-SBDの量産化が先行し、SiC-MOSFETの実用化には欠陥の低減が課題となっていた。昭和電工が開発したHGEは、代表的な結晶欠陥である基底面転位(注5)を0.1個/cm2以下に抑えたエピウェハーです。2015年10月の販売開始以降、国内外のデバイスメーカーから高い評価を受け、SiC-SBD用途に加え、SiC-MOSFETの実用化に向けた採用も進んでいる。HGEの生産体制は現在フル稼働が続いており、来年以降SiC-MOSFET市場の本格的な立ち上がりが見込まれることから、今回の能力増強を決定した。

 SiCパワー半導体は車載での早期実用化も検討されており、SiCエピウェハーの市場規模は2020年に200億円規模に拡大すると予想される(注6)。昭和電工は今後も市場の高品質化要求に応え、省エネルギー化に貢献していく。

 (注1)1200V耐圧用デバイス仕様での換算

 (注2)富士経済「2017年版 次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来展望」

 (注3)ショットキーバリアダイオード(Schottky Barrier Diode)

 (注4)金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)駆動時の電力ロスが小さく、高速スイッチングを行う論理回路に適している

 (注5)基底面転位…SiC単結晶の基底面に発生する転位

 (注6)昭和電工推定

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